特集番外編1 2009年6月号

特集番外編1

更新日:2013/8/12

読めばあなたにも奇跡がおこるかも。

 

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編集 H

 

昨年、作家生活20周年を迎えた小川洋子さんの最新長編『猫を抱いて象と泳ぐ』は、彼女の集大成との呼び声高い傑作です。

 

小川洋子作品といえば、『完璧な病室』や『ホテル・アイリス』など、ある限定された場所「閉じられた空間」を描いた作品、『薬指の標本』や『沈黙博物館』など「痕跡」を描いた作品、「詩人の卵巣」(『まぶた収録』)や『博士の愛した数式』の登場人物のような、世界からこぼれ落ちそうな「異形の人」が登場する作品などが特徴として挙げられると思いますが、本作『猫を抱いて象と泳ぐ』は、これまでの小川作品に通底するテーマやモチーフが随所に散りばめられています。

 

小川洋子さんのロングインタビューでは、このような小川作品のテーマ、モチーフをひもときつつ、『猫を抱いて象と泳ぐ』が誕生するにいたった経緯や、これまでの小川さんの軌跡をぞんぶんに語っていただきました。小川さんが影響を受けた本や、『猫を抱いて象と泳ぐ』へと連なる小川洋子作品なども紹介しており、本作が読みたくなると同時に、それらの作品も読みたくなること間違いなしです。

 

それから、本特集の目玉はなんといっても絵本作家・酒井駒子さんによる描き下ろし「Little Alekhine」です。この絵がとにかく素晴らしい! 実物を間近に拝見する幸運に授かったのは本当に役得だと思いました!! リトル・アリョーヒンの孤独と彼がチェスの盤下に見る広大で幻想的な世界が現れた本当に素晴らしい作品です。ぜひぜひご覧ください!

 

何よりも特集を通して『猫を抱いて象と泳ぐ』の奥深い魅力をお伝えできれば幸いです。みなさん、ぜひ、お楽しみください!!

 

 


 

 

編集 S.K

 

『猫を抱いて象と泳ぐ』はチェスの物語です。にもかかわらず、特集担当者の中にチェスを理解している人間がいない!という絶望的な状況下で、棋譜解説をお願いした若島 正先生は本当に心強い味方でした。若島先生から伺った世界のチェス事情で驚いたのは、チェス愛好者の多さです。なんとなくヨーロッパのゲームのような気がするチェスですが、おとなりの中国などでも多くの愛好者がおり、将棋とともに愛されている盤上ゲームだそうです。『猫を抱いて象と泳ぐ』を読み、若島先生のお話を伺ったことで、敷居が高いな〜と勝手に感じていた部分をあらため、チェスをはじめてみようかな、と思いました。先生、楽しいお話をありがとうございました!

(若島先生の棋譜解説&インタビューは本誌p18〜掲載)

 

また今回の特集では、『猫を抱いて象と泳ぐ』のカバー作品を制作された前田昌良さんの単行本未収録作品を使わせていただくこともできました。たくさんのステキな作品があり、どれもこれも、と欲張りたくなってしまいましたが、ページの都合で断念……。ただ秋には前田さんの個展が開かれるので、そこでお目見えするかもしれません。要チェックですよ!