ベストセラー作家も大絶賛の名作コミック かまたきみこ『KATANA』10巻登場!

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更新日:2014/2/7

多くのファンに絶大な支持を受けるコミック『KATANA』。1年ぶりとなる最新刊「衛府の太刀」がいよいよ刊行される。イギリスの古城を彷徨っていた平安時代の兄弟刀の魂魄。その強い絆に高校生刀研師・成川滉と宝刀・襲刀はなんと応えるのか?

 鎌倉時代から続く刀鍛冶師の名門に生まれた成川滉。祖父は刀剣界の重鎮。厳格な父親も祖父のもとで修業をする刀鍛冶だ。中学の時には一通り研ぎの仕事ができるようになっていた滉は、幼いときから不思議な力を持っていた。人や獣の姿として、刀の「魂魄」が見えてしまうのである。そして魂魄と言葉を交わすことも……。

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赤龍刀の魂魄。普段は博物館に収蔵されているが、成川家で一時的に預った。甘えん坊で、滉から離れようとしない。

 魂魄とは刀の宿り神のようなもので、刀の持ち主が大切に扱えば持ち主の凶運や不幸を取り除く守り刀となり、逆に錆びたままでほうって置かれると、みすぼらしいミイラのような姿になって、ときには厄をおこす。しかし、刀研師によって見事に研がれると、それまで衰えていた魂魄も本来の姿を取り戻す。

 幼いとき、親戚の結婚式で、父が鍛えた守り刀を花嫁に渡す役を任された滉は、守り刀の魂魄が「こんな結婚は許さん」「不幸になってしまうぞ」と言う声を聞いた。「別れろ」と言う魂魄だが、もちろん滉以外の人間には姿も見えず声も聞こえない。どうしていいのかわからなくなった滉は思わず「あの男の人こわいっ」と叫んでそのまま倒れ込んでしまった。魂魄の言葉通り、新郎は借金まみれのやくざで、結婚によって金と土地を手に入れることを狙っていたと発覚。結婚はご破算になった。

 そんな不思議な力と、刀鍛冶という家業のために幼稚園の頃からクラスメートからは疎んじられる存在。高校は中学の学区ではなく、離れた学区の進学校に進んだが、それでもなお、学校内には親しい友達と滉を遠巻きにしている連中とが存在する。

 高校生になった滉は、あまりにも現代的ではない「刀研師」という仕事を嫌っていて家を継ぐつもりもないのだが、刀研師としての腕は抜群。普段は頼りないが、刀にふれるとなぜかしゃきっとするほど刀には惚れ込んでいる。成川家の刀たちも滉のことを親しみを込めて「ぼっちゃん」と呼んでいるほどだ。

成川滉

物語の主人公・成川滉。代々刀匠を営む家に生まれ育ち、高校生にして研ぎ師。刀の魂魄が視え、刀と会話を交わすこともできる。心優しく、どんな刀へも深い愛情を持って接する。

 

 第4話「襲刀」で、滉はかつては朝廷の邪鬼払いの刀で、いまは幸御家の家宝となっている襲刀と出会う。バラの香るお屋敷の庭で出会った少年(襲刀の魂魄)に導かれた滉は、屋敷の中に入って宝刀・襲刀を手にするのだ。襲刀が一方的に滉を主と決めて姿を顕し、幸御家の新当主に指名したのだ。

襲刀(かさねがたな)の魂魄。幸御家を継ぐ者が所有する刀だが、襲刀に選ばれた滉が刀を鞘から抜いたことで、滉の守り刀になった。強力な力で、滉のピンチを何度も救う。

 幸御家の分家の娘で、滉のクラスメートでもある翔子は刀は自分のものだと襲いかかるが、滉が邪鬼の濁りを払ったことで救われ、襲刀は晴れて滉を主とすることができた。

 魂魄としては並外れた力を持つ襲刀とともに滉は、刀をめぐるさまざまな事件に巻き込まれ、刀の魂魄に込められた呪詛を研ぎ落として事件を解決していく。

 名コンビに絡むのは、刀に関して造詣が深い父親を持つ、気の強いお嬢様・葉月絵里。彼女の家は名門だったが、家運が傾くようになっていた。叔父が守護刀をぞんざいに扱ったために悪鬼が家運を落としていたのだ。第3話「雛刀」では、雛壇に飾られた守護刀を滉が手入れしたために、再び運が戻って来た。

 さらに、刀鍛冶としては一流だが、父親としては不器用でわが子とどう接していいのか迷いながらスパルタオヤジを演じている滉の父・晃順。滉の友達で数学オタクの京崎といった個性的な人々が脇を固める。

 そして、襲刀を守ってきた幸御家に代々仕える陰陽師の三輪征爾だ。三輪一族は都合の悪い当主が出ると「乱心」を理由に斬殺するなど、幸御家のダークサイドを担ってきた一族なのだ。実は、襲刀のかつての主人だった周も、滉と同じような能力を持っていたために、三輪一族の陰陽師によって斬殺されていた。当然、襲刀が一方的に主として認めた部外者である滉のことは邪魔者と考えていた。

呪いの巫女「喪の黒」が使用していた刀の魂魄。封印が解けたことで人を操り、刀狩りをはじめる。

 第19話「オロチ刀」で、三輪は滉を連れ出して、三輪一族が幸御の当主を殺すために使う、襲刀と対になっている宝刀・オロチ刀で斬り殺そうと企てる。しかし、それが逆に滉にオロチ刀をぬかせる結果となる。オロチ刀には刀をぬいたものが主となる掟があるのだ。襲刀とオロチ刀を手にした滉は新しい力を得て、さらなる怪事件に巻き込まれていくことになる。

 作者によれば、滉は「おおかた週末ごとに刀のトラブルに巻き込まれ試験勉強もはかどらない」状態。

 2004年にぶんか社の『ホラーM』10月号に掲載された第1話「鬼鑑」から始まったこのシリーズは、『ホラーM』の休刊で、同社のホラーアンソロジーコミック『トカゲ』に移籍。第29話「加賀獅子」からは角川書店の『コミック怪』に移籍。『コミック怪』休刊後は同社の『月刊ASUKA』に舞台を移して連載を続けている。単行本はこれまで、ホラーMシリーズから1〜7巻が、8、9巻が「怪」コミックスからという変則スタイルで出ていたが、第10巻の刊行にあわせてすべてあすかコミックスDXから新装版として出ることになった。