TVアニメ『魔法科高校の劣等生』のよくわかる現代魔法学講座【入学編】

アニメ

公開日:2014/8/12

現在放送中のTVアニメ『魔法科高校の劣等生』。魔法が現実の技術となった近未来の日本で、魔法科高校で魔法を学ぶ高校生たちが、様々な勢力の思惑や国家の陰謀に巻き込まれ、自分たちの未来を掴みとる為に苦難や困難に立ち向かう学園魔術アクションです。


主人公・司波達也と妹である司波深雪を中心に、魔法科高校に在籍する個性豊かな登場人物たちが、魔法を駆使した華麗な戦闘や奥深い駆け引きを繰り広げる姿を、皆さんも毎週ご覧頂いているかと思います。

ところで、この『魔法科高校の劣等生』で重要な要素として登場する『魔法』。アニメでは幾何学的な魔法陣だったり、空中を伝わる波紋だったりと、不可思議な超常現象のように描かれていますが、実は科学的根拠のある詳細な設定に基づいて描かれているのはご存知でしょうか?

「高度に発達した科学は魔法と見分けがつかない」とは、かの有名なSF作家アーサー・C・クラークの言葉。この『魔法科高校の劣等生』の魔法は、ファンタジーで描かれるような便利な『魔法』ではなく、実はSF作品で描かれる高度な科学技術の産物なのです。

今回は、そんな魔法について、まずは「入学編Ⅰ~Ⅶ」で登場したものを解説します。

◆現代魔法学の基礎知識[入学編]
・イデア(情報体次元)
現代魔法学において、この世界の全ての情報が記録されているとされる次元のこと。

・エイドス(個別情報体)
現実の事象に付随する情報体のこと。魔法とは、このエイドスを改変することによって様々な事象を生み出している。

・サイオン(想子)
認識や思考結果を記録する情報素子。人間の"意思や思考を形にする"粒子だとされているが正体は解明されていない。

・魔法式
サイオン(想子)で構築されたエイドスを一時的に改変する為の情報体である。イデアを経由して対象のエイドスに干渉、書き換えることで、一時的に現実世界の事象が改変される。
現代魔法学では、"加速・加重"、"移動・振動"、"収束・発散"、"吸収・放出"の四系統八種の系統魔法。そのカテゴリに属さない古式魔法や情動干渉系魔法といった系統外魔法に大きく分類される。

・CAD(シー・エー・ディー)
魔法を起動するための補助器具。魔法の起動に必要な魔法陣、呪文、呪印といったデータを電子情報として記録している。現代では複雑な魔法を扱う際の魔法の高速化にかかせない道具。多様性を重視し様々な系統魔法を記録できる汎用型、記録できるデータが少ない代わりに魔法の起動速度を重視した特化型、刀や手甲などの武具に内蔵された武装一体型などがある。

・魔法師(魔法技能師)
魔法を使用できる人々の総称。過去の世界大戦によって異能者、超能力者の軍事利用の研究が各国で活発化し、その結果、遺伝子技術によって先天的に異能を授かることに成功した。以来、世代を経るごとに交配と分化が行われ、現代では血族関係で結びついた様々な家系が生まれている。

◆「入学編Ⅰ~Ⅶ」に登場する魔法
・精霊の眼(エレメンタル・サイト)
登場回:第一話 使用者:司波達也

達也が光井ほのかの使おうとした閃光魔法を読み取った魔法。知覚系魔法とされているが、ESP(超感覚)に属する異能。イデアにアクセスし、そこに記録されているエイドスを読み取ることができる。これによって達也は、発動前の魔法式を解析したり、周囲の特定人物のエイドスを認識して魔法式の照準にしたりすることができる。

・自己修復術式
登場回:第三話 使用者:司波達也

深雪に不意打ちを受けた達也が自分を治療した魔法。自分自身が戦闘不能となるような負傷を負ったときに、無意識領域で自動的に発動する。イデアに記録されているエイドスのバックアップ・データを遡って魔法式に複写し、負傷した自分自身のエイドスを上書きすることで、負傷する前の状態に復元する。

・高周波ブレード
登場回:第三話 使用者:桐原武明

桐原武明が壬生紗耶香に竹刀で斬りつけた魔法。振動系の近接戦闘用魔法。魔法の危険度分類を定めた「殺傷性ランク(三段階)」がBと比較的高い。刀身を高速振動させ、触れたものを摩擦熱で溶断する。超音波をまとっているため、超音波酔い防止の耳栓を使用する術者もいるらしい。

・キャスト・ジャミング
登場回:第三話 使用者:司波達也

激昂した桐原武明の魔法を止めるために達也が用いた魔法。エイドスに働きかける魔法式を妨害するサイオンノイズを作り出す。本来はアンティナイトと呼ばれる特殊な鉱物を使った機器が必要だが、達也は相反する二つの魔法式を同時に起動することで魔法を相殺する干渉波を作り出し、特定の魔法に限り無効化を可能にしている。

・パンツァー(Panzer)
登場回:第六話 使用者:西城レオンハルト

レオが学校を襲ったテロリストに対して使った魔法。収束系の魔法で、分子の相対座標を固定し、外部からの衝撃に対する耐久性を上げる。硬化魔法を得意とするレオは、魔法式の構築・発動を継続的に更新することにより、身に着けているもの全てを硬化しながら動くことができる。

・自己加速術式
登場回:第六話 使用者:千葉エリカ

エリカが壬生紗耶香との真剣勝負で使った魔法。加速系の魔法で、自分自身を対象として加速度ベクトルに干渉し、特定方向へ急加速させる。エリカの実家の千葉家は自己加速・自己加重魔法を用いた白兵戦闘の大家で、単純な自己加速以外にも剣術を応用した技が奥義として伝わっている。

・分解魔法
登場回:第七話 使用者:司波達也

ブラッシュの構成員たちが持つ銃を破壊した魔法。収束、発散、吸収、放出系の複合魔法とされている。作中では達也のみが扱える魔法で、魔法の中でも超高難易度。物体であれば、構造情報を物体が分解された状態へ書き換える。情報体であれば、その構造自体を分解する。銃をパーツごとに分解するだけではなく、分子レベルにまで分解したり、質量をエネルギーにまで分解したり、分解の段階ごとに様々なバリエーションが存在する。

・邪眼(イビルアイ)
登場回:第七話 使用者:司一

ブラッシュのリーダー・司一が達也に仕掛けて、破られた魔法。光波振動系の魔法で、催眠効果を持つパターンの光信号を人間の知覚速度の限界を超えた間隔で明滅させ、指向性を持たせて相手の網膜へ投射する。洗脳技術から派生した一種の催眠術とされている。

・ニブルヘイム
登場回:第七話 使用者:司波深雪

ブラッシュの構成員たちを凍らせた魔法。振動・減速系の広域冷却魔法。領域内の物質を比熱、相(フェーズ)に関わらず均質に冷却する。応用としてダイヤモンドダスト、ドライアイス粒子、液体窒素を含む冷却した大気を移動させて敵にぶつける攻撃方法としても使える。

いかがでしょうか? 魔法ひとつの設定を見てみても、我々が学校の授業で学んだ科学や物理とも密接に関係しているのがおわかりいただけるかと思います。SFとしてアニメを見るとまた違った視点で作品の面白さが発見できるのではないでしょうか。

次回は、さらに「九校戦編」での魔法についての解説をお伝えします。

文=愛咲優詩