『デンマーク人が世界で一番幸せな10の理由』マレーヌ・ライダル来日インタビュー
公開日:2015/11/6
世界幸福度報告書の評価基準は、富裕度、健康度、人生の選択の自由度、頼れる人の有無、汚職の少なさ、国民の寛大さの6つだ。その要素もふまえたさまざまな文献、データ、エピソードを整理した本『デンマーク人が世界で一番幸せな10の理由』の作者、マレーヌ・ライダルさんが世界各国で注目されている。
「私はデンマークで生まれ育ち、18歳から19年間フランスで暮らしているので、国民性の違いは感じていました。ですから母国が世界で一番幸福な国に選ばれたとき、理由を探り始めていろいろなことが腑に落ちたのです。例えば、デンマーク人にとっての幸福は、個人的な意味が強いHappiness(幸せ)よりも、Well-being(満足できる生活状態)に近いこと。そういったすぐには理解しにくいことを、本でわかりやすく伝えたいと思ったのです。デンマークの学校では、“やりたいことがあったらとにかくやってごらんなさい”という教育を受けてきました。そのおかげで自分に書く才能があるかどうかなど気にせず、2年かけて書きあげました」
子どもの自主性を尊重する平等な教育システム。身の丈に合った夢を持つリアリスト。この2つのポイントも、本書の幸せな10の理由に含まれている。
「この本の読者から、自分の考え方や人生を見直したとか、見直したいという感想がよく届きます。人は、自分がありのままの自分に近い状態でいられるほど、心が穏やかになり幸せを感じやすくなります。逆に自分に何かを強いたり、他人と比較してプレッシャーを感じると、自分自身からどんどん離れていってしまいます。ですから自分の手の届く範囲で、小さなやりがいや夢を持つことが、Well-beingにつながっていくのです。私は、お金もうけや成功のためにやっきになっているデンマーク人を見たことがありません。そういったものを追い求めている人は、ずっと車輪を回し続けるハムスターのように一生満足することはないでしょう」
幸福度が低い日本の問題点は、どう見ているのだろうか?
「日本の教育システムは偏差値主義の競争社会ですが、デンマークの学校は才能に優劣をつけません。貧富に関係なく誰でも無償で教育を受けられ、社会に出てから居場所を見つけられるようにするのが教育の目的なのです。さらに誰でも大学などにおける高等教育を無償で受けられ、毎月約10万円の奨学金が与えられます。こうした教育システムや福祉制度の違いは大きいと思います。また、デンマーク人は仕事と私生活のバランスをとても大切にしますが、日本人はまだまだ仕事の比重が大きいと聞きます。しかし今は、優良企業ほど従業員のワークライフバランスを大切する時代です。自分が働く会社にも変革を起こすためには、ひとりひとりが声をあげていくことが大切なのです」
最後に、Well-beingに生きるための3つのポイントを聞いた。
「自分の心に正直になり、自分はこれでいいんだと認めること。健康で家族がいることを当たり前と思わず感謝すること。終わってしまった過去や予測不能な未来は考えず、今を精いっぱい生きることです。幸せは巡るもの。人は自分の幸福度ばかり考えがちですが、誰かを幸せにできる人には幸せが返ってくることも、忘れないでほしいですね」
取材・文=樺山美夏 写真=下林彩子