特集番外編1 2008年7月号

特集番外編1

更新日:2013/8/14

特集番外編1 梨木香歩特集

 

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編集P

 

ちいちゃなものに目を向けることが大切だと思うんです、と、今回の特集にご協力くださったかわしまよう子さんは、おっしゃっていました。

『西の魔女が死んだ』をイメージした雑草の寄せ庭をつくっていただけませんか、とむりなスケジュールの中でお願いしたわたしたちに、「さっそく読んでみました」とお電話をくださったかわしまさん。ご快諾いただき、初めてお会いした喫茶店のテーブルには、グラスに挿された草花がありました。やっぱりこういう植物を飾るお店が好きなのかな、と思っていると、おもむろに、「これがキュウリグサなんですよ。家の庭から摘んできたんですけど」と。静かにさりげないけれど、でも存在感のある草花、それがまさかお庭に生えている雑草だなんて思いもせず、驚くと同時に、ああ・この方にお仕事を受けていただけてよかったと、心から感じたのでした。

雲行きが怪しく、台風直撃か、と思われた撮影日。集合時間が近づくにつれ、風も弱まり、日の光も見えてきました。撮影場所である池尻大橋の茂みは、かわしまさんが見つけてくださった場所。30分前に到着すると、すでにいらっしゃって、草花を摘みながら準備をされていました。撮影場所のすぐそばに、びっしり生えたヘビイチゴがあり、名もわからないかわいらしい草花が何種類も生息していて、日常の場所にこんなにたくさんの植物が生きているのに、すぐ足元の近い場所に目を向けようともしていなかった自分にはっとさせされました。ジョウロに活けられた草花を持って、背筋を伸ばして立つかわしまさんは、まるで『西の魔女が死んだ』のおばあちゃんのようでもまいのようでもあり、その美しい瞬間を絶妙に切り取るカメラマンの市橋織江さんのお仕事にも思わず感嘆。室内撮影へ移動したあとも、草花を飾っていくかわしまさんの、優しく細やかな指使いにほうっとなるしかできませんでした。

今回の特集のメインである、梨木香歩さんのロングインタビューは6ページ。梨木さんと、ライターの瀧晴巳さんの言葉のやり取りは、インタビューという枠を超えて、深い深いところで行われたような気がします。それはきっと、インタビューをお読みいただければおわかりになるはず。作品に流れるいとおしさや切なさ、そして強さ、言葉にしてしまうと陳腐ですが、涙を流してしまう作品の根幹がどこにあるのか、染み入るように伝わってくるお話です。かわしまさんの創られた草花は、そのページすべてに使用されていて、梨木さんの強く丁寧なお言葉を彩っています。ぜひ、ごらんいただければと思います。

 

最後になりましたが、特集させていただき、インタビューだけでなくご著書へのコメントまでくださった梨木香歩さん、お忙しい中、ありがとうございました。

そして、この特集を素晴らしいものにしてくださった、かわしまよう子さんをはじめすべての方々に、心より感謝を申し上げたいと思います。

本当にありがとうございました。

 

 

 

 

特集番外編1 梨木香歩特集

 

編集K

 

このたびは梨木香歩さんの特集を読んでくださいまして、ありがとうございました。特集を通して作品に触れ、梨木さんとお話させていただき、梨木さんと植物は切っても切れない関係にあることがよく分かりました。

ここではページの都合で紹介しきれなかった『西の魔女が死んだ』に登場する植物たちを一挙紹介したいと思います。ライターの門賀美央子さんがセレクト、執筆してくださいました。これで、『西魔女』の植物はすべて〜のはずです!

