シリーズ累計200万部突破「ビブリア古書堂の事件手帖」 三上延インタビュー
更新日:2013/8/13
——まず、現在シリーズ累計200万部突破、そして文庫初の「2012年 本屋大賞」へのノミネートと快挙が続いています。書店から人気に火がつき、口コミで評判が広がり、現在にいたりますが三上先生ご自身、いま現在の状況をどのように捉えていらっしゃいますか。ご感想などお聞かせください。
「とにかく多くの方に読んでいただけたことがすごく嬉しいですし、しばらくは食いっぱぐれがなさそうなので安心しています。あとは自分を取り巻く環境が変わりすぎて戸惑っているというのが正直な感想です。それでも根本の仕事の内容は変わらないので、今まで通り頭を悩ませながら原稿を書いていこうと思ってます。」
——今シリーズが、書店さんはじめ、たくさんの読者に支持されている理由はどんなところにあるとお考えになりますか。
「ここまでになると思わずに書いていたので、僕の方が皆さんにお訊きしたいです……」
——三上先生はたいへんな読者家だと聞いています。三上先生が本をたくさん読まれるようになったのはいつごろからでしょうか。きっかけなどあればそちらについても教えてください。また、当時はどんな本を読んでいらっしゃいましたか。
「読書家と呼ばれるほどではないと思いますが……二、三歳から本が好きだったらしいので、きっかけはよく憶えてません。両親が三歳上の兄に買い与えていた絵本が結構あって、たぶんそれを読んでいたんだと思います。ちょっと暗いような、怖いところのある話が好きだった記憶があります。『おしいれのぼうけん』とか。」
——三上先生の「無人島に持っていくならこの1冊!」という本とその理由を教えてください。
「サバイバル生活を送る羽目になるなら、さいとうたかを『サバイバル』。実用書にもなりそうだから。眠るところに不自由していないなら、種村季弘『食物漫遊記』。大笑いできて食事の夢が見られそうだから。食事にも不自由していないなら、ジャン・ジュネ『恋する虜』。最近読み始めたところだから。」
無人島に持っていくならこの3冊
——「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズで、文豪たちの作品がたくさん登場します。この作品をきっかけに、文豪たちの作品に興味を持った読者もいると想像します。
いわゆる文豪たちの作品のなかで、三上先生の「死ぬまでに読んでおきたい文豪作品ベスト5」を教えていただけますか。また、可能なかぎりその理由についても教えてください。
「誰もが読むべき作品は存在しないというのが僕の持論なので、生きてるうちに読めてよかったと個人的に思う文豪の作品を五つ挙げます。ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』『白痴』、フォークナー『アブサロム! アブサロム!』、ディケンズ『我らが共通の友』、ユーゴー『レ・ミゼラブル』です。
曲げられない信念とか異様な思い込みとかとんでもない秘密を持った人間たちがわらわら登場して、ガッツンガッツン額をぶつけ合っているような小説が好きです。順位はつけられませんでした。」
死ぬまでに読んでおきたい文豪作品5冊
——シリーズ3巻目を現在ご執筆中だと伺いました。お聞かせいただける範囲で、3巻の展開についてと、今後の三上先生のご活動について教えてください。
「ネタバレにならずにうまく書くのが難しいんですが、これまでの巻に登場したキャラクターの後日譚が少し入っています。3巻に続けて4巻も書く予定になってまして、長編かそれに近い構成の話を考えています。今年中は『ビブリア』中心に仕事することになるんじゃないでしょうか。」
三上延(みかみ えん)●古書にまつわる謎を解いていく、ビブリオミステリ『ビブリア古書堂の事件手帖』がベストセラーとなる。ホラーからファンタジーまで、幅広い作風で縦横に活躍中。
鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも。彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。
鎌倉の片隅にひっそりと佇むビブリア古書堂。その美しい女店主が帰ってきた。だが、入院以前とは勝手が違うよう。店内で古書と悪戦苦闘する無骨な青年の存在に、戸惑いつつもひそかに目を細めるのだった。変わらないことも一つある――それは持ち主の秘密を抱えて持ち込まれる本。まるで吸い寄せられるかのように舞い込んでくる古書には、人の秘密、そして想いがこもっている。青年とともに彼女はそれをあるときは鋭く、あるときは優しく紐解いていき――。