読売新聞×ダ・ヴィンチ ミステリーブックフェア2014 スペシャル記事 誉田哲也編

ピックアップ

公開日:2014/3/9

今回のフィーチャーは……誉田哲也

誉田哲也さんをフィーチャーしたスペシャル記事をお送りします! お子さんとの交流と趣味が融合した、とっておきのエピソードです。

主催=ミステリーブックフェア実行委員会 後援=社団法人日本推理作家協会、日本出版販売株式会社、読売新聞社

取材・文=門賀美央子 写真=川口宗道

advertisement


 

子供のために作った「怪人」

誉田哲也
ほんだ・てつや●1969年東京都生まれ。2002年に『妖の華』で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞、03年に『アクセス』で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、デビュー。著書に『ストロベリーナイト』『ジウ』『武士道シックスティーン』『増山超能力師事務所』など多数。

——お子さんとのふれあいについて、お聞かせください。

 長男がまだ幼かった頃、彼のために「仮面ライダーの怪人」を手作りしたことがあります。

 仮面ライダーが大好きだった息子は、バイクに乗った仮面ライダーのおもちゃを買ってもらうと、もう夢中になって遊んでいました。

 ただ、ひとつ問題があった。その仮面ライダーは、あくまでもバイクに付随するものだったので全長が5センチぐらいしかない。戦う相手である怪人に同じ縮尺の人形がなかったのです。

 敵がいないのに、一生懸命戦おうとしている長男の背中が悲しくて、それじゃあここはひとつお父さんが敵を作ってやろうと思ったのが、フルスクラッチビルドに手を出したきっかけでした。

 フルスクラッチビルドというのは、模型を作る手法のひとつで、市販のキットを組み立てるのではなく、一つ一つのパーツを手作りするところから始めます。

 僕が使った材料はパテと電線。豆電球についているようなゴム被膜の電線を骨にして、ちゃんとポーズが取れるよう関節も動くようにしました。

 ところが、製作過程で大きな壁にぶつかりました。資料にしていた仮面ライダー図鑑には、正面写真しか掲載されていなかったのです。当たり前といえば当たり前ですが、立体を作る以上は側面や背面もわからなければいけません。僕はおもちゃ屋に出かけ、並んでいる既製品の怪人のフィギュアをジーっと見て形を研究しました。「む、これは肩甲骨が羽になっているのだな」などと分析しつつ。

 今なら携帯で撮影したりもするかもしれませんが、当時の僕の携帯にはカメラがついていなかったので、記憶するしかありません。だから、舐めるように見て一生懸命覚えましたね(笑)。

 そんな感じで作っていったので、一体作るのにとにかく時間がかかるんです。たぶん、一つに三週間ぐらいかかったんじゃないかな。あの頃はまだ、そんなことをやっている暇もありましたから。

 それに、やっているうちに僕自身が楽しくなってきてね。ちょうど、初めての女性仮面ライダーというのが出てきたので、そっちもちょっと作って見ようかなあとやってみて……美少女フィギュアにはまる人の気持ちが少しわかった気がしました。

——具体的にはどういったことでしょうか?(笑)

 自分の手で女性の体を作り出すということの、なんというかこう、いわゆる一つの禁断感。

「今、このワタクシは胸を盛り上げております。ここを盛っているワタクシは一体何を求めているのでしょう」などと思いつつ、それが楽しい(笑)。

 とはいえ、それ以降はだんだん仕事が増えて忙しくなり、さすがに仕事を横においてまで没頭するほどにははまらなかったので、それきりになってしまいました。次男の時は時間が取れなくて作ってやれなかったのが少々心残りです。


今後の記事掲載予定
湊 かなえさん:3月16日
今野 敏さん:3月23日
お楽しみに!
「Honya Club」のウェブサイトにも本フェア特集が掲載! ぜひご覧ください。
 
ミステリーブックフェア2014 開催中!
全国の参加書店で、今注目のミステリー小説を集めたブックフェアを開催! 人気作家のサイン、総額10万円分の図書カードが当たるプレゼントキャンペーンも実施中。今年のフェアラインナップは全29冊。具体的なタイトルやフェアについて、詳しくは、「ミステリーブックフェア2014」フェイスブックや、ウェブサイト「ダ・ヴィンチニュース」、フェア参加店店頭ポスターをご覧ください。