スローライフを楽しむ“ほのぼの生活”ゲーム! 『牧場物語』が女性を虜にする理由とは

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更新日:2014/3/19

 スーパーファミコン版から始まった「牧場物語」シリーズも今回の新作で数十作を数える。牧場で動物と暮らし、農作業に勤しみ、村の人たちと交流する─そんなスローなゲームがなぜこれほどまでに支持されるのか? 本誌でゲームコラム「日々マーベラス!」を連載、本作品のプロデューサーでもある、はしもとよしふみさんに、その魅力を聞いた。

まずは新作の紹介映像をチェック!


 

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■大人の女性を虜にする“女性目線”の演出とは?

 18年目を迎えるシリーズに、2年ぶりの待望の新作『牧場物語 つながる新天地』がニンテンドー3DSソフトとして発売された。「牧場物語」シリーズは動物を育てたり畑を耕すといったスローライフが楽しめるゲーム。個性豊かな町の住人たちとのコミュニケーションや異性との恋愛、結婚などの要素もあり、牧場主の人生そのものを体験できるタイトルだ。海外ではリタイア後に牧場経営を夢見る大人が予行演習としてゲームを楽しむケースもあるというが、国内では女性、とりわけ20代から30代の大人の女性に熱狂的なファンが少なくないそうだ。

はしもと よしふみ
マーベラスAQL執行役員。『牧場物語』シリーズのプロデューサー。温かみのあるタイトルを得意とする。代表作は『ルーンファクトリー』シリーズ、『朧村正』など多数。『牧場物語』シリーズは大人のプレイヤーも取り込み大ヒット。口コミで長期間にわたり売れ続けている異色のタイトルでもある。

「私に二人の姉がいて小さな頃から少女マンガに囲まれていたことも影響しているのかもしれません。男性ユーザーは数値的なことを重視する傾向がありますが、女性の場合は、数字には表れにくいところをじっくり見ている。少年マンガのキャラクターと違って少女マンガの場合は、同じキャラでもコマ毎に描き方が違っていたりします。こういう部分は非常に感覚的なものですが、非常に大事なことだと思っています。また感覚的にも女性ユーザー目線でも制作をしています」

 そう語るはしもとさん自身が「敵を倒さないし、そもそも敵がいないので、目的が捉えにくい側面もある」という『牧場物語』。ただ、一度プレイすれば大概の人は牧場生活に没頭し、新作の発表をチェックするようになるのだ。

「例えば作物の収穫に失敗すれば、それは『レベルが下がる』ということにもつながるわけで、かつてのゲームの常識の中では随分異質な存在でした。目的を捉えにくいというハードルをクリアして一度ハマれば新作を購入してもらえることが多いのも事実ですが、長く続けていると新鮮な喜びを提供するのが難しくなってくる。新作は本でいえば最新巻。今回は“つながる”をテーマに、新しい要素を盛り込みました」

 はしもとさんたちは常にユーザーが「望んでいること」を直視しつつ、彼らが想像することもできない新しい楽しみ方を模索してきた。人気のアンゴラウサギやアルパカをいち早く登場させるなど、時流を汲み取った開発もユーザーの満足感につながっている。また、新作では恋愛要素に職業を絡めているのも大きな特徴だ。プレイヤーの行動や価値観によって出会いのチャンスが左右される。農作業を素早く終わらせてデートの時間を作るといったリアルなプレイも可能なのだ。

「究極的な目的は何かというと、牧場ライフをとことん楽しむということなんです。効率がいい作物を選ぶなどということではなく、相手に喜んでもらえるから作るという人生の生き甲斐まで感じることができる。それはクリエイターの立場としても同じかもしれません。ユーザーの方々に『遊んで、体験してよかった』と言ってもらえるとやっぱり嬉しいんですよ」

 

  • 本作の新たなテーマは「つながる」。動物や町の住人たちとのふれあいがさらに楽しめ、恋愛や結婚も楽しめる。自然と生命に満ち溢れる牧場で、自由な人生を謳歌しよう!
  • 動物の飼育、農作物の収穫はもちろん、動物たちの楽園「サファリ」を作ることもできるようになった。町の住人たちを自分のサファリへ招待することも可能だ。

 

■もうひとつの現実を楽しんでほしい

 はしもとさんは「牧場物語を『生きる』を描くゲームにしたいと考えています」と語る。

「ただ、当初は技術的な面でも制約が多くてあまり深くシステムも制作できませんでした。恋愛や結婚の要素もあるのですが、それだけがゲームのゴールになってしまった。もちろん、結婚だけが人生というわけではありません。そのまま畑を耕して純粋に生きていくっていう部分も大事にしたかった。」

 新作『つながる新天地』では、人生を再現する上で恋愛結婚要素が重要なポイントになっている。プレイを進めていく中でさまざまな異性と出会うが、会話やプレゼントなどで好感度を上げていくが、そのために相手をよく知ることが大切なのは現実と同じだ。最初からひとりの相手に決めてもいいが、複数の異性をじっくり見きわめることも。プロポーズを受けてもらえたら晴れて結婚。時には相手からプロポーズされることもある。恋愛観や結婚観はプレイヤーの数だけあるし、大切なものが違ってくれば選択肢も変わるのだ。

「結婚したら生活が大きく変わります。ただひたすらに畑を耕していた日々と違い、家に帰ると伴侶が待っていますので無理も出来ません。子供の成長もやりがいになるでしょう」

 結婚はしばしば「ゴールイン」と表現されるが、長い人生の中では通過点に過ぎない。本当に大切なのは、その後の生き方なのだ。はしもとさんは「プレイヤーそれぞれのスタイルで生活を楽しんでもらうことがこのゲームの目的なんです」という。

 

  • 今作では、牧場で取れた作物や酪農品を世界各地に出荷できるのだ。もちろん出荷だけでなく貿易先から新アイテムや動物を購入することもできるぞ! 珍しいアイテムを手に入れよう!
  • うれしいおまけ要素も盛りだくさん! 今作では『スーパーマリオブラザーズ』シリーズでおなじみのアイテムも登場する。写真は「スーパーキノコ」を収穫したところ。どんな効果がある?

 

「以前は作物が枯れたり、動物が弱ってしまうのが苦手という人も少なくありませんでした。しかし、それが現実ですよね。ゲームでは悲しい事もおこりますが、例えば現実ではすぐにでも動物に優しくしたり、人に優しくしたり出来るかもしれない。牧場物語もシリーズの継続とともにはじめはこういった要素をやめて欲しいという意見もありましたが、ユーザーさんが大人になり、是非伝えて欲しいという要望も増えてきたんですよね」

 レベルを上げることだけが『牧場物語』の目的ではない。トライアンドエラーを繰り返し、様々な経験を積んでいくことにこのタイトルの醍醐味があるのだ。

「昔ならベーゴマ、近年になってさまざまなホビーなど新しい遊びがどんどん生まれて、誰もが楽しむようになった。そのひとつがビデオゲームだと思うのですが、僕は今でも“ゲーム”というものをプレイして貰える機会があること自体が嬉しい。ユーザーさんに楽しんでもらうためにこれからもさらに喜んで貰えるモノ作りをしていきたいなと思っています」

(取材・文=田中裕、撮影=小川一成)

 

牧場物語 つながる新天地

『牧場物語 つながる新天地』

対応機種:ニンテンドー3DS
発売日:好評発売中
価格:4,800円+税
ジャンル:ほのぼの生活ゲーム

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