特集番外編1 2007年10月号

特集番外編1

更新日:2013/8/15

特集番外編1

 

advertisement

編集M.N.

 

上橋菜穂子という作家を知っていますか? では、『精霊の守り人』は? 『獣の奏者』は? え、知らない。ファンタジーに興味ない。なんてもったいないことを!

上橋菜穂子の魅力は“ファンタジー”にあるわけではありません。だって彼女の作品には、ひとつの魔法もない、それどころか、ひとつの奇跡だって起きないんですから。じゃあなにが起こるのかって? ただ、生きているだけです。生きて、学んで、思い通りにならない現実に、自分の力で立ち向かっている。泣きながら、笑いながら、憎みながら、愛しながら。異世界(ナユグ)にすまう精霊たちと触れたり、王獣と呼ばれる大きな生き物が登場したり、霊狐やヘビ神や呪術師や……確かにいまのわたしたちにはなじみのないものの存在する世界、そういう意味では確かにファンタジーなのだけれど、決してお伽話なんかじゃないんです! 本誌の特集を読めば、きっとそのこともおわかりいただけるでしょう。上橋菜穂子ビギナーにもお楽しみいただけるよう、作品紹介や、著名人からの推薦コメント、人物相関図などもご用意しております。

えー? 初心者にも楽しめるってことは、わたしたちには物足りないんじゃない? と思った、ファンの方。ご安心ください。ファンの方が食い入ること必至のシロモノがございます。その名も、「二木真希子描き下ろしの大パノラマ」! 「守り人シリーズ」の挿絵を描かれており、スタジオジブリで原画担当をされている二木真希子さんによる、描き下ろし。それも、ただの描き下ろしじゃありません。上橋作品全てを網羅し、1枚の絵に閉じ込めたという、ほかのどこでも拝むことのできない、美しい素晴らしいイラストなのです!! ありがたくも原画を目の前にさせていただき、わたくし、鼻血が出るかと思いました。隣にいた編集Rはよだれをたらしておりました(実話)。そして、本当に気さくで素敵な方なんです、二木さん。突然のお願いにもかかわらず、インタビューに快くお答えいただいて、下絵をたくさん見せていただいて。エリンの持っている竪琴は、上橋さんとやりとりをして形を決めていただいたそう。こちら、文字通り、必見でございます。見なきゃ損ですよ、マジで。

ほかにも、今回の特集の見所といえば、なんといっても、そこかしこに上橋菜穂子さんご自身に登場いただいていること! ファンサイトの方々、そしてmixiのコミュニティの方々にご協力いただきました「勝手に実写キャスティング!」のコーナーでは、キャラクターひとりひとりに、丁寧に上橋先生がコメントしてくださっております。誌面の都合上、すべての結果を掲載することはかないませんでしたが、上橋先生はすべての結果をご覧になってくださいました。なかなか面白い結果が集まり、笑える箇所もちらほらです。

そして、いかにして上橋菜穂子という作家が生まれたのか――それを知ることの出来る、上橋菜穂子バイオグラフィ&語録。先生ご自身から提供していただいたお写真も、カラーで掲載されております。どこからあの壮大で重厚な物語が生まれたのか、その端緒に触れることが出来るのではないでしょうか。

そのあとに控えているのは、今話題の、あの佐藤多佳子さんとの対談。まったくかたくるしくない“おしゃべり”の中で進んでいきました。時には楽しそうにはしゃいで、共感して、手をたたくようにして盛り上がり、そして一転、作品を描くときなどのマジメなお話になると、お二方ともすっと表情が変わられる。そんな調子で、場の空気が生きているかのように躍動しながら、時間もあっという間に過ぎ去ってしまいました。それに、さすが大御所のお二人だけあって、話題にも底がない! 物語の源泉というものを目の当たりにした対談です。そんな空気をきっと、お読みになれば、あなたも体感できるはず。そしてますます、作家の魅力と作品の魔力にとりつかれてしまうことと思います。

最後に。今回の特集、多方面の方々からご協力をいただき、支えられてつくることがきました。特に、上橋菜穂子先生ご本人の、ご厚意がなければ実現しなかった企画ばかりです。本当に本当に、ありがとうございました!