七転び八転びしたオバちゃんたちは人生のけものみちを歩く達人だから

新刊著者インタビュー

更新日:2013/12/4

 女の道はけもの道。思えば遠くに来たもんだ。初恋の思い出なんて、胎盤と一緒にとっくの昔に流れちゃったわ。ここまできたら、本音で大人のガールズトークをしましょうよ。ここは女のザンゲ室。イタイ話は蜜の味。理恵子ママは、今夜も、そんなアナタをお待ちしています。

 そんな開店の辞とともに『スナックさいばら おんなのけものみち』が文芸雑誌『本の旅人』& web KADOKAWAにお店を開いて丸1年。読者の投稿に理恵子ママが本音で答える連載は大盛況。ついにシリーズ第1弾『七転び八転び篇』が1月に刊行された。理恵子ママは言う。

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「セレブな奥様に素敵な暮らしの自慢話をされたって、なんの参考にもなりませんから。それよりも七転び八転びしてきたオバちゃんたちがここまでどうやって生き抜いてきたのか。今、この荒れ野原に立って“これだけはやめとけ!”って話をするから聞いときなさいよっていうね。先人のサクセスストーリーより失敗話のほうが聞いておいてよかったってことがきっといっぱいあるんじゃないかって」

西原理恵子

さいばら・りえこ●1964年高知県生まれ。88年『ちくろ幼稚園』でデビュー。96年戦場カメラマンの故・鴨志田穣氏と結婚。97年『ぼくんち』で文藝春秋漫画賞、2005年『毎日かあさん』『上京ものがたり』で手塚治虫文化賞短編賞を受賞。『いけちゃんとぼく』『パーマネント野ばら』など映像化作品も多い。
 

打たれ強いし受け身もうまい
あの背脂が守ってくれる

〈幸せをつかむ女はここが違う!〉〈結婚する男の最低条件って、何ですか?〉〈女の浮気選手権。あなたのサイテー&サイコーな浮気体験〉と、毎回のお題も容赦なし。

「〈長年連れ添った旦那をひと言褒めるとしたら、どこよ?〉っていうのも、私自身がすごく知りたかったことだしね。私も私の親も離婚したから、添い遂げるって凄いなあ、立派だなあって思って。女の人って、とかく男の人に人生ひっぱられがちじゃないですか。仕事と男で、うっかり男とっちゃって、おおごとになったりね。いろいろある前とあった後だと、結婚や男性に求めるものも当然変わってくるはずなんで、そこを聞いたほうがよっぽどためになると思うんですよ。仕事で頑張ってる女性と専業主婦の女性は、空いてる時間も生き方戦略も違うわけで、だから気になるし、気に障る。“もっといい男がいるはず”って自分の値段をつりあげてるうちにオークションで高値終了しちゃった女の人は、自分の市場価値を見極めて早々にいい男をゲットした女の人に学ぶべきことがあるはず。

 女の人生って20代から30代の間に生きていくうえでの大切な選択が次から次にやってくるじゃないですか。その10年で修業しなきゃいけないのに、ダメなちんこ2回つかんだら、はい、グラウンドもう1周だもん。キツイよね。でもさあ、若い頃なんて、ろくに男知らないし、そらスカひくで~。スカのほうが多いんだから。そういう若い娘さんたちにオバちゃんらが教えたいのは人生のライフラインですから。ガス、電気、水道と一緒。最低限これだけは死守しろ!ってことなんで」

「好き」が終わったその先も、人生は続いていくから。

「最初は優しい旦那だって、5~6年経てば豹変するかもしれない。子どもの前で情けないケンカをしてもDV男と別れられないとかね。オバちゃんらはそういう危ない橋をいっぱい渡ってきてる。開き直らないとやっていけない修羅場もくぐり抜けてきたから、打たれ強いし、受け身もうまい。転んでもパッと立ち直るもんね。この背脂が無傷で守ってくれるっていう(笑)。何より平凡な幸せがどれほど素晴らしいことか、『トイレットペーパー、買っといたよ』って言ってくれる旦那を見つけることがどんだけたいへんなことかをよく知ってるんだと思う」

 女の子とオバちゃんの違いってどこにあるんでしょうね?

「オバちゃんになるとね、自分が一番じゃなくなる。三番でも四番でも五番でもいいやって。昔は自分が人にどう見られるか、瑣末なことが気になってしょうがなかったけど、そういうことからも自由になれる。若い時の輝いていた自分を捨てられない人もいるけど、それはそれで痛々しく感じちゃうんですよ。人生80年、楽しく生きていかなきゃならないわけで、そう考えると、あまり男に入れ込まないほうがいいのかなって」