中国のオタクイベントはコスプレが必須!? コスプレから発展した中国オタク事情

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更新日:2014/7/23

中国オタク事情を連載している百元です。第2回は中国のオタク界隈において非常に重要な存在となっている「コスプレ」に関して紹介させていただきます。

日本でもコスプレは存在感のあるジャンルですが、中国のオタク界隈におけるコスプレは日本より更に重要なものとなっています。中国ではオタク系イベントの会場が見つからない場合、コスプレした人の後をついていく、或いはコスプレした集団を探せば会場が分かるといった話もある等、日本に比べてかなりオープンな扱いになっていますし、「オタク」のイメージで真っ先に思い浮かぶのがコスプレとなっています。コスプレは中国のオタクとしての活動の中心、花形的存在と言っても過言ではありません。

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イメージ:Kyudotsg ( BE Chua )

また中国では日本と同じようなコスプレの楽しみ方をしている人もいますが、主流となっているのは舞台の上で複数のコスプレイヤーがキャラになりきって創作劇を行うショー的なものでして、現在の日本のコスプレの扱いや楽しみ方と少々異なる部分もあります。

コスプレが中国のオタク的活動の中心になっているのは、中国におけるオタクの活動やイベントがコスプレを中心に発展してきたからです。中国で「オタク趣味」が認識され、広まるようになったのは90年代末頃からで、そこから00年代前半頃にかけてオタク関係の情報の拡散やネット上の交流が広がっていき、中国のネットにおけるファンサブ活動と「字幕組」が本格的に拡大する00年代半ば頃からオタクのコミュニティの形成や活動が活発に行われるようになっていきました。

しかし、日本で行われているファンによるオタク関係のイベントの情報等も入ってはいたものの、00年代半ば頃になっても中国ではまだ現実社会でのオタク関係の活動や交流の場というのが非常に少ないままでした。
当時の中国のオタクにはイベントやファンとしての創作活動に関するノウハウや習慣も無かった上に、中国特有の事情、例えば個人レベルで人が集まるイベントを開催することの難しさや、出版コードの無い同人誌が「違法出版物」と見做されるリスク等が存在したことからファンとしての創作活動や交流に関して手を出す人がなかなか出なかったそうです。

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イメージ:greyloch

そんな状況の中でコスプレは、始めるのも簡単で気軽に楽しむことができるものとして歓迎されたそうです。中国のオタクの上の世代の人からは
「最初の頃、中国のオタクができることはコスプレしかなかった」
という言葉を聞いたこともあります。またそのコスプレに関する創作活動として、「コスプレしたキャラによる二次創作ストーリーの劇」というのも広まっていきました。

そしてコスプレが中国のオタクの間に広まる中で、当時増え始めていたアニメや漫画をテーマにした商業イベントと結びついていきます。当時の中国はまだ国産のアニメコンテンツが整っておらず、客寄せになるコンテンツやキャラが不足していました。そこに「コスプレ」とそれによる「コスプレ劇」が客寄せのコンテンツとして、日本で言う所の「着ぐるみショー」のような扱い(大きなお友達向けの部分がかなりあったようですが)で組み込まれていったそうです。このような商業系のイベントへの露出の中でコスプレがオタクの活動として広く知られるようになり、中国のオタクの間でもイベントへの志向が強まったり、イベントの参加者の間で交流の場が形成されていったりしました。

現在中国ではコスプレ及びそのコスプレ劇が様々なオタク系イベントの目玉扱いになっていますし、賞金付きのコスプレ大会というのも珍しくはありません。それに加えて中国政府機関からの支援が行われたりもしているそうです。
中国ではオリジナルコンテンツを生み出そうとアニメや漫画等に対する政府の支援が行われていますが、このコスプレ劇(?)の盛り上がりに目を付けたらしく、「オリジナルコスプレ劇」に補助金が出るといったこともあるそうです。 「オリジナルコスプレ劇」を具体的に説明するのは私にも難しいのですが、コスプレっぽい恰好でやる舞台劇を想像していただけば、恐らくそれほど間違っていないと思われます。

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イメージ:FantasiaWing

また、商業系イベント等で大きく扱われることから、最近では普通の舞台系の人間もこの分野に入って来るようになっています。舞台をやっている人はやはりそれだけで食べていくのは難しいので、「コスプレの看板」を掲げての活動をしたりするのだとか。しかしその結果逆にオタク方面に引っ張り込まれる人もいるようで、日本で開催されている国際的なコスプレイベントの中国代表が実は戯劇学院で先生をやっている方だったという話もありますし、結果として中国のコスプレのレベルの向上にもつながっているそうです。

中国のコスプレはそのショー的な面もあってか、一時期「コスプレはカッコよくやるもの」「美男美女しかダメ」「ネタや笑いに走ったコスプレは不可」という空気になりあまり気軽に楽しめなくなってしまったそうですが、最近はオタク系イベントの増加等によりライトな層も増え、気軽にコスプレを楽しむ人がまた増えてきているそうです。それ以外にも中国のオタクの歌い手による現地のアニソンイベントではコスプレをして歌うのが定番演出の一つになる等様々な動きが起こっているとのことですし、今後も中国のコスプレは独自の発展と進化をしていくのではないかと思われます。

文=百元籠羊

※イメージ画像は「GATAG」より