ふたたび注目を浴びる梅津泰臣監督。そのアクションとエロスの源流とは?

アニメ

公開日:2014/1/20

 最近アニメで梅津泰臣監督の名前をよく見かけるようになった。昨年12月期にノイタミナ枠で放送されたTVアニメ『ガリレイドンナ』や、現在放送中の『ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル』は彼の作品である。往年のアニメファンには知らぬ者がいない梅津監督。このタイミングで、さまざまな作品を生み出す彼の魅力を振り返ってみよう。


 梅津監督は、当初アニメーターとして活躍していた。『SF新世紀レンズマン』などで徐々に頭角を現し、『メガゾーン23/Part2』のキャラクターデザインや、『機動戦士Zガンダム』OP、EDアニメーションでアニメファンにも名の知られる人気アニメーターになったのだ。監督業を行うようになった今でもTVアニメのOPやEDを担当することの多い梅津監督だが、彼の担当した映像はやはり抜群にカッコいい。『女子高生 GIRL’S HIGH』のED映像や『それでも町は廻っている』、『BLOOD-C』のOP映像は梅津監督が担当したもの。独特でありながら洗練されたキャラクターデザインやスタイリッシュなコンテでまとめられた映像を見れば、梅津監督の名前を知らない人でも「この作品は監督が担当していたのか」と驚かされるだろう。

 アニメーターであった梅津監督は、次第に自身でオリジナルアニメの企画を立ち上げ、監督/脚本などまで担当するようになっていく。そんな中で、監督の名前はさらに有名にする作品が生まれた。それが『A KITE』だ。


 全2巻の18禁アダルトアニメとして制作された『A KITE』は、洋画のような作風や雰囲気とハードなガンアクション、そしてなにより高い映像クオリティで国内はもちろん国外でも高い人気を獲得。特にハリウッドでは多大な支持を得ており、実写映画化も制作された(現在撮影はクランクアップし、公開準備中である)。

 この『A KITE』から梅津監督らしさと呼べる要素が確立されたように筆者は思う。それはすなわち“バイオレンスたっぷりのハードアクション”と“エロス”だ。梅津監督の生み出すアクションシーンはハードで緻密、そして何よりもカッコいい。ガンアクションシーンはもちろん、徒手格闘シーンも圧倒される出来だ。そして、その結果として生まれるエグいバイオレンス描写はひとつの映像美と言っていいだろう。

 もうひとつの要素であるエロス。これも梅津監督の作品には欠かせない。むしろ、隠していても滲み出てしまう。梅津監督の生み出す女性キャラはどれも肉感的で、女性の性的魅力が際立っている。ちょっとした仕草や表情から溢れるエロティックな気配に、男なら誰もがドキリとさせられるだろう。

 これらの要素が凝縮されているからこそ、梅津監督の作品は他にはない魅力を放っているのだ。『A KITE』の後に制作された18禁アニメ『MEZZO FORTE』から、“梅津監督らしさ”はさらに強まり、洗練されていく。この『MEZZO FORTE』、18禁アニメではあるものの、濡れ場をカットしても物語上は問題ない作りになっているのも、梅津監督がやりたいことに比重に置いたように思える。


 梅津監督はその後、『MEZZO FORTE』の続編である『MEZZO-メゾ-』でTVアニメの初監督を担当。しかし、この作品は梅津監督以外のスタッフも作画監督を持ち回りしているからか、“らしさ”が少し鳴りを潜めてしまっている。昨年放送の『ガリレイドンナ』でも、キャラクターデザインや作画監督は担当していない。『ガリレイドンナ』は全体的に梅津監督らしさはあるものの、どこかいつもとは違う雰囲気になっており、それが魅力を生むことにも繋がっていたが、ファンとしては残念に感じる部分も多かった。

 しかし、最新作として放送が始まった『ウィザード・バリスターズ』の第1話には、びっくりするほど梅津監督らしさが溢れていた。ド派手でハードなアクション描写、ひと癖もふた癖もありそうな登場人物、そしてかわいらしくも肉感的でエロティックな女性キャラ、洗練された映像美。まさに梅津監督作品といった内容に、感動してしまった。冒頭の電車上でのアクションシーンに度肝を抜かれた方も多いだろう。あらゆる意味で今後が楽しみなアニメである。


『ウィザード・バリスターズ』の放送後、「キャラデザが……」という感想がネット上で見られた。確かにキャラデザは今風ではないかもしれないが、だからこそ溢れ出る魅力というものもある。往年のファンはもちろん、新しい世代にも感じられるパワーがある。どうか食わず嫌いをせず、この作品を通じて梅津監督の真髄に触れてみてほしい。

(文=鈴木悠太)