8周年の『アイドルマスター シンデレラガールズ』、それぞれの想い⑥(依田芳乃編):高田憂希インタビュー

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公開日:2019/11/9

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『アイドルマスター シンデレラガールズ』のプロジェクトが始動したのは、2011年。今年でまる8年を迎える『シンデレラガールズ』は現在、東名阪の3都市で、それぞれ「Comical Pops!」「Funky Dancing!」「Growing Rock!」と異なるテーマを掲げたライブツアーを行っている。9月に開催された幕張公演では、ステージ上でパフォーマンスを繰り広げるアイドル(=キャスト)と、彼女たちを見守り、支え、盛り上げるプロデューサー(=ファン)が気持ちを通い合わせる光景を目撃し、改めて『シンデレラガールズ』のライブや楽曲が生み出す引力を実感した。今回も、7周年を機に実現した昨年の特集に続いて、自身が演じるアイドルとの信頼関係や、ライブへの想いを、3都市のライブのいずれかに出演するキャストに、熱く語ってもらった。第6回は、名古屋公演に出演する、依田芳乃役・高田憂希のインタビューをお届けする。

「よしのんをもっともっと知りたい!」という気持ちで、とにかく食らいついてきました

――『シンデレラガールズ』は今年で8周年になるわけですけど、ここまで3年間関わってきて、高田さんは『シンデレラガールズ』にどんな印象を持っていますか。

高田:ゲームが立ち上がってから8周年! もちろん、3年前に関わらせていただく前から、『アイドルマスター シンデレラガールズ』は本当にすごい存在だと感じています。実際に関わらせていただいて、3年間走り続けてきたんですけど、ほんとに応援してくださるプロデューサーの皆さんの熱量がすごいコンテンツなんだなと、入ってみて改めて感じました。それこそTwitterで「依田芳乃ちゃんを演じさせていただくことになりました」ってお知らせしたときに、フォロワーさんが一瞬で5,000人くらい増えて、「ええ~!?」みたいな(笑)。でも、8周年っていいですね、末広がりの8。これからどんどん『シンデレラガールズ』が大きくなっていくんじゃないかなと感じながら、少しでも自分が力添えできたらいいなと思います。

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――依田芳乃役は、オーディションだったんですか。

高田:オーディションでした。

――となると、「この役、高田さんになりました」っていう決定の瞬間があったわけですよね。

高田:ありました。でも私、よしのん(依田芳乃のこと)を受けに行ったわけではなくて、しゅがはさん(佐藤心)を受けたんですよ。そこで、「じゃあ他の役もやってみようか」と言っていただいて、依田芳乃ちゃんの原稿をいただきました。彼女の台詞は独特の言い回しで、最初「この子は、私にはちょっとできないかも」と思ったんです。生きてる速度が違うというか――私ってけっこう生き急いでるというか、早口だったりするので(笑)。だから、合格の連絡をいただいたときに、「あっ、しゅがはさん、いけたのかあ」と思っていたら「依田芳乃さんで」と言われて、「ええ~!?」みたいな(笑)。最初は、とにかく驚きました。

――ある意味、お芝居の面でも、高田さん自身のパーソナルなところからも、けっこう距離がある人だと思っていた、と。

高田:思っていました。どこか浮世離れしたところがあるなあ、と。

――彼女と向き合っていくうちに、どんな部分が見えてきたんですか。

高田:最初は、どこか人と違う時間を生きているような女の子だなあって思っていたんですけど。それも、「そうなるには理由があったんだな」と、触れていく中で感じることが多くて。それはたとえばよしのんが、鹿児島の離島という自分の同世代の子と触れ合う機会が少ない環境で、おばあちゃまとふたりで暮らしていたことを知ったり。それからプロデューサーさんに出会い、同世代のアイドルの女の子たちと触れ合いながら、今のよしのんの姿が見えるようになってきた気がします。

 おせんべいが好きだったり、ほら貝の真似をしてみたり、初めてのコンビニに目を輝かせたり、16歳の女の子らしいところがたくさんあるんだなあと、演じる中で感じました。その中で、自分がよしのんを神様だと崇める感じで接していては、よしのんには近づけないんだなと。日常的なことを楽しめるような女の子で、私と同じ感覚をたくさん持ってる女の子なんだなと、演じていく中で感じていけるようになってから、少しずつ近づけたのかなと思います。

