まとめサイト等で話題になった『Senpai Club』の作者に直撃!

アニメ

更新日:2014/4/28

「私の名前は、ど麺罪木(どうめん・つみき)」で始まる謎のアニメ『Senpai Club』をご存じだろうか? この作品は、ツインテール女子高生が、食パンをくわえながら学校へ走るシーンから始まる。そう、ベッタベタなラブコメ作品である。



少々レトロな“お約束”が盛り込まれているこのアニメが、なぜ話題になったかというと、このアニメを制作したのが、スウェーデンの高校生だからだ。
そのため登場人物の話す日本語はちょっとたどたどしい。だが、そこもまた面白い。

なぜ、地球の裏側の国で、日本語の、しかもベタなラブコメが作られたのか。
日本国民を代表して、取材を試みた!


▲食パンをくわえて、入学式へ急ぐ“ど麺罪木”。このあと、美形の先輩へぶつかる“お約束”シーンもある。

■ たった3カ月日本語を学んだだけ!

この作品を制作したのは、「makebabi.es」というユニット。エリック・ブラッドフォードさんと、オリヴィア・ベルイストロームさんである。彼らにメールでインタビューを試みた。

——いったいなぜこのような作品を作ったのだろうか?

エリック「オリヴィアはもともと日本のアニメ好きでした。そして、僕たちは以前に一緒にゲームを制作したことがあったので、次はアニメだねと話していたのです」

——それにしてもなぜ学園ラブコメ? しかも日本語で?

オリヴィア「学園ラブコメにしようと思ったのは、王道展開をたくさん含んでいるからです。だから、パロディにしたら面白いかと思って。それに学園ラブコメは、多くの人に親しみやすいでしょ?」

エリック「日本語でつくったら面白いかなって思って。最初は、3つの案があったんです。 英語だけで制作するか。また、英語とへんてこ日本語を交ぜてつくるか。いわゆるweeaboo Japaneseという、日本アニメヲタが使う、ちょっとおかしな日本語ですね。それか、日本語のみでつくるか。 結果的に良い勉強になったので、日本語を選択して良かったと思っています」


▲早足で逃げる姿もまるで日本のアニメそのもの。

——日本語がとっても上手でしたが、日本に来たことはある?

オリヴィア「私たちは日本語のクラスで、3カ月学びました。日本語の基礎を習ったあとは、独学です」

エリック「ふたりとも、ひらがなとカタカナ、少しの漢字しか読めません。 日本に行ったことはありませんが、行くことを楽しみにしています。もしかしたら、この夏に行くかもしれません!」

オリヴィア「私がど麺罪木をはじめ、他の女性キャラを演じました。エリックは、すべての男性キャラを演じてます。 日本語が上手って褒められるのは、嬉しい!」

たった3カ月学んだだけで、あそこまで上手に文章を考えられるとは! 恐るべきポテンシャルを持つ高校生たちである。諸君、英語を3カ月学んだだけで、あそこまでの脚本を書けるかい?


▲パート1エンディングも、日本語で歌われている。「糞!ファック!」の歌詞も爆笑ものである。


■ 謎の名前の由来は……?

——ヒロインの名前は、なぜ「ど麺罪木」なのか?

オリヴィア「本当のことを言うと、たいした意味がないんです。なんとなくひらめいたと思います。よく覚えていなくてごめんなさい」

——ストーリーはどのようにして思い付いたの?

エリック「前半15分は、オリヴィアが思い付きました。僕の家に遊びに来る途中に思い付いたのだそうです。 後半部分は、ふたりで考えました」

——どんなアニメが好き? 日本のアニメで影響を受けた作品は?

