“AVを見た本数は経験人数に入れていい” バカリズムがリスナーと作り上げた 男のエロ面白さ全開の妄想本

新刊著者インタビュー

更新日:2014/9/29

 毎週月曜日夜10時、ニッポン放送をキーステーションに全国18局で放送されているラジオ番組『バカリズムのオールナイトニッポンGOLD』の人気コーナー「エロリズム論」が本になった。リスナーから寄せられた、エロに関する格言や妄言、それに対するバカリズム・升野英知のコメントが笑いを生む“エロ面白い”一冊だ。

バカリズム

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ばかりずむ●1975年、福岡県生まれ。本名は升野英知。95年にお笑いコンビ・バカリズムを結成。2005年よりピン芸人に。単独ライブやテレビ番組に出演するほか、MC、ナレーター、俳優としても活躍。13年秋より『オールナイトニッポンGOLD』のパーソナリティに。
 

「僕は以前から“AVを見た本数は経験人数に入れていい”って提唱していたんですけど(笑)、昨年秋の番組開始前の打ち合わせで、リスナーからそういった類の名言を送ってもらおうということになったんです。送られてきたメールや葉書はどれも面白くて、初回分のネタを選びながら“これを形として残したいな”って思いました。その後も毎週のようにバカバカしいネタが送られてきて、出版まであっという間だった印象です」

 各ページには、リスナーから番組に届けられた1編のエロリズム論が掲載され、升野さんによるコメントや解説が添えられている。収載されているネタは約200編。これまでに放送されたネタの中から、文字にしたときに面白いものが選ばれた。

「後世に残るものですから、真剣に選びました。声に出して読んで面白いネタと、活字だけで面白いネタは違うんだなっていうのは発見でしたね。男性ならほとんどのネタに共感できると思います。学生時代に部室やファミレスで友達としゃべっていたようなバカバカしい調子のフレーズばかりなので。女性は女性で“男ってこんなくだらないこと考えてるの?”ときっと笑えるはず。エロリズム論におけるエロ要素は、あくまでも笑いのための道具でしかないので、生々しさは皆無。妄想が過ぎるという意味で、エロリズム論はファンタジーに近い気もしています。男たちの妄想の“かわいらしさ”も裏テーマですね。今回、五月女ケイ子さんにイラストを描いていただきましたが、かわいらしさを表現する意味でピッタリでした」

 本書に収載されたエロリズム論は、いわゆる“あるあるネタ”を哲学的にアレンジしたもの、童貞の妄想や女性から相手にされないひがみが元になったネタ、マニアックな趣味に特化したフレーズなど実に多種多様だ。

「まったく趣味の違う……たとえばマゾヒストの方とか、女性の下着に執着しているような人からの投稿が“だよね?”みたいに締めくくられていると“いやいや、俺は違うからね(笑)”ってなる。だけどそういうネタも、“自分は違う”と断言したうえで客観的に面白がれるのがエロリズム論のいいところ。あとは童貞の人からの“俺たちってそうですよね?”みたいな投稿も結構多い。でも僕は童貞じゃないので“仲間じゃないから”って何度も言う羽目に。彼らとは絶対的な距離感を取っているつもりです(笑)」
 

番組を聞いていなくても読み物として楽しめる

 お笑い芸人としてネタ本を出すときと、今回のように番組から本を出すのとでは、気持ちはまったく違うのだという。またその思いは、リスナーとの関係性にもつながるようだ。

「番組に送られてくるネタは、どう転んでも他人のもの。産みの苦しみもないですし責任もありません(笑)。実は僕、ネタを送ってくれるリスナーを作家さんだと思っているんです。この本も、番組作りも、一番の負担はリスナーが負っていると思っています。僕も芸人のプロとしてラジオでのトークを頑張りますけど、ネタを送ってくれる人たちのレベルが上がらなかったら番組は面白くならない。送られてくるネタがつまらなくなればコーナーは終わりますし、番組も終わってしまう。だから、リスナーからの投稿に放送の中でダメ出しすることもあるんです。“前半はいいのに最後の2行がいらない”とか」

 本書に掲載された約200編のネタは、ジャンルの偏りもなく、満遍なくエロ面白い。だが、番組に送られてくるネタが、特定のジャンルに偏ってしまうことがあるのだという。一時は“ヤリマンとはこういうものだ”とユーモラスに語る投稿が増え過ぎて、他のネタが減少したことがあったそう。

「リスナーは“どうすれば読まれるか”という部分にセンスをぶつけてきます。だから、ひとつの方向性で面白いネタがちょっと続くと、そっちに流れてしまいがち。でも僕はエロリズム論というコーナーをバランスよく成立させようと考えているんです。重心を真ん中に取ってネタを左右に振っていくというのが、お笑いのネタ作りの基本なんですけど、作家さんだと思って頼りにしているリスナーたちが、素人みたいなことをしてくるので本当に困る(笑)。そういう思いはラジオでもしっかり語って、ネタが偏らないように呼び掛けています。結果的に、ヤリマンネタはコーナー内にゾーンを作ってそこでまとめて読むことで、トークのリズムを崩さないようにしたのですが、そういうラジオのノリは本では出さないように気をつけました。今回本に載せたのは、エロリズム論の趣旨に沿ったお手本とも言えるものばかり。単純に読み物として楽しいと思います」