 

キュウリ草

胡瓜草[きゅうりぐさ](学名:Trigonotis peduncularis)

分類:ムラサキ科キュウリグサ属

春に咲く草花。わすれな草をミニチュアにしたような青い可憐な花を咲かせる。この草を手で揉むと、キュウリにした匂いがするので、この名がついた。花言葉は「愛しい人へ」、「真実の愛」。

キンレンカ

金蓮花[きんれんか](学名:Tropaeolum majus)

分類:ノウゼンハレン科ノウゼンハレン属

初夏から秋口にかけて、オレンジや赤、黄色などのうつくしい花を咲かせる。和名のノウゼンハレンは花がノウゼンカズラに、葉がハスに似ていることからつけられた。まるい葉や、みずみずしい茎をサラダにつかったりする。9月6日の誕生花で、花言葉は「愛国心」。

櫟[くぬぎ](学名:Quercus acutissima)

分類:ブナ科コナラ属

和名のクヌギは、クリ似木が転じたものだといわれるが、国木(くにき)あるいは食之木(くのき)に由来するという説もある。10月16日の誕生樹で、花言葉は「おだやかさ」。

樫[かし] (学名:アカガシ/Quercus acuta ウラジロガシ/Q. salicina シラカシ/Q. myrsinaefolia アラカシ/Q. glaucaイチイガシ/Q. gilva)

分類:ブナ科コナラ属

東アジアから東南アジアの暖帯に自生するブナ科の常緑高木の一グループ。英語のオーク(Oak)の訳語に使われるが、オークとカシは同じ科ではあっても別種。花言葉は、「勇気」、「力」、「長寿」。ギリシア神話では主神ゼウスを象徴する樹とされている。

榛の木

榛[はしばみ] (学名:Corylus heterophylla var.thunbergii)

分類:カバノキ科ハシバミ属

北海道から九州の山地や丘陵に生える落葉低木。ハシバミの果実は食用になり、世界の四大乾果の一つに数えられる。10月6日と10月16日の誕生樹であり、花言葉は「知恵」、「仲直り」、「調和」、「一致」。

栗の木

栗[くり](学名:Castanea crenata)

分類:ブナ科クリ属

ブナ科の落葉高木。秋には実らせる果実は、世界中でお菓子や料理に使われている。フランスなどでは、焼き栗が秋から冬にかけての風物詩として欠かせない。6月20日の誕生樹で、花言葉は「満足」。

かやつり草

蚊帳吊草[かやつりぐさ](学名:Cyperus microiria)

分類:カヤツリグサ科カヤツリグサ属

至る所でみられる雑草で、稈(かん)とよばれる三角形の茎の両側からひきさくと、蚊帳を吊ったような四角形になるところから、この名がついた。最近では、盆栽用の草としても愛でられている。花言葉は、素朴な風情に相応しく「素直さ」。

金木犀

金木犀[きんもくせい](学名:Osmanthus fragrans var. aurantiacus)

分類:モクセイ科モクセイ属。

10月頃、秋の訪れを告げる薫り高い小花をつける。雄花と雌花があるが、日本にあるのは、ほとんどが雄花。楊貴妃が愛した美酒・桂花陳酒は、白ワインにこの花をひたして熟成させたもの。10月2日の誕生花で、花言葉は「謙遜」。

バラ

薔薇[ばら](学名:Rosa multiflora)

分類:バラ科バラ属

世界で最も愛されている花の一つ。花言葉は色によって様々で、白は「心からの尊敬」、赤は「愛情」、ピンクは「気品」、黄色は「嫉妬」など。ブルガリアが世界的にバラの産地として知られ、バルカン山脈の裾野にある「バラの谷」と呼ばれる場所で育てられたバラの香油は「ブルガリアの金」と呼ばれるほど質が高い。

にんにく

大蒜[にんにく](学名:Allium sativum)

分類:ユリ科ネギ属

世界中で香味野菜として使われる植物。強壮剤としても使用される。紀元前3200年頃には、すでに古代エジプトなどで栽培されていた。ドラキュラをはじめとした魔物をおいはらう霊力を宿すといわれている。花言葉は、「勇気と力」。

イタドリ

虎杖[いたどり](学名:Reynoutria japonica)

分類:タデ科イタドリ属

タデ科の多年草。痛みをとるのに効果があることから、この名が付いたとも。スカンポともいい、子供のおやつ代わりの野草でもあった。気管支関係の症状を和らげる漢方薬としても使われる。古来より薬として信頼されていた事を反映してか、花言葉は「回復」。

