特集番外編1 2007年1月号

特集番外編1

更新日:2013/8/15

「BOOK OF THE YEAR 2006」特集 番外編

 

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編集/服部美穂

 

毎年、担当者は日に日にみすぼらしくなっていき、期間中に病に倒れる者も続出する恐怖の特集「BOOK OF THE YEAR」に、今年、初参戦となった私。

原稿回収の頃には“軍曹”と恐れられ、入稿直前、ほぼ編集部に住み込み状態だった時には“ホームレス”と蔑まれ、それでも、なりふりかまわずにがんばった甲斐あって、今年の特集はなかなか面白い特集になったと思います。

まず、今年の「BOOK OF THE YEAR」は、特集全体を通して、なるべく “顔”を出すことを意識しました。

著名人では、総合1位『ハリー・ポッターと謎のプリンス』読者代表・加藤ローサさんが語るハリー・ポッターの魅力、総合2位『陰日向に咲く』の著者・劇団ひとりさんのインタビューから始まり、オタク界代表・しょこたん、お笑い界代表・品川庄司の品川さんほか、ニート界、ガーリー界の代表によるオススメ本。

また、私が担当した「今年の出版ニュースクリップ」のコーナーでも、色んな方にご登場いただきました。1年を振り返るだけではなく、生のニュースもお届けできたのではないかと思います。それから、毎年恒例「本読みのプロが選ぶ今年の3冊」でも、ダ・ヴィンチ誌上でおなじみのブックウォッチャーの方々の素顔がずらっと並んでおります!これはめったに見れません!

また、今年は本の顔である「装丁」についてもクローズアップしてみました。広告デザインや書籍の装丁のプロデュースを手がける栗本知樹さん、女優でエッセイストの本上まなみさん、新進アーティストの佐藤玲さんが、それぞれに「今年、ひとめ惚れした本」を挙げて下さっています。

そして、今回の特集の顔を素敵に仕上げてくださったデザイナーの川名さんにもこの場を借りてお礼を言いたいと思います。本当にありがとうございました!

いつもとはひと味違う「BOOK OF THE YEAR 2006」特集、ぜひお楽しみ下さいませ。

 

 


 

 

「BOOK OF THE YEAR 2006」特集 番外編

 

編集/編集K.I

 

劇団ひとりさんの『陰日向に咲く』をはじめて読んだのは、今年の年明け。ダ・ヴィンチの巻頭のインタビューページ「気になるあの人の気になる1冊」で、劇団ひとりさんを取材したときのことでした。そのときのメインの話題は劇団ひとりさんのオススメ本『芸人失格』(松野大介)のこと、はじめて声優を務められたドラえもん映画のこと。ところが、取材直前に事務所の方から、「少しでもいいからコレの話もきいてほしい」と送られてきたゲラ。それが『陰日向に咲く』でした。

そして、取材当日、インタビュアーのライターさんと開口一番「読んだ?」「すごいね」「驚いたね」と言い合ったのをよくおぼえています。

とはいえ、「いい本が必ず売れる」とは限らない、のがこの世の常。わたしたちの興奮をよそに、劇団ひとりさんは、大仕事を終えたよろこびとかはなく、むしろ終始いたってクールな感じでした。

その後の『陰日向に咲く』の大ブレイクはみなさんもご存知のとおり。BOOK OF THE YEARの総合ランキングでもかなり上位に食い込んでます。

さて、その結果やいかに!?

ぜひ本誌でご確認ください!

 

 


 

 

「BOOK OF THE YEAR 2006」特集 番外編

 

編集/編集M

 

BOOK OF THE YEAR(以下、BOY)の編集後記を書くのもこれで3回目。過去2回は“とにかくつらかった”→“クリスマスは会社で仕事”という落ちで済ましてきましたが、3回目もそれを書くのはつらいなあと思うわけです。たとえ今年も、クリスマスに一人で会社にいたとしても。

今回は他のBOYの担当者も編集後記を書くので、BOY自体に書かなくてもいいのかなあとか思っています。

そこで今回は“誰も知りたくない!編集Mの裏BOY”ということで今年私が読んだ本で特に変わった魅力に溢れた本を紹介したいとおもいます。日本全国一億2千万人のうち1000人くらいの人にピンポイントでオススメできる本、3冊を紹介します。思い当たる人以外は戻るをことを強く推奨します。

 

 

『完全覇道マニュアル』
架神恭介、君主論太郎、 辰巳一世
シンコーミュージックエンタテイメント  1680円

マキャベリの『君主論』を小学生のクラス覇権にあてはめ解説するという意欲作。小学生たちが己のもつ才覚の全てを用いクラスの覇権を争うというお話。小学生の争いといっても、なにしろ、もとはマキャベリの君主論。「君主は信義を守る必要はない」とか「平和は次の戦争のための準備期間」とか過激な信念をもとに、権謀術数を繰り広げる過激な内容。だからといって、直接的な暴力シーンが全くないのが、この本の恐ろしさ。マキャベリズムを体現したひろしクンに、クラスのみんなが心酔するシーンをみると、人心掌握の恐ろしさが骨身にしみ亘ります。

 

『まるくすタン』
おおつやすたか
サンデー社 998円

はじめにお断りしますが、この本はエロ小説ですので未成年の方は購入の際にお気をつけを。あのマルクスをネタにエロ小説を書こうという意気をまずは買いたい本です。本編の主人公・丸楠かおること、まるくすタンは、極めて合理的な思考をもつ女の子。彼女は、女王に支配される学園に疑問をもつことから始まります。レズビアンの円家りす・エンゲルスにそそのかされるまま、まるくすタンはその思想を完成させていくというお話。ソ連が崩壊したのはもう20年近くも前になるのかと、当時小学生で何の記憶もない私ですら感慨に耽りたくもなるほどの、ある意味爽快なパロディになっています。

 

『宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ』
佐藤俊哉
岩波科学ライブラリー 1260円

タイトルから、これほど混乱した本はありません。前半部分と後半部分がどうしてもつながらないのです。しかし、内容は「宇宙怪人しまりす」と「医療統計」というどうにもミスマッチな2要素が完全に合致しています。恐るべし岩波科学ライブラリー! 地球を支配しにやってきた宇宙怪人しまりす(宇宙怪人が名字、名前がしまりす)が、「人民を生かさず殺さず搾り取らないとならないので、人民の健康を守ること。それには死亡率を減少させる対策が重要である」など、効率的に支配するための医療統計を日本の学者から学ぶという設定。可愛らしいキャラクターと、固い内容、そこはかとなく毒気のある文章と、混ぜたらキケンなものを、ことごとく混合した大怪作。肝心の内容は、科学的素養の乏しい私は、後半部分を理解するのに時間がかかってしまいました。

 

 

この一年、本当に多くの本が出版されました。誰にでもお勧めできる素晴らしい小説もあれば、上で挙げたような、極々少数の人間にピンポイントで衝撃を与える作品もあります。本当に本というメディアは多様なのだなと思わされます。来年も、皆様が衝撃を受ける作品に出会えることを切に願っています。