特集番外編1 2010年10月号
更新日:2013/8/9
「蒼穹の昴」で中国近代史の面白さに目覚めた!
編集R
いま時代モノがブームといわれ、特に江戸末期から明治にかけての幕末に人気が集まっています。お隣の国・中国でも歴史モノが常に人気の高いジャンルで、浅田次郎さんの「蒼穹の昴」シリーズで描かれる清朝末期の時代は、三国志と並ぶほどの人気だそうです。
中国の清朝は、それこそ日本の江戸以上に長い歴史をもつ王朝であり、中国という大きな国のひとつの時代が、終末を迎える数十年間のダイナミズムは幕末のそれとは比べものにならないほど。
さらに、学生時代に勉強した中国史に登場する――西大后や光緒帝、袁世凱、張作霖といった人物たちが、浅田さんが生み出したキャラクターとともに、いままで見たこともないような側面をあらわにします。とくに西大后や張作霖といった人物は英雄でありながら悪女・悪漢として強くイメージされてきました。そんな彼らが、シリーズでは非常に魅力的な人間として描かれているのです。
特集の対談で浅田次郎さんがおっしゃっているように、『蒼穹の昴』からはじまって『珍妃の井戸』をへて『中原の虹』まで読むことで、これまでの世界が一変しました!
この時代だけでも魅力的な題材なのに、そこで描かれるのは膨大な資料から調べ上げたであろう、綿密な舞台背景とキャラクターたちの物語を織り交ぜ、さらには「龍玉」という謎のアイテム。もう、すぐに虜になりますよ!
中国との共同制作でドラマ化された『蒼穹の昴』は、本場中国でも大ヒットしたそうですが、その理由のひとつにはやはり、西大后をはじめとする歴史上の人物たちの新たな側面が、好意的に受け入れられたからではないでしょうか。
日本でもすでにNHK BShiで一度放送されましたが、2010年9月からNHK総合で日本語吹き替え版が放送開始されます。
そして間もなく刊行されるシリーズ最新作『マンチュリアン・リポート』では、前作で大活躍した張作霖の爆殺事件が題材に! 大の「蒼穹の昴」ファンという中田有紀さんとの対談でも浅田さんは多くを語りませんでしたが、なにやら「日本文学史上初の登場人物」が描かれるそうで……とても楽しみです!
歴史の舞台裏を浅田さんと一緒に覗いている――そんな気持ちになれる「蒼穹の昴」シリーズを、ぜひ体験してみてください。