オリヴィア「『キルラキル』『探偵オペラミルキィホームズ 』『プリキュア』『魔法少女まどか☆マギカ』『境界の彼方』が好きです。だいたい2日に1回は、エリックと一緒にアニメを見ています」

エリック「僕はかなり最近アニメを見るようになりました。好きになってまだ1年も経っていないです。 最近は、毎週木曜にオリヴィアと一緒に『キルラキル』を見ます。ほかには、コメディや日常系が好きです。『ひだまりスケッチ』『日常』や、『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』などですね。僕はなぜか、あんまり少年アクション系には目がいかないのですよ」


▲“ど麺罪木”が、「先輩」ではないと発覚したシーン。突然、劇画調に変わる。左側には、“摩耶”っている人物も。

日本から遠く離れているにもかかわらず、『キルラキル』をほぼリアルタイムで見ているとは驚きだ。また、スウェーデン人にも日常系作品の良さが分かるとは! これまた驚きだ。良質の作品に国境は関係ないのかもしれない。

——さて、スウェーデンでは、日本のアニメは人気なのだろうか?

エリック「実は僕たち、スウェーデンのアニメシーンに詳しくありません。僕らは社交的な人間ではないものですから。でも、人気はあるはずですよ。だって、1年に何度も日本のアニメイベントが開かれますから」

オリヴィア「たぶん少年アニメはもっとも人気があるわ。とても入りやすいから」

『ポケモン』や『ONE PIECE』などは、スウェーデンでもかなりの人気とのこと。しかし、アニメイベントでは、コスプレや、フィギアなどの即売会が行われるのだが、『すーぱーそに子』や「初音ミク」関連グッズも人気らしい。情報伝達力の早さにもビックリだ!


▲少女マンガ的作画もお手のもの。白い学ランがたまりません。


■ 体育が苦手で、美術好き

——アニメ制作のふたりの役割分担は?

エリック「アニメのコンセプトは、ふたりで固めます。でも、オリヴィアが、脚本・絵コンテ・デザインを担当。僕が、音楽・動画制作・編集作業を担当します」

——『Senpai Club』制作期間は?

オリヴィア「最初の2つのパートは、合計すると5カ月です。それには、試作や日本語を習う期間も含まれています。
初めはお互いに、ワークフローをつかめていなかったのですが、今はもっと効率的になりました。今はひとパートを、およそ1〜2カ月で完成できると思います」

——おふたりはどうやって知り合ったの?

エリック「僕たちは同じ高校に通っています。僕が3年で、オリヴィアが2年生です。 クラス合同のグループ活動をしたときに、知り合いました」

——好きな科目などはある?

エリック「これは、僕もオリヴィアも一緒だけど、音楽や美術などクリエイティブな科目が好きです。 一方、体育はもっとも苦手」


▲イラスト投稿サイトには、『Senpai Club』をリスペクトした作品がズラリ。

——この作品が日本で話題ですが、それについてどう思う?

エリック「本当に、ふたりとも驚きました。しかもみなさんが、ファンアートをつくってくださり、それがまたとっても素晴らしくて。それもまた驚きです。 みなさんからいただいたコメントは、日本語でもなんとか読めています」

——続きはいつリリースしますか?

オリヴィア「断言はできないけど、パート3は、おそらく4月初旬にリリースできると思います。楽しみにしてください」

——日本のファンにメッセージを。

ふたり「応援ありがとう。また、ファンアートも楽しみにしています! みなさんの投稿は、逐一見させていただいてます。これからもよろしくお願いします。ARIGATO!!」


どうやら、エリックもオリヴィアも日本の諸姉諸兄と変わらぬヲタのようである。やっぱりアニメ好きは国境を超えてもヲタなのだ。特に体育が苦手なあたり。

パソコンで動画制作しやすくなったいま、個人創作のアニメが活発にYouTubeにアップされている。みなさんのお手製アニメも海外から評価してもらえるかもしれない。ウェブ発の個性的作品に今後も期待しよう!


■ おふたりの情報はこちら



・Make Babies HP
http://makebabi.es

・Facebookページ
https://www.facebook.com/senpaiclub

エリックのツイッター
https://twitter.com/Stop_it_Eric

オリヴィアのツイッター
https://twitter.com/raburine

取材・文=武藤徉子