蒼井優「おもしろくって、もう6回ぐらい読んでいます。3回目からはノートに書き写したりもしました」

あの人と本の話 and more

公開日:2014/6/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、『劔岳 点の記』の木村大作監督が満を持して送る山岳映画『春を背負って』でヒロインを演じた蒼井優さん。彼女が台本を犠牲にしてまで現場に持ち込んだ一冊とは?

 あと少しで7月。夏山登山はハイ・シーズンに突入する。それを前に6月14日(土)から公開される映画『春を背負って』。スクリーンいっぱいに広がる北アルプスの大パノラマは、思わずため息がこぼれるほどに美しい。とはいえ、高山での撮影はかなり過酷だったらしく……。

「やっぱり大変でしたね。肉体的にも、精神的にも」と、本作で山小屋のスタッフとして働く天真爛漫なヒロインを演じた蒼井優さんはふり返った。

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「最初に撮影に入ったのは5月の連休頃でしたが、撮影現場となった山小屋は標高3015メートルの山頂にあるせいで、まだびっしり雪に覆われていました」

 そんな中、2500メートル地点にあるベースキャンプから山小屋に向かうこと、計5回。最初はたった515メートル登るのに5時間半もかかったという。

「険しい山道を歩くのだから荷物は少しでも軽く、ということで台本すら持って行きませんでした(笑)。私だけじゃなくて、役者陣はみんなそうでしたね。もう頭に入っていたから、大丈夫だろうって」

 だが、そんな状況でも手放せない本があった。福岡伸一さんが書いた『生物と無生物のあいだ』だ。

「とにかくおもしろくって。もう6回ぐらい読んでいます。3回目からはノートに書き写したりもしました。生物科学の啓蒙書とはいえ、ミステリー仕立てで読物としてもおもしろいし、ためになる。それに、細胞の話だから妙に実感がもてるというか。専門的に勉強していない人間でもわかるように、さらにはわからないことを調べようと思わせる何かがある。この本を読んだら、みんな福岡さんの講義を受けたくなると思います。今までにない読書体験でとても刺激的でした。皆さんにおすすめしたい一冊ですね」

取材・文=門賀美央子 写真=冨永智子

蒼井 優

あおい・ゆう●1985年、福岡県出身。2001年『リリイ・シュシュのすべて』で映画デビュー。06年に映画『フラガール』などで日本アカデミー賞新人俳優賞および最優秀助演女優賞受賞。8月に出演作『るろうに剣心 京都大火編』、9月には『るろうに剣心 伝説の最期編』が2カ月連続で公開を予定。
スタイリング=森上摂子(Shirayama Office) ヘアメイク=赤松絵利(esper.) 衣装協力=ワンピース15万1000円(税別)(ザ ロウ/コロネット TEL03-5216-6517)

 

『敗者』書影

紙『敗者』

松山ケンイチ 新潮社 1400円(税別)

2011年3月11日から12年10月26日までの約1年半、俳優・松山ケンイチが思い、行動したことを赤裸々に自分の言葉で綴ったエッセイ集。若手俳優として実力ナンバー・ワンの評判も高い男の、演者としての苦悩、家族への思い、そして震災を経験しての感慨など、他では語られることのない生の声がぎっしり詰まっている。

蒼井優さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ7月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『春を背負って』

原作/笹本稜平『春を背負って』(文藝春秋)
監督/木村大作
出演/松山ケンイチ、蒼井 優、檀 ふみ、小林 薫、豊川悦司
配給/東宝
6月14日(土)より全国東宝系にて公開
●立山連峰で山小屋を営む父の急死を受け、東京での生活を捨てて跡を継ぐことにした長嶺亨。最初は反対した母や従業員の高澤愛の助けをかり、悪戦苦闘の毎日を送り始める。やがて父の友人・ゴロさんも山小屋を手伝うようになり、亨は新しい生活に慣れていくが、そんな時、芽生えかけていた自信をくじくような出来事が起こり……。
(c)2014「春を背負って」製作委員会