山村隆太「読み手に考える余白を残しているのが小説の素敵なところ」

あの人と本の話 and more

更新日:2014/5/2

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、デビュー5周年を迎えたflumpoolのヴォーカリスト・山村隆太さん。「すっかりハマった」という小説との出会い、そして自身の作詞のこだわりについて語ってくれました。

「しっかりと意思を持って小説を読んでみようと思ったのが、この『秘密』だったんです」
と山村さんは言う。
きっかけは単純なもので、ただ本人にとっては語るのに少々照れくさいものだった。

「ちょうどflumpoolとしてデビューする前ぐらいの年だったと思うんですが、そろそろいい大人だし、小説の1冊や2冊は読んでおかないと、と思って(笑)。そこで偶然、手にした一冊でした」

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ところが、引きが強かったのか、これが大当たり!

「小説がこんなにも面白いものだとは思わなかったです。設定の素晴らしさ、ラストの衝撃……。そうしたものがギュッと詰まっていて。しかも、読みやすいんですよね。あまり他の作家の方の作品を読んでいるわけではないので偉そうなことは言えませんが、初めて体験した小説が東野圭吾さんだったというのは、僕にとっては幸運だったのかもしれませんね」

以来、時間を見つけては東野圭吾作品をたくさん読むようになった。最近では、ファンの方からオススメの作品を紹介されることも増え、ジャンルも広がってきているそうだ。

「湊かなえさんの作品も好きですね。表現方法や言葉の使い方がとても個性的で。こんな描写の仕方もあるんだって、読む度に驚いています」

とは言え、そのことが自身の作詞に影響を及ぼしているかというと、「それはまったくない」とのこと。

「小説の良さは読み手がいろんな解釈ができるように、余白を残しているところだと思うんですね。歌の歌詞でもそういった作詞をされる方もいますし、もちろんそれも素晴らしいですけど、僕は逆なんです。歌を聞いてくれる方に対して、ストレートに伝えたい。つまりは方向性がまるで違うんですよね。だからこそ、小説にハマったのかもしれない。今では、本当にいい息抜きの趣味になってますね。ただ、読むのが遅いから時間がかかってしょうがないんですけどね(笑)」

(取材・文=倉田モトキ 写真=山口宏之)
 

山村隆太

やまむら・りゅうた●flumpoolのヴォーカル。阪井一生(Gt)、尼川元気(Ba)、小倉誠司(Dr)による4ピースバンド。2008年のデビューシングル「花になれ」が10日間で100万DLを記録。翌年には日本武道館公演を果たすなど、人気を不動のものに。デビュー5周年となる今年は初の台湾単独ライブも成功させた。

 

秘密_書影

紙『秘密』

東野圭吾 文春文庫 700円

バスの転落事故で命を落とした妻の直子。同乗していた小学生の娘・藻奈美は一命を取りとめるも、意識を取り戻した彼女の体には妻の魂が宿っていた。やがて始まる父・平介と直子(藻奈美)との不思議な生活。娘のために人生をやり直そうとする妻の決意や、秘密を抱えながら生きる夫の葛藤を描いた感動ミステリー。

※山村隆太さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ11月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

『強く儚く/Belief~春を待つ君へ~』

初回限定盤(CD+DVD)1680円、通常版(CD)1260円 A-Sketch 
●10月1日にデビュー5周年となるflumpoolが放つアニバーサリーシングル。「強く儚く」はデビューからの足跡を振り返りつつ、ファンやメンバーへの思いを綴った一曲。また映画『おしん』の主題歌になっている「Belief~春を待つ君へ~』はアジア全域で絶大な人気を誇るバンドMaydayと初コラボ。故郷を大切にする思いや、人生をまっすぐに生きる力強さを描いている。