ギシギシ

ギシギシ[ぎしぎし](学名:Rumex japonicus)

分類:タデ科ギシギシ属

日本全国の道端や田の畦(あぜ)、小川の縁などに生える。ギシギシというおもしろい名前の由来はよくわからないが、ギシギシ音がたちそうなぐらい密生した実をつける。根を煮出したものは、皮膚病の薬に使われた。花言葉は「忍耐」。

蓬[よもぎ](学名:Artemisia princeps)

分類:キク科ヨモギ属

草餅でおなじみの多年草。モチグサという別名もある。日本全国の山野や道端など、どこにでも普通に生える。夏に採った葉を乾燥させ、臼でついて綿毛をあつめたものがお灸で使うもぐさ。あらゆる臓器を強壮する薬効があり、邪気を祓うともされた。12月1日の誕生花で、花言葉は「幸福」、「平和」、「平穏」。

竹[たけ]

イネ科タケ亜科

かぐや姫の竹取物語を始めとした、あらゆる文芸作品に登場する、日本人には親しい存在である竹。若い茎を食用にするほか、工芸品や建材など、生活のあらゆる面で利用されてきた。また、生薬としても重宝されている。松や梅とともに縁起の良い植物として、画題などにも好まれてきた。花言葉は「節度」、「節操」。

杉[すぎ](学名:Cryptomeria japonica)

分類:スギ科スギ属

花粉症人口が増えたせいで、春先になると何かと悪者になる杉だが、生長がはやく、木材として使いやすいことなどから重要な樹木とされ、古くから植林がおこなわれてきた。現在、日本の全植林面積の40%をスギ林が占めている。また、杉の木は殺菌力にも優れているため、漬け物や酒を仕込む樽に使われることが多い。花言葉は「雄大」、「堅固」。

すみれ

菫[すみれ](学名:Viola mandshurica)

花期は4〜5月。濃い紫色の可憐な花は世界中で愛されてきた。ギリシア神話では、菫はしばしば美しい娘の化身として語られてきた。1月15日の誕生花で、花言葉は「誠実で控えめな恋」。その奥ゆかしさは、洋の東西を問わず心に語りかけてくるようで、松尾芭蕉は「山路きて なにやらゆかし 菫草」と詠んでいる。

楠[くすのき](学名:Cinnamomum camphora)

分類:クスノキ科クスノキ属

樹木全体に樟脳をふくみ、さわやかな香りをはなち、虫害にも強いことから、日本では古くから神社や寺に植えられてきた。樟脳油は防虫剤や消臭剤として利用される。その香りの印象が強いのか、花言葉は「芳香」。

樺の木

樺[かば](学名:Betula platyphylla var. japonica)

カバノキ科カバノキ属

カバノキ科カバノキ属の落葉高木または低木の総称。葉は単葉で、縁に鋸歯がある。早春に開花するものが多く、多くは細長い花序をつくる。

西:64

楓[かえで]

分類:カエデ科カエデ属

秋になると美しい紅葉を見せる楓の語源は、「蛙手」。五つに分かれる葉先を蛙の手に例えたという。10月3日の誕生花で、花言葉は「自制」、「非凡な才能」。古来より、漢方では目の薬として使われていた。この樹の一種であるサトウカエデの樹液はメープルシロップとして利用されており、その葉はカナダの国旗のデザインに使われている。

ラベンダー

ラベンダー[らべんだー](学名:Lavandula augustifolia)

分類:シソ科ラベンダー属

可愛らしい紫の花と、優しい芳香で人気のハーブ。属名の Lavendula は「洗う」という意味のラテン語で、ローマ人が入浴や洗濯の際にラベンダーを湯や水につけ、香りを楽しんだことに由来するという。12月3日の誕生花で、花言葉は、「あなたを待っています」「私に答えてください」など。その芳香には、心を落ち着ける作用があるといわれている。

セージ

セージ[せーじ](学名:Salvia officinalis)

分類:シソ科アキギリ属

ヤクヨウサルビアともいわれ、古代ギリシャの時代からハーブとして栽培・利用されてきた。ヨモギに似た香りと苦み、辛みがあり、肉類の匂い消しに使われてる。「長生きのハーブ」ともいわれ、薬用としても使われてきた。12月18日の誕生花で、花言葉は「幸福な家庭」。

