堺雅人「自分は何になりたいかではなく、自分には何ができるのか?」

あの人と本の話 and more

更新日:2014/5/2

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。本誌で堺雅人さんがオススメしてくれたのは、『俳優のためのハンドブック』。堺さんは、俳優になりたいという人に限らず、広く一般読者の胸に届く1冊として、この本について語ってくれた。WEB版特別インタビューでは、より専門的な内容を堺さんのコメントとともに紹介する。

「演劇入門書や演技論の本を読むのが好きなんです。『俳優のためのハンドブック』は昨年9月に刊行された、最新の1冊。言ってることは、古典的な本と一緒なんですけどね。“魔法なんて起こらないよ”と。あるいは、“役になりきるなんてあり得ないよ”。膝をポンポン叩きながら読みました」

 本書は、アメリカの劇作家・デヴィッド・マメットが1983年~84年に行った伝説のワークショップをまとめたもの。全米の演技クラスや、プロの稽古現場でも読み継がれてきたテキストの待望の翻訳だ。第2章で登場する、以下のシンプルな公式に、堺さんは感銘を受けたという。

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1.キャラクターは、戯曲の中で何をしていますか?
2.キャラクターにとって、不可欠なアクションは何ですか?
3.キャラクターのアクションは、あなたにとって何にたとえられますか?(“まるで○○のように”というたとえ)

 実は、この公式を意識して、4月13日放送のスペシャルドラマ『リーガル・ハイ』の撮影に挑んでいたという。

「法廷シーンはほとんど、これで作ってますね。法廷っていうアングロサクソン的文化には、ばっちり当てはまるようです。逆に、学校だとか日常のシーンではダメだった(苦笑)。このメソッドが100%正しいわけではないし、あらゆる場面で当てはまるものではないと思うけれども、エッセンスは間違いなく役に立つと思うんです。“いい役者になりたい”“いい芝居をしたい”というゴールを直接目指すのではなく、具体的に、いま自分は何ができるのかということを徹底的に考える。自分は何になりたいかじゃなくて、自分には何ができるのか……。うん、やっぱり、役者じゃないみなさんにもオススメしたい1冊です」

(取材・文=吉田大助 写真=川口宗道)
 

堺 雅人

さかい・まさと●1973年生まれ、宮崎県出身。92年旗揚げの劇団東京オレンジに参加。2004年、大河ドラマ『新選組!』で注目され、10年『ジョーカー 許されざる捜査官』で連続ドラマ初主演。近年の出演作に、映画『鍵泥棒のメソッド』『その夜の侍』『大奥』など。『ひまわりと子犬の7日間』が現在公開中。著書に『文・堺雅人』など。
ヘアメイク=塚原ひろの スタイリング=登地勝志

 

紙『俳優のためのハンドブック 明日、舞台に立つあなたに必要なこと』

メリッサ・ブルーダー、リー・マイケル・コーンほか/著 絹川友梨/訳
フィルムアート社 1995円

アメリカの劇作家デヴィッド・マメットが1983年~84年に行ったワークショップをまとめた一冊。全米の演技クラスや、プロの稽古現場でも読み継がれてきた。役の心情ではなく、シーンごとに要求されている役の「アクション」を追求することが最重要ポイント。いい芝居には、役者自身の実人生の記憶が必須と説く。

※堺雅人さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ5月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

スペシャルドラマ『リーガル・ハイ』

脚本/古沢良太 演出/石川淳一 出演/堺 雅人、新垣結衣、里見浩太朗、榮倉奈々、広末涼子、北大路欣也 4月13日(土)21:00~23:10 フジテレビ系 
●偏屈で毒舌の人格破綻者ながら無敗の敏腕弁護士・古美門研介(堺)。パートナーは、真面目で正義感は強いが融通の利かない新米弁護士・黛真知子(新垣)。今回の案件は、女性教師・藤井みなみ(榮倉)のクラスでいじめが蔓延、息子は飛び降りを強要されたと母親が学校を訴えた。調査を始めると、そこには意外な現実が……。
(c) フジテレビ