Cover Model 山田孝之 2010年11月号

Cover Model 紹介

更新日:2013/10/11

Cover Model 山田孝之

かなり特殊だけれど、
きっとこんな人たちは
絶対いるんだろうなって思うんですよ

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覗く男(英則)に、復讐を待つ女(奈々瀬)!?
『ダ・ヴィンチ』連載時から反響を呼んでいた『乱暴と待機』(本谷有希子/著)がついに映像化された。
今回、表紙に登場してくれたのは、同映画で妊娠中の妻がいながらも
隣の女(奈々瀬)にちょっかい出しまくるダメ男・番上を演じる山田孝之さん。
本誌では、原作者の本谷さんと対談している。
個性過剰な4人が織り成すディープな関係が見どころの本作だが、
山田さんはダメ男・番上に対して、どんなことを感じていたのか。
「番上を演じるのは楽しかったんですよ。イライラもしましたけど……。
彼にイライラしたというよりも、現場にいて『自分だったらこうやるのに』って部分が出てくると……
だって番上ってなんにも考えてないじゃないですか。
演じる役と、実際の自分とのあいだに違いがあるのは、どの仕事でもそうなんですけど、
ただ、演技をするうえでは、その自分とは違う台詞を納得して言わなきゃいけないから。
どんな作品でも自分の気持ちは押し潰して、その役としていなくちゃいけない。
そういうイライラっていうのかな……」

そんな山田孝之さんが選んだ本は――

『生きてるだけで、愛。』
本谷有希子
新潮文庫 340円

『生きてるだけで、愛。』

「あんたと別れてもいいけど、あたしはさ、あたしと別れられないんだよね、一生」。──躁鬱と過眠症と引きこもりという現代的な三重苦を抱えた主人公・寧子は、津奈木と同棲中。ある日、津奈木の元恋人が現れ、寧子を追い出すため自立を迫るが……。疾走感あふれる文章と怒涛の人間描写、毒と瑞々しさが融合した芥川賞候補作。そのほか前日譚にあたる短編「あの明け方の」を収録。

「寧子はそばにいてほしい女性では決してないけど、彼女が持つ、女性が抱えがちなややこしさには、読んでいて引きこまれました。身近にいたら『お前、何やってんだよ』と説教したくなると思うんですが(笑)、自分自身の鬱屈に対して、こういう発露の仕方しかできない姿は、ある意味、とても人間らしいと言いますか。僕はどこにも“普通”ってものはないと思うんですよ。普通がなければ、その対極にある“変”もない。常識の枠を外れているように見える寧子を“変な奴”と片付けるのは簡単だけど、そのフィルターを取り除いたときに、根源的な人のあり様が見えてくると思います。人間の深淵に触れることができる、そんな作品です」(山田孝之 談)