音尾琢真「自分の両親や祖先がどんな人生を歩んできたかに、とても興味がある」

あの人と本の話 and more

更新日:2013/12/19

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、3月より上演される主演舞台『ORANGE』が控えている音尾琢真さん。おすすめしてくれた小説『とんび』を片手に、彼が最近強く興味を抱いているという“家族”について話してくれました。

 『とんび』を読みながら、「自分の経験とオーバーラップした描写があった」と音尾さんは話す。それは、父親のヤスが、息子アキラの仕事を遠く離れた故郷から見守っているというくだりだ。

「僕も役者に専念するために
旭川市から札幌市に出たのですが、
少しずつテレビやCMにも出演するようになったころ、
実家に帰ったら、僕の写真が入ったある
企業の宣伝ポスターが飾ってあったんです。
どこで手に入れたんだろうと思って聞いてみたら、
わざわざもらってきた、と。
その時に親の愛情と行動力のすごさを感じました。
やっぱり気にしてくれてるんだなぁって。
ただ、どんどん増えていくポスターを見ながら、
どんどん気恥ずかしくなりましたけどね(笑)」

advertisement

 もともと、音尾さんは“家族”について考えるのが大好きなんだそうだ。当然、惹かれる映画や小説も、家族愛を描いたもの。なかでも、一番好きな映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だという。

「映画が好きでたくさん観ているんですけど、
そこであえてこの作品を挙げると、
最初は「えっ?」という表情をされます(笑)。
あまりにポピュラーな作品ですからね」

 しかし、これを選ぶのには理由がある。

「そもそも両親がいなければ、自分は存在しませんよね?
それは当然のことですけど、彼らの生き方も、
今の自分の人生に必ず繋がっていると思うんです。
ですから、両親がどんな人生を歩んできたか
ということを描いた作品にすごく興味がある。
最近は作品に飽きたらず、実家に帰ると、
必ず父親が幼少の頃に何をしていたのかとか、
音尾家の祖先のルーツについて聞くようにしています。
その時間がたまらなく楽しいんですよね。
ただ、二人とも酔っ払って話をしているので、
最終的にはあやふやなまま
終わってしまうことが多くて(笑)。
なんとかして、その話を残しておきたいなとは
思っているんですけどね」

(取材・文=倉田モトキ 写真=山口宏之)
 

音尾琢真

おとお・たくま●1976年北海道生まれ。大学在学中に演劇ユニット「TEAM NACS」を結成。2004年の東京公演を皮切りに、一躍その人気は全国区に。大河ドラマ『龍馬伝』や映画『アンダルシア 女神の報復」、明石家さんま主演の舞台『PRESS』など、話題作にも多数出演。現在は連続ドラマ『とんび』にも出演中。

 

紙『とんび』

重松 清 角川文庫 660円

昭和37年、運送会社で働くヤスに待望の息子・アキラが生まれた。しかし、愛妻の美佐子との3人の幸せな生活も長くは続かず、妻が他界。幼少期、両親の愛を知らずに育ったヤスは、手探りながらも周囲に支えられて、アキラを育てて行こうとする。いつまでも子の幸せを願い続ける、普遍的な親子の愛を描いた感動作。

※音尾琢真さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ3月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

舞台『ORANGE』

作・演出/宇田 学 出演/音尾琢真、阿部 力、川岡大次郎、上地春奈、大堀こういち、三上市朗、他 3月28日(木)〜4月7日(日)東京・本多劇場、4月13日(土)大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演 
●特別救助隊、通称「オレンジ」として神戸の湊山消防署に勤める小日向(音尾)は、自分の命を顧みず災害現場に突入することから問題児扱いされていた。しかし、そんな彼の行動の裏にはかつて起きた阪神・淡路大震災でのある事件が強く残っていた。