津田大介2011年を振り返る 「ツイッター,facebook,原発」

スペシャルインタビュー

更新日:2013/8/9

未曾有の大震災に見舞われた2011年。
震災を機に、さまざまなモノの在り方が見直されたのは言うまでもない。
今年もツイッター、ニコ動、メルマガ、ラジオなどで情報を発信し続けた、
津田大介さんは2011年をどのように過ごし、何を考えていたのだろうか。
10のキーワードとともに、津田大介の2011年を振り返る。(全4回)

※その1 「政治メディア作り」はこちらから
※その2 「メルマガ」はこちらから


 

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ソーシャルメディアが
現実の社会に近づいてきた

――ソーシャルメディアが普及することによる読者側の変化というのは感じていますか?

津田:それはもちろん。
ただ読者自身が変化したというよりも、ソーシャルメディアが現実の社会に近づいてきた、ということだと思うんですよね。単純に参加する人が増えれば、ダメな人も増えるし、どうしても目立ってしまう(笑)。そっちに引きずられるという心理的なバイアスも働きますからね。Twitterは既に2000万人近くが使っていますが、これは日本のインターネットユーザー9500万人の4-5人に1人は使っている計算です。特にガラケーなどモバイルを除くPCユーザーに絞ればもっと普及率が高くなります。

――震災から間もない4月10日に行われた東京都都知事選挙では、Twitter上でも石原知事に対して様々な意見が集まるなど、活発な議論が交わされました。ただ、2000万人というのが、十分なインパクトを持ちうるものなのでしょうか?

津田:うーん・・・・・・。結局単純にいえば「選挙に行くとき誰を選べば良いか分からない」ということだと思うんですよね。都知事選ならまだしも、都議会議員選挙とか僕も困ってしまいます(笑)。そういう情報を整理して伝えるメディアを作って行きたい、と考えている訳なんですか。

――津田さんは共産党推薦の小池晃氏を推すと表明されていましたね。

津田:僕は共産党員でもなければ支持者でもないんですが、各候補の政策をやはり整理して比較した結果、そうなりましたね。

このへんの議論って、かつて携帯電話(ガラケー)ユーザーが急速に増えた90年代の議論と本質的には同じことなんですよね。「携帯電話の普及でかえって待ち合わせの時間に遅れる人が増えましたよね」とか(笑)。いまソーシャルメディアで同じようなことが繰り返されていて、デジャブ感がある。あのときも「24時間仕事に追いかけ回されたくないから絶対に携帯は持たない」ってがんばっていた人たちも今は普通に使っていますよね? それと同じことではないかと。

MIAU(代表理事を務めるインターネットユーザー協会)の活動を通じて感じていることでもありますが、変化とそこから生まれる可能性や問題点は、同じことではないでしょうか?ただ、それが実現する速度がものすごく早い。TwitterやFacebookのようなソーシャルメディアは、95年ごろに示されたインターネットの原理的な可能性を現実的に回収する場所ではないかなと感じています。

僕がこれから作るのは政治メディアなので、基本的には情報発信の場であり一方通行です。情報を出した後のリアクションはソーシャルメディアにまかせようかなと。
 


 

――津田さん=Twitterというイメージがありますが、ご自身はFacebookは活用されているのでしょうか?

津田:Twitterとの使い分けができていない、というのが目下の悩みですね(笑)。Facebookもちゃんとやらなきゃな、と思うんですけれど。

知らない人とコミュニケーションしたり、新しい考え方に触れたりすることができるTwitterのオープンさよりも、Facebookのように知り合い同士、情報の公開範囲をある程度コントロールできることによる安心感もあって、そちらに軸足を移すユーザーが増えているような印象があります。つまりFacebookは純粋にSNSなんですよね。メディアとしての志向性の違い、ユーザーの向き不向きもありますから、それは別に良いことではないでしょうか。

僕自身もFacebookは実際の顔見知りで、それ以外の人たちとはTwitterで、という具合に使い分けたいと考えているのですが、まだ出来ていません。

――忙しくて?

津田:違うんですよ。Facebookには承認依頼がたくさん来ちゃって……最初全部承認していたら、上限の5000人に達してしまって(笑)。ウォールの書き込みみても、なんのことだかさっぱり分からなくなってしまった。知人だけに限定しようと思って、フレンド解除していったんですが、がんばって1500人くらい。それに8時間掛かってしまって。


 

――(笑)

津田:この勢いだとあと16時間は掛かってしまう。その時間はさすがにとれなくてFacebookは出来なくなってしまってますね。なんとか年末年始にでもやりたいと思ってます。

でもなんだかんだいっても僕はTwitterが好きですね。そこでのコミュニティの在り方も変化していっているし、仕組みがまずい――たとえばGoogle+に比べると会話の流れが追いにくい――ところもあって正念場を迎えていると思うけど、やっぱり一番おもしろい。

――会話の流れを追える、という機能はTogetter(Twitterのログをまとめることができるサービス)が実現していますね。

津田:いや、Togetterは……一刻も早く無くなった方が良いと思いますね(笑)コンセプトは良いと思うんですけれど、ユーザーが悪すぎる。コミュニティの管理者はメディアという自覚をもって、NGユーザーを追い出すとかきちんと対応をとらないと。

とはいえ、アメリカではTwitterが再発見されているところがあって、ウォールストリートなんかでも、Facebookより集客に貢献しているという見方もありますし。つまり、PRにはやっぱりTwitterが向いている。きっかけ作りにはこんなに優秀なツールは無いと思っています。

MicrosoftがFacebookには出資していますし、GoogleがGoogle+をはじめたことを背景に、iOS5で強化されたAppleとの連携がそれを支えているという側面もあると思います。シェアを伸ばしているMac OSもそうなっていくはずで、Twitterももう一度また伸びていくのではないかと予想しています。