これが結婚生活の現実だ! 『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』著者に学ぶ

立ち読み

更新日:2018/6/5

驕らず、夢見ず、期待せず、が結婚の三原則か

 マンガの中では、スーツにメガネ、いわゆる平均的なサラリーマンの出で立ち、言動も妻のちえさんとは正反対で常に冷静で落ち着いている。穏やかで、ちえさんがどんな球を投げてきても動じないといった印象だ。実際のK・Kajunsky氏も、淡々と、そして現実的な視点から質問に答えてくれた。

——奥さんのちえさんは、死人のふりをする際に、血のりなど、凝った道具を使われていますが、正直、家計的なことを考えるとどう思ったでしょうか?

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K・Kajunsky 当然無駄使いしているなと思いますが本人が好きでやっていることなので無碍にダメともいえませんから(笑)。家計の許容範囲内なら仕方ないかなと思います。

——ある種、奥さんの“趣味”として許容されているのですね(笑)。ちえさんは相当な不思議ちゃんで、ときどき駄々をこねたりと、いささか子どもっぽい側面もあるようですが、ご自身のどういう部分が、「ちえさんを操縦できている」と思いますか?

K・Kajunsky 操縦などはできません。ただ完全に自由にしておくと危険ですので、その都度、禁止事項はもうけるようにしていますが(笑)。

 マンガにはいいときの事しか書いていないので、円満のように感じられるかもしれませんが、決して円満だとは思っておりません。最初から円満な状態というのはありえませんし、それを長く継続させることはとても難しいことでしょう。夫婦はゆっくり仲良くなっていけばいいと考えております。「夫婦円満」というのは、夫婦の片方が亡くなったときに、お墓の前で「円満だったね」と口にしたときに初めて言えることではないでしょうか。

——それでは、これからまだ何十年と人生はありますが、どんな最期を遂げたいでしょうか?

K・Kajunsky 自分が先にお墓に入るならば、後悔するようなことを口にしない最後がいいですね。あんなひどいこと言うんじゃなかった、というしこりが残ったままでは、死んでも死にきれません。「よく生きた」と言う言葉を最後に大往生が希望です。

 もし、妻が先立ったときは、しぼんじゃうと思います。枯れた花のようにもう戻らないんじゃないですかね(笑)

——それでは、奥さんと一緒のタイミングで亡くなるならば?

K・Kajunsky 一緒に死ぬのは絶対にイヤですね(笑)。それは何か事故に巻き込まれたときでしょうから。

 

 たまたま同じタイミングで息を引き取る、というロマンチックな意味で質問したのに、K・Kajunsky氏のこの徹底した現実主義ぶり。一見、クールで冷たく感じる部分もあるが、過度な期待も失望もせず淡々と暮らすことが、功を奏しているのだろう。

 思えば、冒頭の、頑固、言い負かす癖、などの“結婚向きでない特徴”も、何らかに対する過度な期待があるゆえに、頑なになったり、相手を言い負かしたくなったりするのだ。何事に対しても修行僧のようにフラットな気持ちでいられる人間になったときが、結婚すべきときなのかもしれない。

取材・文=朝井麻由美

フリーライター。体当たり取材・イベント取材を得意とし、一風変わったスポットに潜入&体験した記事は100本を超える。主に週刊誌や情報誌で執筆する他、「日刊サイゾー」ではB級スポットを巡る「散歩師・朝井がゆく!」を好評連載中。ゲームと雑貨とパズルが好き。ウニとイチゴがあればだいたいご機嫌。Twitter @moyomoyomoyo