『ワタモテ』OPで話題のキバオブアキバはやっぱり全員モテなかった。

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更新日:2014/4/11


『ワタモテ』OPで話題のキバオブアキバはやっぱり全員モテなかった。【独占ロングインタビュー】

第一話放映直後から話題沸騰のTVアニメ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(以下、『ワタモテ』)。喪女(※1)の代表格とも言える主人公・黒木智子(通称:もこっち)の女子高生ライフを描いたストーリーは、全国のソロプレイヤーの心をえぐりつつも鷲掴みにして離さない。

作品にも負けず劣らず話題なのが、本作のオープニングテーマだ。これまで数々のアニメ主題歌を歌ってきた鈴木このみの透明感ある歌声が激しいサウンドにぴったりとマッチした、異色の楽曲に仕上がっている。曲名は、「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」。この楽曲を生み出したのが、ヲタイリッシュデスポップバンド・キバオブアキバだ。

キバオブアキバは2008年に京都で結成されたバンドで、メンバーはふとし(Vocal)、もら(Guitar)、みつる(Bass)、浅井(Sampler&Vocal)、VAVA(Drums)、青木昆陽(Keyboards&蘭学)の6人。


左上からキス顔のもら、仮面のふとし、白い歯の浅井、力士なVAVA、左下のキャップがみつる、右下が青木昆陽(蘭学)

今回は謎に包まれたキバオブアキバのメンバー達に直撃インタビューを実施した。彼らが思う『ワタモテ』とは?そして、楽曲に込めた想いとは?

■もこっちの経験はすごく理解できます(ふとし)

──TVアニメ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』のオープニングを担当することが決定したときのお気持ちを教えてください。

ふとし:未だに信じてはいないです。僕の家テレビ大阪は映らないし、現実ではない感じが……。

──『ワタモテ』に関しては以前からご存知だったんですか?

ふとし:話題になっているのは知っていました。決まってから単行本を買ってきて、読み込みました。

──『ワタモテ』の世界観とキバオブアキバさんの世界観、かなりマッチしていますよね。

ふとし:ありがとうございます。でも所詮うちらは6人でやらせてもらってますからね。ぼっちの智子さんに比べたら……。

──確かに(笑)

ふとし:あ、でも6人いても心はバラバラなので、孤独を感じることは多々ありますよ。個人プレイが多いですし、「所詮一人だな」と思うこともあります(笑)

──みなさんの今までの生活で、もこっちと重なる部分はありましたか?

ふとし:そうですね、基本的に僕たちは全員、一人で行動するのが普通だと思っていた組なので。あ、浅井は違うかな?

浅井:僕の場合はみんなと過ごすのが当たり前だと思っていたのでそう努めていたんですが、よくよく考えたら僕一人ハブられていたという……。結論から言うとやっぱり一人でした。みんなと喋ってて、ちょっと自販機にジュース買いに行って戻ってきたら、誰もいない、みたいな……。

ふとし:もこっちの経験はすごく理解できますし、そういう経験をしてきたからこそ今の自分があるんだなと思えるので、この作品を読むと、トラウマを掘り起こされつつも、「なるほどね」と思います。

──第一話がオンエアされて、いかがでしたか?

ふとし:海外の人達の反応が大きかったのが印象的です。ネット上のコメントを見ていると「Epic!」とか「OP of the century!」とか、大仰な褒め言葉がたくさんあって。あのダイレクトな熱意には驚きましたね。ありがたいです。

──世間では「もこっちかわいい」という反応も多いようですが、もこっちについての印象は?

ふとし:なんだかんだで、もこっちは発想が豊かで努力していて、ポジティブですよね。そこが、勇気を与えてくれるキャラクターだなと思います。実際僕たちも元気づけられましたし。トラウマをえぐって笑わせるだけのアニメではなく、「いろんな方法があるからみんなで考えようぜ!」というメッセージ性を感じます。


■吸収と反応が早い鈴木このみに驚愕

──今回の曲ではアニソンシンガーの鈴木このみさんとコラボレーションされていますが、感想を教えてください。

ふとし:実はDragon Guardianが僕達と同じサークル出身で、彼らがこのみさんをゲストボーカルに迎えてコラボしているのを見ていたので、すごく歌が上手い子がいるなと思っていました。アニソングランプリの時も話題になっていましたし、今回僕達がコラボさせていただけるなんて、嘘かと思いました。実際このみさんに会っても、「こんな声、人から出るんや……」と信じられませんでしたね(笑)

──楽曲はこのみさんのことも意識して作られたんですか?

