ピエール中野「言葉って使い方次第で、どんどん表現が豊かになる。そこに本を読む面白さを感じました」

あの人と本の話 and more

更新日:2014/9/5

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、先日ソロプロジェクトとして1stミニアルバムをリリースした、「凛として時雨」のドラマー・ピエール中野さん。「学生のころから本が好きになった」と話す彼に、何度も読み返すというほかの本についてもうかがってみました。

 本誌では、森山大道の『犬の記憶』を紹介してくれたピエール中野さん。実は、学生時代に知人にすすめられたこの一冊との出会いが、今の本好きにつながっているのだという。

「それまであまり本を読んでこなかったんですけど、“言葉って使い方次第でこんなにも豊かな表現方法ができるんだ”ということを知って。それ以来、常に身近に本を置く生活に変わりました」

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好きなジャンルはエッセイや自伝本。なかでもお気に入りなのがYOSHIKI(市川哲史との共著)の『ART OF LIFE』で、今回の『犬の記憶』とどちらを紹介するかで最後まで悩んだそうだ。

『ART OF LIFE』は本当に衝撃的でした。人格別インタビューという、斬新な切り口の章立てになっているんです。YOSHIKIさんは思考の引き出しの多い方なので、きっと『プライベートの自分』『曲作りをしている時の自分』、それに『バンドのことを考えている時の自分』と、シチュエーションによって頭の中を切り替えて使い分けているんでしょうね。だからこそ、人格別にインタビューをしようということになったんだと思います。それぞれの思考の違いの幅広さに驚かされますし、内容もカッコイイ。ひょっとしたら絶版になっているかもしれないので、興味のある方はぜひ頑張って探して読んでみてください」

一方、小説やマンガを読むことは少ないのだろうか?

「そんなことないですよ。小説だと花村萬月さんの作品が好きですね。あのエログロさがたまらない(笑)。“え、そんなところまで描写するの!?”っていう、読み手の二歩先、三歩先まで表現してくれているところが魅力的です。マンガも『MASTERキートン』や、野球マンガの『キャプテン』『寄生獣』をよく読みました。ただ……マンガだと、一度読み出したら続きが気になって、ドラムの練習をしなくなるんですよ(笑)。だから今読んでいるのは『東京喰種』くらいです。なので、活字を読む時間がどんどん増えていってるんですよね」

(取材・文=倉田モトキ 写真=山口宏之)

ピエール中野

ぴえーる・なかの●1980年埼玉県生まれ。2002年に「凛として時雨」を結成、08年にメジャーデビューを果たす。ドラムのテクニックに定評があり、GLAYや星野源などのレコーディングにも参加。またドラム教則DVD+BOOK「Chaotic Vibes Drumming 入門編」「〜実践編」を手がけるなど、活動は多岐にわたる。

 

『犬の記憶』書影

紙『犬の記憶』

森山大道 河出文庫 740円(税別)

80年代に雑誌『アサヒカメラ』で連載されていた自伝的エッセイ。都市の路上のスナップを撮り続け、海外でも高い評価を得ている森山が、過去の記憶と向き合いながら、「写真とは何か」について独自の視点で語っている。かつて、ニューヨークで生活をともにしたという横尾忠則による巻末の森山大道論も必読!

ピエール中野さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ10月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

『Chaotic Vibes Orchestra』ピエール中野

ソニー・ミュージック 初回生産限定盤(CD+DVD)2963円(税別)、通常盤(CD)2500円(税別)
ピエール中野によるソロプロジェクト第1弾ミニアルバム。即興を主体としたユニット「カオティック・スピードキング」の楽曲を初音源化した「SORA」や大森靖子をボーカルに招いてのカバー曲「チョコレイト・ディスコ」などを収録。ドラムの持つ可能性を広げ、かつ自身の集大成的な意味も込めた珠玉の一枚となっている。