連載&単行本執筆秘話 様々な実験といたずらを仕込んだ『僕が愛したMEMEたち』
更新日:2013/12/4
本誌連載エッセイ『僕が愛したMEMEたち』が2月28日に刊行! 各回の原稿にさまざまな監督らしい周到なギミックを仕込んでいたこの連載が1冊にまとまって、監督の実験的試みが浮かび上がりました。単行本刊行目前の今回は、小島監督に連載と単行本の執筆秘話をお聞きしました。
これまでのブックエッセイの常識を覆す
用意周到な準備と構成とギミック
――いよいよ『僕が愛したMEMEたち』が2月28日に刊行されました。3年半にわたる連載、お疲れさまでした。
小島 連載中は、毎回毎回、考え抜きました。僕の中に遺されている、読んだ本の物語のMEMEのバトンを一人でも多くの読者に渡したい。その思いで連載を続けてきました。何ヶ月も前から取り上げる本と紹介する季節や順番を考える。本屋で新刊を探す。構成や潜ませるギミックを練り上げる。原稿を書くのは速いんですが、執筆までの準備に相当な時間をかけました。
――監督の用意周到な準備と構成、巧みなギミックは、毎回、第一稿を拝読するたびに驚愕しました。監督の連載と単行本の編集は、長い編集者生活の中で最も思い入れの強い仕事になりました。本当にありがとうございます。
小島 編集者が驚かないと、読者を驚かせることはできませんから(笑)。「次の回では、どうやって読者を驚かせたろか」をいつも考えていました。僕は本好きをもっともっと増やしたいんです。だから、本選びも、構成や原稿の中にしかけるギミックも、本好きの人もそうでない人も、僕のエッセイを読んだ後にその本を手にしてみたくなるような内容にしたかった。本は最高ですよ。ゲームデザイナーの僕が言うのも何ですが、本はもっとも手軽に楽しめるエンターテインメントですから。
――なぜ、これほどまでに監督は本を愛するようになったのですか。
小島 子供の頃の体験が大きいですね。両親も兄も大の本好きなのに、僕はあんまり、本を読まない小学生だったんです。ある時、大好きだったTVドラマ『刑事コロンボ』のノベライズを本屋で見つけて、「これは読みたい!」と小遣いで買いました。最初は本を読むのに慣れていないから数ページ読み進めるのにもすごいパワーがかかる。でも、どんどん物語の世界に填まっていったんです。僕はカギっ子だったので、夕方まで思いっきり遊んだ後に家に戻ると一人ぼっち。家中の電気をつけて本を開いて物語世界に没入して、自分の知らない世界に触れるのが何より楽しみでした。物語の中だったら宇宙へも未来へも行けるし、動物にだってなれる。登場人物たちの生きざまや台詞が、僕を前進させる力になりました。この体験をきっかけに毎日のように本屋に通うようになり、今でも続いています。僕に欠かせないのは『衣食住+物語』。だから、毎日、本屋に通っているんです。常に本が手元にないとダメ。海外出張のロングフライトでは本切れになるのが怖くて、ごっそり機内に持ち込んでいます。