黒木華「ちょっと欠けている、ダメな人が好きみたい」

あの人と本の話 and more

更新日:2014/5/28

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『小さいおうち』で昭和初期、東京郊外の家に奉公する女中を演じた黒木華さん。本誌でもその魅力を語ってくれた嶽本野ばら作品について、さらに掘り下げて聞いてみると、意外な一面が?

 インタビュー時の静かな語り口調からはイメージが湧きにくいが、実はもともとパンクファッションに興味があったという黒木華さん。

「ヴィヴィアン・ウエストウッドが大好きでした。でも、十代の私にとっては高価な洋服だったので、もっぱら見て楽しむほう専門でした。パンクファッションもロリータファッションも、憧れだけど着られない洋服ですね。嶽本野ばらさんの小説って、ファッションの描写がとても濃やかなんです。具体的に想像する楽しみもあるし、知らなかったブランドをたくさん知ることができたのもうれしかった」 

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 音楽のほうもパンク好き?と思いきや、こちらは雑食だそう。

「これというジャンルはなく、いろいろ聴いています。平沢進さんも好きですし、シガー・ロスとか、あとは山口百恵さんも好きです。バラバラですね(笑)」

 初めて読んだ嶽本作品は、中学時代にふと書店で手に取った『下妻物語』

「こういう文体の本を読んだことがなかったから、すごく面白いなと感じて、そこから好きになりました。ロリータファッションを愛する者の生き方を伝授するようなエッセイも大好きなんです。『重いものも持たない、料理も自分でしないのがロックな生き方』とあるんです。でもそんな人、ダメじゃないですか!(笑)。そのダメさに惹かれてしまう。完璧な人よりもどこか欠けている人、一人では生きていけないような人のほうが魅力的だと思います」

 ほかに好きな作家は?と問えば「太宰治」と即答。

「やっぱりちょっとダメな人が好きみたいです(笑)」

(取材・文=釣木文恵 写真=下林彩子)
 

黒木 華

くろき・はる●1990年生まれ。大阪府出身。日刊スポーツ映画大賞新人賞、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞。2010年NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』にて本格デビュー。13年『シャニダールの花』で映画初主演。近作に『舟を編む』、ドラマ『リーガルハイ』(フジテレビ)など。2014年には、映画『銀の匙』(3月7日公開)、NHK連続テレビ小説『花子とアン』が控えている。
スタイリング=井伊百合子 ヘアメイク=北 一騎

 

『ミシン2 カサコ』書影

紙『ミシン2 カサコ』

嶽本 野ばら 小学館文庫 460円

人気パンクバンド「死怒靡瀉酢(シドヴィシャス)」の美少女ヴォーカリスト・ミシンから、ライブ中に自分を殺してほしいと依頼されたギターの傘子。しかし元々愚鈍な彼女はミシン殺しに失敗。活動を再開した彼女たちのバンドの人気は急加速をはじめ、ミシンと傘子の距離も縮まっていくが、ある日のライブ中に大きな事件が起こる。

※黒木 華さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ2月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『小さいおうち』

監督/山田洋次 原作/『小さいおうち』中島京子(文春文庫) 出演/松 たか子 黒木 華、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木 聡、倍賞千恵子 配給/松竹 1月25日(土)ロードショー
●昭和初期、東京郊外の赤い屋根の家で働くことになった女中・タキ(黒木)。この家の奥様・時子(松)に憧れ、彼女とその家族に尽くすことに喜びを感じていた。しかし一人の男性がこの家を訪れたことから、奥様の気持ちに微妙な変化が表れる──。
(c)2014「小さいおうち」製作委員会