声優・高森奈津美が徹底レビュー! 学園ホラーの傑作『Another』の外伝を語る

立ち読み

更新日:2016/9/29

命の危険を感じないっていいですね(笑)

鳴ちゃんがもっと身近になる作品

――さて、今回は『Another』の続編にあたる『Another エピソード S』を読んでいただきました。見崎鳴を大フィーチャーしたこの作品のご感想は?

高森:すごく面白かったです! 読みはじめたら止まらなくなって一気に読んでしまいました。

――作者の綾辻行人さんは『エピソード S』の見崎鳴を描くにあたって、高森さんの声をイメージしたそうです。

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高森:光栄ですね。『Another』はもともと映像化がすごく難しい作品なので、綾辻さんに気に入っていただけたのはホントに嬉しかったです。

――今回の『エピソード S』で描かれるのは、『Another』本編では空白になっていた見崎鳴の一週間。夏休み、鳴が家族とともに海辺の別荘に出かけていた期間です。

高森:空白になっていた一週間にはこんな事件があったんだ、と驚きました。鳴ちゃんはわたしたちの知らないところで、大冒険をしていたんだなあと。

――『Another』本編ではあまり描かれなかった、鳴ちゃんの日常が読める作品でもありますよね。

高森:そうなんですよ。本編ではほとんど恒一君とだけ会話していた鳴ちゃんですが、今回はいろんな人とかかわりをもっている姿が見られる。より人間らしい鳴ちゃんというか、ひとりの女の子としての鳴ちゃんを知ることができて、すごく嬉しくなります。

――意外にお茶目な面があったりして、読んでいると和みます。

高森:鳴ちゃんってこんな服を着ているんだ、とかイメージが浮かんできますよね。絵がうまいとか、実は自転車に乗れなかったとか(笑)、可愛らしいエピソードがいっぱい。

命の危険を感じないっていいですね(笑)

――『エピソード S』の見崎鳴は、湖畔のお屋敷で出会った幽霊とともに、謎めいた事件の謎をさぐってゆきます。ホラーでもあり、ミステリーでもある作品ですよね。

高森:ホラーなんですが、今回はあの「現象」がかかわっていないので、安心して鳴ちゃんの活躍を楽しめました。命の危険を感じないっていうのはいいことですね(笑)。本編では自分がいつ死ぬんだろうってビクビクしていましたから。

――それは高森さんならではの感想ですね(笑)。ラストには綾辻行人作品らしく、あっと驚くような真相が待ちかまえています。

高森:騙された!ってなりますよね。そういうことだったのか、と最後まで読むと分かるようになっている。ラストで伏線が回収されていくのは、読んでいて快感です。しかも、騙された後にはちょっと心が温まる。やっぱりこれは綾辻さんの作品だなあ、と。

――ホラーが苦手という人も多いみたいですが、高森さんはどうですか?

高森:う~ん、ミステリーは好きでよく読むんですけど、ホラーはちょっと苦手です。でも、綾辻さんの書かれる世界って、悪意をもった存在はあまり出てきませんよね。この『エピソード S』も怖いんですけど、最後は哀しい物語だったんだ、ということが分かるようになっていて、そこがすごく好きです。

――ホラーが苦手な人でも大丈夫ですね。

高森:もちろん。わたしが読めたので大丈夫です!

――満面の笑顔でそう言われると、思わず納得してしまいますね(笑)。では、『Another』シリーズをこれから読んでみよう、という方にメッセージを。

高森:まったくシリーズに触れたことがない、という方は『Another』『エピソード S』と続けて読むことで、一週間の空白をすぐに埋めることができますよね。それはもともとのファンにはできなかったことなので、是非そういう楽しみ方をしてみてほしいなあと。

――確かに。それは新規ファンだけの特権ですよね。

高森:順番としては『Another』本編を読んでから、『エピソード S』を読んでください。その間にアニメ版を挟んでもらえると、もっといいんじゃないかな(笑)。本編では恒一君目線でハラハラドキドキして、『エピソードS』では鳴ちゃん目線で名探偵気分を味わっていただけると、楽しいんじゃないかなと思います。

――いつの日か『エピソード S』がアニメ化されて、高森さんボイスの見崎鳴と再会できることを祈っています。今日はありがとうございました。

(取材・文=朝宮運河)

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