ふとし:はい。これまでの曲を聴いていて、このみさんは何でもできるなと思ったんです。声質もいいし、色気もかわいげもある。だから未開の部分というか、とにかく今までやっていないことをやってもらおうと思って作りました。このみさんのレコーディングにも立ち会って、その場で出てきたアイディアもふんだんに取り入れてもらって。結構高い声を要求したら、普通にこなされてしまったので、所詮僕はその程度か!、と(笑)彼女は吸収と反応が早くて、全く臆さないんです。ああ、やっぱり違うなと思いました。

──作曲はどんな風にされたんですか?

みつる:叩き台は僕が作って、その後みんなでわーわー言って作りました。「ワタモテ」や鈴木このみさんのイメージに合わせて曲を作りましたが、今まで先にイメージがあって曲を作るということをしたことがなかったので、新鮮でしたね。そして、自分の作った曲にアニメーションを付けていただくという経験も、とても貴重でした。

──歌詞についてはどのように?

ふとし:自分なりに、原作から出てくるキーワードを元に膨らませていきました。流れというよりは、ところどころのフレーズの意味合いを意識しましたね。誰でもどこかひとつは共感できるところがあるのではないでしょうか。ボーカルの立ち位置に関しては、基本的に僕のところは実は“リア充側”なんですね。外から見ている側で、「俺リア充じゃないわ~」と言っておけばウケると思っているリア充のような、そんな立ち位置です。僕らもこうやって6人でバンドをやらせてもらっている以上、充実していないわけがないので。気持ちはわかっていて、もこっちを陰ながら応援しているという人たちにリンクするような立ち位置ですね。そして女性ボーカルに関しては、ストレートに思っていることを言ってもらっています。

──このみさんの声質であの歌詞を歌っているのは、印象的ですよね。

ふとし:そうですね、実はもう少し残虐な歌詞もあったんですけどね。青少年への影響を考えて、やめました。「公序良俗にだけは反するな」と親に言われているので(笑)あまり強い言葉にせずに、でもうまく強さを出した歌詞になったと思います。

■オタクであることを、スタイリッシュにやっていきたい(ふとし)

──キバオブアキバは大学のサークルの繋がりで結成されたんですよね。

ふとし:はい。仲は良くないけれど付き合いは長いという感じです。

──それでもこうやって一緒にバンドをやっているのは、音楽性が一緒だから?

ふとし:音楽性もあるんですが、何か面白いことをしたいっていう気持ちが共通しているからでしょうね。当時、僕は人生に退屈していて、「今までにないことをやりたい」と思ったんです。そこでサークルの仲間を強制的に集めて結成しました。そうしたらメンバー達も同じように、そういう気持ちを持っていたんです。

──なぜバンド名に「アキバ」と付いているんですか?

ふとし:当時、秋葉原って憧れの土地だったんです。京都から秋葉原までひょいひょいと行けるものではなかったですし、実際行くまでは何があるのかもよく分からない。まぁ、伝説の地……エデンみたいな意味合いです。

──では、なぜ“ヲタイリッシュデスポップバンド”というジャンルに?

ふとし:メンバーそれぞれ好きなものが偏っているので、それを活かしていこうと思って「オタイリッシュ」という言葉が生まれました。面白いことをやりたかったので、ジャンルも特別なものにしたかったんです。やっぱり、バッググラウンドがある人ってすごくいいものを作ると思うんですよ。好きな漫画家さんが、実は日本の漫画よりもアメコミのほうが好きだったりするということもあって、そういう意味での“オタク”に憧れていたんです。すごくかっこいいなって。バッググラウンドに何かがあって、ずっと好きでいたものがやっと活きてくるっていう事自体が、とてもいいなと。それを伝えたいと思い、“オタクであることをスタイリッシュにやっていきましょう”というメッセージを込めたのが、“ヲタイリッシュデスポップバンド”という言葉です。