谷口鮪(KANA-BOON)「朝井リョウさんの小説に影響を受けて、アルバムの歌詞を書きました」

あの人と本の話 and more

更新日:2014/5/2

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、ファーストフルアルバム『DOPPEL』がオリコン初登場3位にランキング、若手最注目バンド「KANA-BOON」のフロントマン、谷口鮪さん。本誌でオススメしてくれた朝井リョウの直木賞受賞作『何者』は、アルバム収録曲に深い影響を与えたそうで……。

 KANA-BOONの全曲の作詞作曲を手掛ける谷口鮪は、自身が受けた影響を隠さない。朝井リョウの『何者』を読んだことが、アルバム収録曲の歌詞に直接的な影響を与えたと言う。

「『何者』を読んで、ツイッターやSNSの怖さをより一層考えるようになったんです。『ウォーリーヒーロー』の、“そのタイムラインに飲み込まれる前に 想像してくれ 想像してくれ”という歌詞は、その影響ですね。結局のところ人が何を思っているのかは分からない、どこまでいっても裏はあるし……という『何者』のテーマは、『白夜』の“本当のことは言えやしない/暗い海の底、深く深く/辿り着く者など誰もいない/表面化したお面のその下”という歌詞にも繋がっていると思います」

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 自分はここから影響を受けている——そうはっきり言葉にできる人は、実は珍しい。世代が近いクリエイターの作品ならばなおさら、ライバル心が湧いてしまうからだ。

「音楽もそうなんですけど、僕らはすごく近い世代の、日本のバンドから影響を受けているんです。ルーツのスパンがすごく短い。そのことを人に言われてコンプレックスに感じていた時期もあったんですけど、今は関係ないですね。どんな音楽に影響を受けたとか、こんな本が好きですということは、隠すことではないし、そこから自分たちの音楽が生まれているのは当然だと思うんですよ。今はまだ若手ですしね(笑)。ゆくゆくは、いろんなものを越えないといけないとは思っています。何かに似ているとかじゃなくて、これがKANA-BOONの音楽だってみんなに認められるものを出していくつもりです」

(取材・文=吉田大助 写真=山口宏之)
 

谷口 鮪

たにぐち・まぐろ●1990年生まれ、大阪府出身。ロックバンドKANA-BOONのボーカル&ギター。メンバーは古賀隼斗 (Gt./Cho.)、飯田祐馬(Ba.)、小泉貴裕(Dr.)の4人。2012年に開催されたキューン20イヤーズオーディションにて4000組の応募者の中から見事優勝し、デビューの足がかりを掴む。2013年9月リリースのシングル『盛者必衰の理、お断り』でメジャーデビュー。10月、フルアルバム『DOPPEL』をリリース。

 

『何者』書影

紙『何者』

朝井リョウ 新潮社 1575円

就職活動の情報交換をきっかけに集まった、東京に暮らす5人の大学生。彼らの間には友情があり恋愛感情も漂っているが、ライバル同士でもある。あの時こう言ったけれど本当はこう思っていた……といった裏の顔が、ツイッターのつぶやきとして作中にまき散らされていく。そして、ラスト30ページ。物語が牙を剥く。

※谷口 鮪さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ1月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

1st Full Album 『DOPPEL』

1st Full Album 『DOPPEL』ジャケット

2800円 キューンミュージック 
●失った「君」への思いを切々と歌った1曲目「1.2. step to you」から始まり、爆音ハイスピードで突っ走る全11曲。デビューシングルの表題曲「盛者必衰の理、お断り」は8曲目に収録。「平家物語」と落語「寿限無」の一節を歌詞に盛り込んだ、大胆不敵な世界観は必聴。4曲目「MUSiC」では自分たちの音楽の意義をシャウトする!