波瑠「何度も何度も思い出して、自分の中に蘇らせる。そうして人は大切な人の死を乗り越えていく」
公開日:2015/11/7
「とても難しかったです」
映画『流れ星が消えないうちに』について波瑠さんは開口一番、そう語った。
「あれからもうそろそろ一年経ちますね。撮影期間中は、空気がとても澄んでいました」
撮影は昨年の冬だったという。
「とってもなだらかにストーリが進んでいく。でも、だからこそ、登場人物の心情に目が行く作品になるだろうなと思いました」
橋本紡のベストセラーである原作の小説は、さらに「難しい」と感じていたという。
「物語を読み終えたあと、そのまま解説のページを開いたのですが、重松清さんが書いていらっしゃって、それを読んで“なるほどなぁ”って、わかってきたことがたくさんあったんです。こういうふうに想いを巡らせて読むと、この物語はもっと深いところで理解できるのだと改めて気づくことができました」
“なぜ、ひとは亡くなったひとのことを「星になった」と言うのだろう”――最初に投げかけられる重松清の言葉。それはこの物語の底に流れるものを掬い取り、読者の想像力を喚起していく。
「人間は想いを馳せることができるんだと。たとえば星を見たり、思い出のあるものに触れたりすることで、失くしたものを自分の中に呼び戻すことができる。それって、すごく大事なことだと。何回も何回も思い出して、自分の中に蘇らせる。そうして人は大切な人の死を乗り越えていくんだなぁと思えました」
本山奈緒子を演じるにあたり、柴山監督との話し合いは特になかったという。
「監督は、撮影中、いつもふわりとすぐ近くに寄り添ってくださっていて。お互いに、“何かあったら言ってください”という言葉を重ねながら」
そのゆったりとした穏やかな空気は、日常の流れの中を少しずつ進んでいく物語に見てとれる。全編のほとんどを流れる音楽はオーケストラ演奏。つくり手の皆が愛している原作、そこを起点とした本作には、並々ならぬこまやかさ、ていねいさが溢れているのだ。
「映画の中で大切なセリフとして幾度も出てくる加地くんの言葉は、ほんとにみんなの心に突き刺さっていて。“動いてこそ見えてくるものがある”――その言葉は、キャストも、スタッフも、皆が大事にしていたと思います」
(取材・文=河村道子 写真=下林彩子)
はる●1991年、東京生まれ。2006年、ドラマ『対岸の彼女』で女優デビュー。主な出演作に、映画『がじまる食堂の恋』『アゲイン28年目の甲子園』、ドラマ『BORDER』など。現在、映画『グラスホッパー』が公開中。NHK連続テレビ小説『あさが来た』でヒロイン・白岡あさを演じている。
ヘアメイク=松岡奈央子 スタイリング=明石恵美子 衣装協力=Gジャン2万4800円(オアスロウ/ビームス ボーイ 原宿 TEL03-5770-5550) ドットワンピース2万2000円(カロリナ グレイサー TEL0120-011-301)(いずれも税別)
“恋愛は不安との戦いであり、結婚は不満との戦いである”──結婚に憧れつつ同僚・朔也と不倫を続けるOL・美月。望んで結婚し、家庭に入ったものの生活に不満を感じる朔也の妻・英利子。対照的な2人の女が交差した時、各々の人生を照らすものが見えてくる。恋愛や結婚の呪縛から自由になれる女性の生き方小説。
映画『流れ星が消えないうちに』
原作/橋本紡(『流れ星が消えないうちに』新潮文庫) 監督・脚本/柴山健次 出演/波瑠、入江甚儀、葉山奨之、黒島結菜、小市慢太郎 配給/アークエンタテインメント 11月21日(土)より角川シネマ新宿ほか全国公開
●恋人・加地君が事故で死んでしまった。しかも見知らぬ女性と一緒に。月日が流れ、奈緒子は加地の親友・巧と付き合うようになった今も玄関でしか眠れない。それぞれの止まった時計の針が動きだすのは──。
©2015 映画「流れ星が消えないうちに」製作委員会