インタビュー

高橋 優「最新アルバムでは、万人受けしない、ピンポイントな設定に絞った歌も書きたかったんです」

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、2年ぶりのNewアルバム『来し方行く末』のリリース日が間近に迫った高橋優さん。これまでやってきていないことを始めてみたというアルバムの、生まれるまでにあった“様々”とは――。

 選んでくれた一冊『ままならないから私とあなた』に所収された一編「レンタル世界」も「朝井くんぽくってすごく好き」という高橋さん。“レンタル友達”“レンタル彼女”……人との関係性を“レンタル”する仕事に就く女性と「そんな関係、間違ってる!」と熱く語る男の物語だ。

「僕はどっちかというと“レンタル”のプロの女性に共感しました。そこにあるのは仕事としての感情で、自身が抱く愛とはまた別の話。主人公に意見される女性が“何、言ってくれちゃってんの?”と思うのはもっともなことで。でも主人公の男の視点でいたかったので、“ああ、もう恥ずかしい! 言うなよ、そんなこと!”って、読みながら突っ込んでました(笑)」

 デビュー5周年を迎えた昨年の暮れ、高橋さんは、少しそれに近いツッコミを自分にしていたのかもしれない。
「2015年はいろんな方に祝っていただいて、そういうなかで“5年間もやってきたんだぁ”みたいな気持ちになっちゃって、ちょっとだけ調子に乗っていたんです。そんな自分のことがだんだん嫌になってきて。“ただ好きな歌を歌っていただけなのに、何かを成し遂げたような顔してんじゃねぇぞ!”みたいな。自分を冷ややかな目で見るようになり、今までやってきたことをやめたり、今までやったことのないことを始めたりしたくなったんです」

 とはいえ、今までを否定するわけでなく、でもこれからを見据えないと、自分は価値のない人間になってしまう――その気持ちが最新アルバムのタイトルには如実に表れている。

「このなかでは、万人受けしない、ピンポイントな設定に絞った歌も書いてみようと。それはこれまでも、実は自分のなかで大事にしていたことだったんです」

 自分のことが嫌い、と叩きつけるように歌うナンバー『Mr. Complex Man』から始まるアルバムには、お母さんに抱っこされている赤ちゃんとの電車のなかでのやりとりなど、高橋さんだけのピンポイントな体験から生まれたものが多い。

「抱っこされている赤ちゃんが僕の方をじっと見たから、メガネきゅっきゅっとやる仕草をしたら、赤ちゃんが笑ったんです。でもお母さんは自分の背中の側にいる僕のことには気付かない。そのとき、面白いなって思ったんですね、抱きしめ合う体勢って。人の目は前にしか付いていないけど、抱きしめることで、2人で360度の世界を見ることができるんだなって」

『君の背景』というラブソングはそんなコアなシーンから生まれてきたという。そしてラストの一曲『BEATIFUL』は、自分と関わってくれている素敵な人々へと贈る歌――。

「ライブでも、“僕が元気にしてあげるからね!”と歌ったところで、結局、僕が元気にしてもらって帰ってくる。そんな素敵な人たちって、褒めても謙遜して、ひゅーって逃げるんですよ。それでも僕はそういう人たちをどうしても褒めたくて、悪あがきするうちに、この曲が出来てきたんです。自分は最低だとか、夢は叶わないとか、今って、上手な理由をつくってそんなことを証明しようとする人がたくさんいる気がする。僕はそこに楽曲で戦いを挑みたかったんです」

(取材・文=河村道子)

高橋 優

たかはし・ゆう●1983年、秋田県生まれ。2010年、『福笑い』が東京メトロCMソングとして大抜擢、『素晴らしき日常』でメジャーデビュー。楽曲に『陽はまた昇る』『さくらのうた』など、数多くのヒット曲を持つ。12月より全国ホール&アリーナツアー2016-2017「来し方行く末」がスタートする。

 

『ままならないから私とあなた』書影

紙『ままならないから私とあなた』

朝井リョウ 文藝春秋 1400円(税別)

高校時代から発明家として脚光を浴びる薫を近くで見て来た雪子。だが成長するに従い、効率ばかり重んじる薫と無駄なものにこそ人の温かみを感じる雪子の価値観は離れ──(表題作)。結婚式で見かけ、気になっていた女性。だが彼女は“レンタル友達”として出席していた(「レンタル世界」)。読者の価値観を揺さぶる2編。

※高橋 優さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ12月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 


アルバム『来し方行く末』

5thアルバム『シャンデリア』JK

高橋 優 ワーナーミュージック・ジャパン 期間生産限定版(CD&DVD)3900円(税別) 通常盤3000円(税別) 11月16日(水)発売
●シングル『明日はきっといい日になる』『さくらのうた』『産まれた理由』『光の破片』、初の楽曲提供作品『象』のセルフカバーほか、新曲7曲の全12曲を収録。シングル表題曲と並行し、自分に対するコンプレックスからつくっていったという楽曲はデビュー時を彷彿とさせながら、進化した高橋優の“今”を表している。

 



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