ショートアニメの代名詞、竹書房のアニメ担当に突撃インタビューしてみた。【後編】
公開日:2014/3/20
同社のショートアニメの歴史を振り返った前回に続き、今回はショートアニメというジャンルについて、そして今後の同社の展開などについて聞いてみました。
――これまで色々な作品がアニメ化されましたが、一番ヒットした作品は?
木村:一概にヒットと言っても、数字的なことと、たくさんのお客さんが観てくれたという2種類の意味がありますが……『リコーダーとランドセル』や『あいまいみー』、『お姉ちゃんが来た』辺りは現在も人気ですね。あと『森田さんは無口。』は最初のテレビアニメというインパクトもあって売れました。
――今考えると、『森田さんは無口。』は豪華なキャスト陣でしたしね。
木村:企画当時、森田さん役の花澤さんは人気上昇中のところをキャスティングさせていただいたのですが、OVAを発売する前後でたちまちブレイクされて……ほかのキャスト戸松遥さんに南條愛乃さん、早見沙織さんと、結果的にとてもいいキャスティングができていました。
▲竹書房のテレビアニメ第一弾『森田さんは無口。』。花澤香菜さん演じる主人公は無口ですが、モノローグでたっぷり喋ってくれます。ちなみに右上のメガネ娘はAKB48の佐藤亜美菜さんが演じました。
――そうした人気の流れに乗って、他社もショートアニメを展開しています。その動きをどう思われますか?
木村:大歓迎です、どんどんやってほしいです。他社さんですけど、『てーきゅう』は面白くて大好きですし(笑)。今だと『となりの関くん』もとても面白いです。
――ショートアニメは、通常のアニメに比べてどういった特徴があると思いますか?
木村:一視聴者としては、忙しくても簡単に観やすいのがいいですよね。3分なので空き時間で手軽に観られます。あと4コママンガがショートアニメにすごく向いてると感じます。話に大きな展開がなく、どこから観ても楽しめますし、1話ごとにきちんとオチがつきますし。
―――確かに言われてみればショートアニメと4コママンガは似た特徴がありますね。
木村:『森田さんは無口。』のアニメを企画する前くらに、『らき☆すた』人気が高かったんですよ。『らき☆すた』は5~7分くらいのパートで構成されていて、すごく見やすくって。そのおかげで4コママンガのTVアニメってアリなんだな、と感じました。
――あとは短いからこそ、監督やスタッフの持ち味が出やすいようにも感じます。
木村:確かに。通常のアニメでは監督だからといって何もかもやるわけではないですが、ショートアニメだと監督のニュアンスは出ますね。わかりやすいところだと、『あいまいみー』などはいまざきいつき監督が脚本、演出、キャラクターデザインなど、ほとんどやっていますし(笑)。作り手としてもやりがいのある仕事でしょう。
▲シュールかつかっ飛んだテンションで話題になった『あいまいみー』。いまざき監督はほかにも『スパロウズホテル』7話以降、『リコーダーとランドセル ミ☆』などで、監督を務めています。
――1クール30分ものだと2年前くらいから企画が始まっているようですが、ショートアニメはどういったスケジュール感で作られているのでしょうか?
木村:基本は半年前に企画がスタートしていますね。放送3か月前には制作に入っています。
――ではすでに10月のアニメも決まっていますか?
木村:いえ、そろそろ考えなければと思っていますが、まだですね。
――ちなみに4月に新作がないようですが……。
木村:4月の新作はないです。弊社としては放送が途切れてもいいから、1本1本大切に、クオリティの高い作品を作っていこうという考えになりました。ただ他社さんも含めてショートアニメが続いていって、視聴者にショートアニメを観るという習慣がついてほしいな、とは思います。
▲残念ながら4月からは竹書房のショートアニメがゼロ! その代わりというわけではないが発売延期になっていた『スパロウズホテル』のDVDが5月に発売されるとのこと。内容にも多少の修正が入っているようです。
――30分アニメを作ってみたいという思いはありますか?
木村:作ってみたいですが、 30分アニメをやるなら、同じ原作のショートアニメを2、3年くらいやって、誰もが知るアニメを制作したいと思っております。
――最近はサイマル放送などもありますが、海外展開などの予定は?
木村:今は考えてはいないです。海外は30分アニメが主流ですし、パッケージビジネスが成り立ってないので。可能性があるとしたら、原作を売るためにショートアニメを販促として使ってもらうという風になるでしょうか。現在『Crunchyroll』という動画配信サービスで配信はしていますが、なかなか難しいです。国ごとに文化の違いもあるので、展開できそうなところでは展開したいんですけどね。
――今後について考えていることはありますか?
木村:ショートアニメってパッケージが1クールで1枚しか作れないんですよね。なかなかパッケージが売れない時代に、これをどうやって売るかというのを考えています。出演声優の実写映像を付けて販売したり、、イベントの優先販売などをしていますが、ただそれもいつまで続くかわからないですし、イベントもリスクがありますしね。なので『お姉ちゃんが来た』がまさにそうですが、その時代にどういうニーズがあって、それに対して制作期間が短いショートアニメで訴求できるか、というのを大切にしながら進めていきたいです。
――竹書房と言うと4コママンガ誌とはべつに、麻雀マンガというイメージもあります。そちらのアニメはしないのでしょうか?
木村:私が麻雀最強戦というリアルな麻雀大会の企画に関わっているのもあって麻雀には思い入れが強く、いつか企画はしたいなと思っています。ただ『ムダヅモ無き改革』(2010年にOVAが発売)のようにストーリー展開が早い原作はアニメに向いていますが、麻雀対局シーンばかりのアニメになってしまうと地味ですし。それにショートアニメだと一局くらいで終わりそうですしね(笑)
――以上になります。ありがとうございました。
現時点で春クールもショートアニメが多数ラインナップされています。そしてリスクが少ない、という点からこの流れは今後も一層強まる予感も……? 視聴者としては気楽に観られてうれしいショートアニメ。じっくりと楽しむ従来の30分アニメとバランスよく楽しみたいものですね。
取材・文=はるのおと
お姉ちゃんが来た
・TVアニメ「お姉ちゃんが来た」公式サイト・BD「お姉ちゃんが来た」3月22日発売
・お姉ちゃんが来たサウンドトラックCD「Piece」発売中
・DVD「スパロウズホテル リニューアル 完全版」5月2日発売