『スナックさいばら おんなのけものみち』第2弾刊行記念対談 西原理恵子×小島慶子

新刊著者インタビュー

更新日:2013/12/4

読者の投稿に理恵子ママが答える、大好評『スナックさいばら おんなのけものみち』。
第2弾『バックレ人生大炎上篇』刊行にあたり、西原理恵子×小島慶子、夢のタッグマッチが実現。
泣いて笑って闘ってきた女たちの本音トーク、女の人生これからがうんと楽しい。

さいばら・りえこ(右)●1964年高知県生まれ。97年『ぼくんち』で文藝春秋漫画賞、2004年『毎日かあさん カニ母編』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、05年『毎日かあさん』『上京ものがたり』で手塚治虫文化賞短編賞、11年『毎日かあさん』で日本漫画家協会賞参議院議長賞を受賞。
 

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こじま・けいこ(左)●1972年オーストラリア生まれ。タレント、エッセイスト。テレビ、ラジオで幅広く活躍。99年ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。今年4月から毎週水曜『小島慶子のオールナイトニッポンGOLD』を担当
 

なんやかんやあった
オバちゃんの人生に学べ!

小島 私、西原さんのマンガが大好きで、『ぼくんち』を読んで泣き、『いけちゃんとぼく』を読んで泣き、毎度泣いちゃうんですよ。

西原 私のマンガは自分がしんどかったことの思い出ですから。自分の経験があとになって“なれ寿司”みたいになって還ってくる。おかんが毎日料理をつくるような感じで描いてますね。冷蔵庫の奥とか探すといろいろ出てくるでしょ。

小島 ありますね。いつ買ったかわからない紅ショウガとか。

西原 そうそう。うわ、これ、どうする?みたいなのもメリケン粉で混ぜて焼いちゃう。うれしかったこと、悲しかったこと、腹が立ったことを混ぜて。ただ、ホントに腹が立ったことは描かない、まずくなるから。

小島 なるほど。なれ寿司になってからですか。

西原 ワイドショーなんてひどいでしょ。朝から官僚の悪口、若者の悪口、最後に年寄りのコメンテーターが締めて、腹の立つことを料理してるから、ちっとも面白くない。そういうとこには全然とりあげられないオバちゃんたち、しかも人生があんまりうまくいってないオバちゃんたちが、実は結構いい切り返しをしてるってことに、みんな、もっと気がついたらいいのに。『スナックさいばら』はまさしくそれです。

小島 それぞれ環境は違っても“女って大変” “生きてくっていろいろしんどいよね”ってことはおんなじかなって。読みながら、さっき泣いたはずなのに、もう笑ってしまう。『スナックさいばら』にありましたよね。「なんやかんやありまして」は魔法の言葉だって。

西原 そう。くくっちゃうの、オバちゃんは。大変なこともあったけど、もう忘れた。「なんやかんやあった」で、もうええやん。

小島 「なんやかんや」のひと言に、いろいろあったんだろうなあってことが読めるようになると、世の中が多少マシな場所に思えてきますよね。若い時はそこを読み飛ばしてたから。

西原 うちに出前に来る寿司屋のオバちゃんが、表札が変わったらすぐ気がついてね。「どうしたの」って言うから「離婚したの」って言ったら「あら、よかったわねえ」って。そういう言葉がスッと出てくるってことは、オバちゃんも相当いらんことやってきたんだろうなあって。

小島 きっと「なんやかんや」あったんでしょうね。

西原 そういうオバちゃん力に私もすごく助けられてます。
 

いい男の人にあたったら、前の女に感謝する

小島 私は小学生の息子がふたりいるので、西原さんの『ああ息子』を読んでおいてよかったって。お兄ちゃん、この間「ノート買って」って言ったんですよね。

西原 そう。ノート記念日。おととい、ついに「辞書買って」って言われました。もー、高校生になったら教育費がかさんじゃって(笑)。

小島 ついに辞書ですか! おめでとうございます。

西原 でもこの間ノートを見たら、教科書破って貼ってあったの。だから「糊が要る、糊が要る」って言ってんだ。

小島 そうきたか。

西原 男の子は永遠の謎です。でもそれが楽しい。あとのことはもう、未来の嫁にトス!

小島 トス! うわー、なんか気がラクになった(笑)。

西原 この間もヤマザキマリさんが占い師に「あなたには男をダメにする相がある」って言われて「わかってる。私が旦那をダメにした」って言うから「いや、マリちゃん、それは違うと思うよ」って。旦那は見ず知らずの女が育てた男だもん。

小島 前の女が悪い(笑)。女は姑やら元の彼女やら男の中にある他の女の影響をしらみ潰しに消しにかかる本能があるんじゃないかとも思うんですが。

西原 なるほどね。でも男の人も、前の人がうまいことメンテナンスしてあたりが柔らかくなった中古車みたいな人のほうがよくないですか。新車はあたりがキツくてね。私が若い男を嫌いなのはそれなんです。いい人にあたったら、うまいことメンテしてくれてありがとうねって。私は前の女の人に感謝する。

小島 たしかに! それはありますね。

西原 私も高須先生に言われましたよ。「君の息子は大丈夫。自立してバリバリ稼ぐ女の機嫌をとるのは一級品のはず」って。

小島 この間、次男が「僕、ママみたいな人と結婚する」っ

て言うんですよ。「それってどんな人?」って聞いたら「えっと、だいたいパパ任せで、怒ると怖くて、ちょっと面白い人」って。

西原 きっとバリバリ稼ぐ面白い嫁を連れてきますよ。そしたら今度は姑で嫁とケンカだ。

小島 ヤダ。いっそ言葉が通じない外国人の嫁にして! 乳首しか隠れてない服を着てきても文化の違いって思うから(笑)。