ミント

ミント[みんと](学名:ペパーミント/Mentha piperita スペアミント/M.spicata メグサハッカ/M.pulegium)

分類:シソ科ハッカ属

爽やかな芳香で、利用頻度の高いハーブ。いくつも種類があり、お茶やお菓子の香辛料、気付け薬として薬用にも重宝されている。繁殖力がとても旺盛で、時には他の植物の成長を妨げるほどなのに、花言葉はなぜか「美徳」、「貞淑」。3月16日の誕生花。

クサノオウ

クサノオウ[くさのおう](学名:C. majus var. asiaticum)

分類:ケシ科クサノオウ属

低地や山地の斜面下、沢沿いなどの樹林地に群生し、黄色の花が山吹に似ている。天日で乾燥させたものは白屈菜(はっくつさい)という生薬になるが、非常に毒性が強いので、内服してはいけない。花言葉は「思い出」。

野アザミ

野薊[のあざみ](学名:Cirsium japonicum)

分類:キク科アザミ属

夏から秋にかけて明るい紫色の花を咲かせる。スコットランドの国花だが、それはかつてこの花がスコットランドを救ったからだという。9月24日の誕生花で、花言葉は「独立」。茎や葉が刺で覆われているところからのイメージだろうか。

ツリガネニンジン

釣鐘人参[つりがねにんじん](学名:Adenophora triphylla var. japonica)

分類:キキョウ科ツリガネニンジン属

低い山野から高原の日当たりのよい草地でふつうにみられ、8〜10月にかけて淡い紫色をした釣鐘形の花を咲かせる。春の若芽は山菜として食用され、美味。9月14日の誕生花で、花言葉は「感謝」、「誠実」。

リンドウ

竜胆[りんどう](学名:Gentiana scabra var. buergeri)

分類:リンドウはリンドウ科リンドウ属

秋の野山を代表する青紫色の花。漢字で「竜胆」と書くのは、根が健胃作用のある生薬として使われるものの、苦味が強く、苦いことこの上ないという竜の胆のようだといわれたことから。10月20日の誕生花で、花言葉は「あなたの悲しみに寄りそう」。

スノードロップ

ユキノハナ[ゆきのはな](学名:Galanthus nivalis)

分類:ヒガンバナ科ガランサス属

春の訪れを告げる花。名前の如く、早春に真っ白な花を咲かせる。別名はマツユキソウ。清浄の象徴とされ、カトリック聖燭節(2月2日)にはこの花が飾られる。2月26日の誕生花で、花言葉は「希望」、「慰め」、「初恋のため息」。

葛[くず](学名:Pueraria lobata)

分類:マメ科クズ属

和名は奈良県の国栖(くず)がクズ粉の産地であったことから。クズの根からクズ粉をとり、食用や薬用にする。繁殖力が旺盛で、しばしば雑草扱いされる。それを繁栄してか、花言葉は「活力」、「芯の強さ」、「治癒」。9月21日の誕生花。

朴の木

朴[ほお](学名:Magnolia obovata)

分類:モクレン科モクレン属

5月から6月に、芳香のある白色の花を咲かせる落葉高木。葉にも芳香があり、殺菌作用があるため、食材を包むなどして利用された。花言葉は「誠実な友情」だが、実は強烈な他感作用(アレロパシー)があり、この樹の下では、他の植物が生えることは少ない。

銀龍草

銀龍草[ぎんりょうそう](ギンリョウソウの学名:Monotropastrum humile)

分類:イチヤクソウ科ギンリョウソウ属

葉緑素をもたない腐生植物。銀色の竜が首をもたげたような植物体なので、この名がついた。別名はユウレイタケ。これもやはり幽霊のように白くて細いから。ただし、水晶蘭という美しい別名もある。花言葉は「そっと見守る」。

梨木香歩「西の魔女が死んだ」特集 草木花果

 

 

Created by 門賀美央子- 1 -2008/06/02