動きまわるキャラクターに作者自身びっくりさせられました
更新日:2013/12/4
全国の八雲ファンの皆さん、お待たせしました! 神永学の超人気スピリチュアル・ミステリー『心霊探偵八雲』シリーズの最新巻がついに発売された。前作から2年半を経て登場した『心霊探偵八雲9 救いの魂』は、ストーリーもキャラの魅力もますますパワーアップ。これぞ八雲!という魅力にあふれた作品に仕上がっている。
「もう2年半にもなるんですね。前作を書いてから今日まで、舞台版のシナリオを書いたり、新聞連載を始めたり、文庫化のための加筆作業をしたりとずっと『八雲』に関わっていました。決して怠けていたわけではないんですよ(笑)」
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サークル仲間と青木ヶ原樹海に肝試しに行き、他殺死体を発見してしまった女子大生の里奈。彼女は夜ごと携帯にかかってくる、死者からの電話に悩まされていた。一方、警視庁〈未解決事件特別捜査室〉に勤める石井と宮川は、強盗事件の関係者・蒼井秀明と対面する。「幽霊が見える」と自称する秀明は、すでに強盗犯人が死亡していると断言。果たして彼の霊能力は本物なのか? ミステリアスな2つの事件は、やがて八雲、晴香、後藤といったお馴染みのメンバーを巻きこみ、予想もつかない展開を見せてゆく。
「事件の概要さえ決めておけば、キャラクターが勝手に動きまわって解決まで導いてくれます。作者は夢中になってそれを追いかけてゆくという感じです。シリーズ初期は事前に細かなメモを作っていたんですが、今はキャラ任せでも大丈夫。『まさかこんな行動を取るなんて!』と作者自身びっくりさせられることもあるんです」
秀明は八雲の高校時代の同級生だった。霊を見ることは誰かを救うことにつながると主張する秀明に、かつての八雲は反感を覚える。そして秀明と再会した八雲は、死者の魂が見えるという自らの能力をあらためて問い直すことになる。
「秀明と向き合うことで、八雲は自分の過去に直面することになります。そして、自分が他人に受け入れられないのは、他人に心を閉ざしていたからじゃないか、ということに気づくんです。このシリーズは八雲という青年の成長物語。クライマックスを描くまでに、この部分はしっかりと描いておきたかった」
本作ではこれまで頼りなかった石井が、尊敬する後藤譲りの熱血ぶりを発揮。事件の解決に奔走する。人との出会いを通して、キャラクターが頼もしく成長してゆくのもこのシリーズの大きな魅力だろう。
「人間は出会いによって良くも悪くも変わります。僕自身たくさんの出会いによって人生が大きく変わった。このシリーズで描かれる事件には、さまざまな人の思いが交錯している。だからこそ関わったキャラクターたちも成長できるんです」
舞台になっている青木ヶ原樹海は、やりきれない絶望が渦巻く場所。圧倒的な負のパワーを前に、八雲たちは希望を見つけ出すことができるのか。
「読んだら前向きな気持ちになれる作品を書くことが、僕の仕事だと思っています。辛いことはあるけど『それでも希望を持とうよ』と言いたい。重たい事件を扱っても、希望のある結末にするよう心がけています」
『八雲』以外にもさまざまな人気作品を手がけている神永さんだが、やはりこのシリーズには格別な思い入れがあるという。
「デビュー前からつき合っているシリーズ。色んな経験を経たからこそ、とても大切なものに思えます。自分の分身のような作品ですね。最終章の展開はすでに浮かんでいる。これからも小細工なしで、直球勝負の全力投球で書いてゆきますよ」
来るべきラストに向けてさらなる加速を始めた『心霊探偵八雲』。スピーディで感動的な物語は、きっとあなたの心にも突き刺さるはずだ。
(取材・文=朝宮運河 写真=吉次史成)