Cover Model 稲川淳二 2013年9月号

Cover Model 紹介

更新日:2013/10/9

Cover Model 稲川淳二 2013年9月号

Cover Model 稲川淳二

結局、怪談っていうのは「故郷」なんだと思います
わたしは「故郷」を届けているんです

全国ツアー〈稲川淳二の怪談ナイト〉も今年でなんと21年目。
北は北海道から南は沖縄まで、全国30カ所以上の会場を回って、
生の怪談語りを届けている。
いまや真夏の恐怖番組にはなくてはならない存在となった、
怪談語りの第一人者・稲川淳二さん。

「今の若い人たちは、田舎の風景ってあまり見たことがないでしょう。
でも、都会で生まれ育った人でも、
怪談を聞けばなんとなく日本人の故郷を感じることができる。
わたしが一生懸命やっているのは、日本人に故郷を届けることなんです。
わたしは幽霊も背負ってますけど、故郷も背負ってるんですね(笑)。
夏になるとやってくる故郷のジジイがまた怖い話をしているぞ、
っていう感じですよねえ」

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「以前とあるライブ会場に地元の暴走族グループが聞きに
来ていたんですよ。
騒ぐのかなあ、と思ったらみんな大人しく聞いてくれてね。
20~30台のオートバイでわたしの乗っているハイヤーと併走しながら、
『稲川さーん、ありがとうございました!』
って手を振ってくれたんですよ。
運転手さんが『こんなこと珍しいですよ』って感心しちゃってね(笑)。
怪談ってすごいんだな、ってあらためて思いましたよね」

近年では「サマーソニック」や「ライジングサン」といった
巨大ロックフェスティバルに出演を果たすなど、
活動の場をますます広げている。
屋外で披露される生の稲川怪談はロックファンにも大好評だという。

「屋外のロックフェスはとても気持ちがいいですよ。
怪談に混じって、潮騒が聞こえてくるんです。
ロックのお客さんも結構怪談が好きなんですよね。
ステージの横を見ると、出演者がみんなニコニコして聞いてくれてるの。
ああいう楽しみ方をしてもらえるのは嬉しいですね。
わたしの怪談は笑うも結構、寝るも結構。
どう楽しむのも自由なんです」

怪談というと不気味でおどろおどろしいもの、
というイメージが付きまとう。
確かに稲川さんの語る怪談は恐ろしい。
しかし、その底にはすべてを包みこむ絶対的な優しさがある。
自由を肯定する強さがある。
今日もどこかの会場で、稲川さんは怖くて楽しい怪談を語りつづけているはずだ。

そんな稲川淳二さんが選んだ本は——
『死の地帯』
死の地帯
ラインホルト・メスナー/著 尾崎鋻治/訳 山と溪谷社 絶版

熟練した登山家でさえ命を落としかねない「死の地帯」。そこで絶体絶命の危機に陥った人間は、一体何を見るのか。世界的登山家メスナーが自らの体験と、多くの遭難記録をもとに、極限状態における意識に迫った山岳ノンフィクション。生死の境に発現する、人間の知られざる力とは?
「この本に出会って以来、わたしの怪談観がちょっと変わりましたね。日本人の伝統を大事にしながら、人間科学のような考え方も意識するようになったんです」(稲川さん)

全国怪談ライブツアー
「MYSTERY NIGHT TOUR 稲川淳二の怪談ナイト」の詳細はこちら。
稲川淳二公式HP http://j-inagawa.com/