朝倉あき「繊細で、可愛らしくて、アンバランスで。江國香織作品に描かれる女性は私の憧れです」

あの人と本の話 and more

更新日:2014/5/2

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、スタジオジブリの新作映画『かぐや姫の物語』で、数百人の候補のなかから選ばれ、かぐや姫の声を演じた朝倉あきさん。類まれなるひとりの女性を追求した朝倉さんが、本の世界から読みとる魅力的な女性像とは?

「高畑監督の脚本には、植物の一本一本に至るまで緻密に説明が書かれていて、想像力を掻き立てられました。膨大な知識の詰まっている監督の脳みそを覗いたような、その世界の奥深さに触れたような心地でした」

 さらに想像力を羽ばたかせようと、朝倉さんがページを開いたのは『竹取物語』の原文。

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「現代語訳で読むと、かぐや姫って高飛車な娘なのですが、原文を声に出して読むと印象が変わるんですね。この世のものではないような美しさと教養を備えた女性であることが一文一文に凝縮されているというか。ピッと芯が通っているというか。その感じも演じるときの参考にしました」

 この時、一番読んだのが「解説と通釈文も一緒に読め、当時の人たちの表情が手にとるようにわかる」という『竹取物語(全)』(角川ソフィア文庫)。大の本好きという朝倉さん、実は選んでくれた『声に出して読みたい日本語(1)』の他に2冊も用意してくれていた。それがこの1冊と、江國香織、初の詩集『すみれの花の砂糖づけ』(新潮文庫)。

「江國さんの小説が大好きで、中学生の頃からすべて、何度も読んできました。でも詩集は読んだことがないと言ったら、22歳の誕生日にプレゼントしていただいて。小説の世界観そのままに、女性らしい深さが印象的な言葉で鋭く抉り出されていて、そこに少女の部分も混在している。アンバランスなのか、むしろバランスを保っているのかという危ういところに惹かれました」

 こういうものを持つ魅力的な女性を演じてみたいと語りながら、そのなかのお気に入りの詩をさらっと暗誦する。

「江國香織さんの世界は読者としてだけでなく、女優としても憧れです。大好きな『流しのしたの骨』(新潮文庫)など、映像化したらぜひ演じてみたいです」

(取材・文=河村道子 写真=森 栄喜)
 

朝倉あき

あさくら・あき●1991年、神奈川県出身。女優。2008年『歓喜の歌』でスクリーンデビュー。『とめはねっ!鈴里高校書道部』、連続テレビ小説『純と愛』などのテレビドラマ、『神様のカルテ』、『横道世之介』などの映画のほか、幅広いジャンルで活躍中。本作は初のアニメーション映画の声の出演作となる。2014年は映画『神様のカルテ2』の公開も控えている。
ヘアメイク=野中真紀子(éclat) スタイリング=嶋岡 隆(Office Shimarl)

 

ブタとおっちゃん書影

紙『声に出して読みたい日本語 (1)』

斎藤 孝 草思社文庫 599円

「知らざあ言って聞かせやしょう」「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」……思わず口にしたくなる口上や早口言葉、古典、詩、小説の名句、名文を集め、日本語ブームを巻き起こしたベストセラー。声を出す時のポイントや、各々の作品をユニークかつ的確に捉えた解説が、暗誦・朗誦をさらに奥深いものにしてくれる。

※朝倉あきさんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ12月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『かぐや姫の物語』

原案・脚本・監督/高畑 勲 声の出演/朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子ほか 配給/東宝 11月23日(祝)より全国ロードショー 
●かぐや姫はなぜ地球にきたのか。この地で何を思い、なぜ月へ去らねばならなかったのか。そして姫が犯した罪と罰とはいったい何だったのか─スタジオジブリが描く、日本最古の物語文学に隠されたかぐや姫の真実。高畑勲14年ぶりの監督作。
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