清水依与吏「back numberの曲は歌詞だけ見ても、僕たちの思いが伝わるはずだと自負しています」

あの人と本の話 and more

公開日:2015/12/5

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、12月9日に5枚目のアルバム『シャンデリア』をリリースするback numberの清水依与吏さん。バンド内ですべての作詞・作曲を手掛ける清水さんに、“言葉”への思いを語っていただきました。

「僕も言葉を扱う仕事をしているので、表現力の精度を上げるために、よく小説を読むようにしているんです。そうしたなかで、『この作家さんは天才だ!』と思ったのが伊坂幸太郎さんでした」

 本誌でも紹介している『死神の精度』は、清水さんが初めて手にした伊坂作品。伏線の張り方や予想の斜め上を行く展開、それに不穏な空気を一変させる、空気が読めない人の台詞など、“伊坂節”とも言える巧みな表現力と言葉遣いに大きな感銘を受けたという。

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「どの作品にも一気に楽しめる面白さがあるんですよね。それに、なに気ない言葉が心に残り、それが押し付けじゃなく、そっと静かに胸の奥底に深く沈んでいったりする。これってまさに、自分たちが作る音楽の理想形でもあるんです」

 若者を中心に絶大な人気を誇るロックバンド・back number。彼らの魅力はキャッチーなメロディと、男女問わず虜にしてしまう情感あふれる歌詞にある。ニューアルバム『シャンデリア』では数多くのラブソングを収録しているが、驚かされるのは曲ごとにガラリと変わる視点の多さだ。

「歌詞って言葉数が少ないので、気をつけて言葉を選ばないとどれも同じような主人公の歌になってしまう。そこを意識していることが、結果的に大きく視点が異なる歌を生み出していることに繋がっているのかもしれません。それにラブソングを書く時は、あまり私情を挟まないようにしています。そのほうが、いろんなシチュエーションをイメージできますから。もちろん、自分の経験に基づいた曲もありますけど、最近はめっきり減ってきました。でも不思議なことに、自我を消して、物語の主人公になった気持ちで作詞をするほうが、自分の感情を素直に出せている気がして。ひょっとすると小説家の先生ってこんな気持ちなのかなって思ったりしますね(笑)」

 “言葉”に対する意識は高く、「メロディと合わせて楽しんでいただきたいのはもちろんですが、歌詞だけでも自分たちの思いがしっかり伝わるように書いていると自負しています」と清水さん。

「きっとダ・ヴィンチの読者の方は、物語を読むことが好きなはずですよね。ですので、先に歌詞を読んでいただいて、自由にメロディを想像し、僕たちが奏でる音との違いを楽しむ。そうした曲の聞き方をしていただくのもちょっと面白いかもしれませんね(笑)」

(取材・文=松井美緒 写真=山口宏之)

清水依与吏

しみず・いより●1984年群馬県生まれ。back numberのボーカル、ギターを担当。2009年、ミニアルバム『逃した魚』でデビュー。新人ながら数々の夏フェスに出演して注目を集め、13年には初の日本武道館公演も行い、即日ソールドアウトに。16年1月からは千葉県を皮切りに大規模な全国ツアーも控えている。

 

『死神の精度』書影

紙『死神の精度』

伊坂幸太郎 文春文庫 543円(税別)

自分が担当する人間に接触し、最期の1週間をともにする死神の千葉。彼の目に映る6つの人生の終わりを、時にユーモラスに、時にブラックに描いたミステリー小説。第57回日本推理作家協会賞受賞。ダ・ヴィンチのBOOK OF THE YEAR 2005でもミステリー&エンターテインメント部門で1位に輝いた伊坂幸太郎の代表作。

※清水依与吏さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ1月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

5thアルバム『シャンデリア』

5thアルバム『シャンデリア』JK

back number 
ユニバーサル シグマ [初回限定盤A 5800円、初回限定盤B 3980円、通常盤 3000円(すべて税別)]12月9日発売 
●ポカリスエットイオンウォーターのCMソング「SISTER」や、テレビドラマ『5→9〜私に恋したお坊さん〜』の主題歌「クリスマスソング」など数々のヒット曲を収録した待望のニューアルバム。初回限定盤Aには幕張メッセで行われた「urban live tour 2015」のライブ映像とメイキングを収めたスペシャルDVDも同梱。