特集番外編2 2013年10月号

特集番外編2

更新日:2013/9/30

特集番外編2 2013年10月号

『人類資金』はエンターテインメントでありながら、強いメッセージが込められた作品。映画では、森山未來さんの熱演にご注目ください。

編集I

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 映画『亡国のイージス』でタッグを組んだ阪本順治監督と作家の福井晴敏さんが挑んだ、7年越しのプロジェクトが『人類資金』である。
 かねてから、戦後最大の闇といわれる「M資金」を映画の題材にしたいと考えていた阪本監督から、福井さんにオファーがあったのが2006年3月。リーマン・ショック、東日本大震災という日本をゆるがす大激震を経て、福井さんがいま書くべきテーマとして選んだのは「金とは何か」。現在の経済状況について危機感を覚えた福井さんは、自らの提案も盛り込んだ初めての経済小説に挑んだのだ。
 福井さんが作成したプロットから映画の製作、小説の執筆がスタート。今年の8月から、文庫での小説刊行がはじまり、10月19日(土)から映画公開となる。

「10兆円で世界のルールは変えられるか?」。これが映画『人類資金』のキャッチコピー。10兆円とはM資金の時価総額。ある人物の依頼でこれを盗み出した真舟という主人公が、10兆円という金を「人類のための資金」にすべく奮闘するのが本作なのだ。

 今回の特集では、福井さん、阪本監督に本作に込めた思いと、問いたかったメッセージの内容についてインタビュー。映画化実現には、まさに「資金」にも苦労して、借金までして撮影を断行した経緯もあったというが、「結果的に誰もつくったことがない種類の映画ができたという自信があります」と監督の言葉を信じて、ぜひ映画館に足を運んでほしい。

 上記二人のインタビューに加えて、実際の「10兆円」とはどれほどの金額か、一般には想像しにくいだろうということで、経済学者の飯田泰之氏、社会学者の古市憲寿さんに、「10兆円で世界を変えるとしたら、私だったらこうする」という内容で取材。10兆円の実力がわかる具体的なコメントをいただいた。

 監督にとっても作家にとっても初めて挑戦だった「経済」というテーマ。さまざまな書籍をひもとき、考えながら進んだそうだが、映画で重要な役どころを務める森山未來さんもその一人。福井晴敏×森山未來対談では、実際に彼らが読んで参考にした本もあげてもらいつつ、映画の見どころについて聞いている。読めば、小説『人類資金』を手に取り、映画が見たくなること必至のディープな対談なので、ご一読いただけるとうれしいです。