【ダ・ヴィンチ2016年9月号】新海誠の“言葉”特集番外編

特集番外編2

公開日:2016/8/6

【ダ・ヴィンチ2016年9月号】新海誠の“言葉”特集番外編

関口靖彦

編集者として新海さんを担当させていただいたのは、『小説 秒速5センチメートル』の最初の文庫化のタイミングから。4年以上前になる。その後『小説 言の葉の庭』をダ・ヴィンチ本誌に連載いただき、単行本化。このとき新海さんは、46分の映画本編では断片的にしか登場しなかったキャラクターたちの内面と背景を掘り下げた小説を執筆。連載原稿が毎月届くたびに、こんなにも豊かな作品世界が新海さんの中に埋まっていたのかと驚いたのを覚えている。そして今回、新作映画『君の名は。』の原作として『小説 君の名は。』の原稿を頂戴した。『小説 言の葉の庭』では映像には表れていなかった部分を書き込んで作品世界を膨らませる、という手法だったのに対し、『小説 君の名は。』は映画と同じテンポ感・ボリューム感を文字で再現する、というチャレンジをクリアされていた。映画はカット割り、音楽、セリフのスピードなどによってテンポを作り出している。それと同じテンポを“文字だけ”で感じさせることの難しさ。そして特にコミカルなシーン、スピーディなシーンでは、映画と同じ情報量を文字で書き込むと、小説のほうが“遅く”なりがちだ。この点を見事にクリアした(しかもほぼ初稿で!)新海さんの技量に、映像の魔術師であると同時に言葉の魔術師でもあるのだなと改めて感激した。

そんなところから、今回の本誌特集では新海さんの“言葉”に注目。新海誠の言葉がどんな影響下で生まれて、そしてどのように育ってきたのか、新海さんの映像・小説の両面から迫ります。ぜひご一読ください。

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