――特にそう感じたのは、どういうセリフやシーンなんですか。

高田:「よしのんって何を食べてるんだろう?」って想像したときに、精進料理を食べて生活してたんじゃないかって思ったりしてたので(笑)。「おせんべい美味し~い」と食べてるシーンは、「似てるところがある」と感じました。

――すごくキャラが立っていて、特徴がはっきりしている人を演じることって、実際の機会としては多くないと思うんです。でも、そんな彼女と触れ合うことで、高田さん自身が役者として成長できたり、自分ができることが広がった感覚はあるんじゃないですか。

高田:その感覚はあります。今までに演じてきた役とは全然違うベクトルの子というか、こんなにゆったりおっとりと話すところもそうですし、特徴的な語尾があったりすることも初めてで。本当に、最初はどう表現していいのか――セリフが音になって聞こえてこない、という経験が初めてでした。台本を見て、文字を見て、「こう言ってるんだろうなあ」という想像できなかった子だったんですよ。だから、最初はめちゃめちゃ難しかったです。

――自分の声で再生されてるシーンがイメージできなかった。

高田:そうですね。だからオーディションで決まったあと、初収録の台本をもらったときに、「どうやって演じればいいんだろう?」とすごく悩みました。そこから「かんなぎって何?」「依り代って何?」と言葉の意味も調べて、自分の中にまったくないものを入れる作業をしていきました。ちなみに、よしのんは難しい言葉遣い、古(いにしえ)の言葉を使うところがあるんですけど、よしのんと付き合っていく中で、それはつまり「おせんべいが食べたいんだね」「プロデューサーに構ってほしいんだね」と、自分の中で少しずつ翻訳できるようになってきました。言葉だけに惑わされて、常に神のような雰囲気を出してしまいがちだったんですけど、「この子はそれだけではないよ」ということを、付き合っていく中で感じられるようになったことが成長だと思います。

――そこが『シンデレラガールズ』のすごいところだと思うんですけど、手元にある情報は動くアニメではなくてイラストとセリフ、じゃないですか。だけど、その人物の表情や着ているものから、彼女の背景に何があるかをしっかり読み取っているんですよね。

高田:最初はイラストや言葉だけなんですけど、その子の成長や背景を知っていくと、すごく嬉しいんです。新しいイラストが出るたびに、「こんな新しい一面もあるんだ」みたいなこともたくさんあって。常に、一緒に歩んでるような感覚があります。最初はあまりにもよしのんに近づけなくて泣いてましたけど(笑)、「よしのんをもっともっと知りたい!」という気持ちで、とにかく食らいついてきました。よしのんに会えてよかったし、嬉しいなって思います。

――依田芳乃としてお芝居をする、ステージに立って歌うとき、高田さんの中で設定している軸ってなんですか?

高田:よしのんは、かんなぎとして人に幸せを届けることを自分の主軸にして生きてきた女の子なんですけど、アイドルとしても人の幸せを願うことは変わらずそこに存在していて。人の幸せを願うということだけは、ずっと変わらずに生きてきた子なんです。なので、歌もライブも、本当に皆さんに見てもらって、楽しんでもらって、幸せになってもらえたら、それがよしのんのやりたいことだろうなあ、と思うので、それだけは常に念頭に置いてステージに立つようにしています。

――素晴らしく前向きなモチベーションですね。高田さん自身がステージに立つときに、依田芳乃と同じ気持ちで立つことで、しっかり彼女と重なるのである、という。

高田:よしのんは山や風や川といった、そういう場所がすごく似合う子だなと思っていて、ライブでもそれが背景に見えればいいなあと常に思ってるんです(笑)。すごくいい風が吹いてたらいいな、自然豊かな匂いがしてたらいいな、とか。激しめな曲でも、なるべく爽やかに踊っていたいし、清涼感あふれる感じが届いてほしいなあと思います。ひとりでも多くのプロデューサーさんが、「よしのんがいたな」と思ってくれたら嬉しいし、そういうパフォーマンスができるようにしたいです。

――彼女を演じていて、楽しいと感じるのはどういうところですか?

高田:よしのんを演じるのは常に楽しいです。彼女はほんとに自分と違う生き方をしていて、違う部分が本当に多いけど、私が声優を目指した最初のきっかけのひとつは、別の人を演じることができるからなんですね。よしのんはまさにそれなんです、自分にないものをたくさん持っていることも、自分の普段のしゃべり方とは違うゆったりとしたトーンで、いろんな幸せを皆さんに届けている瞬間も、全部が楽しいです。

よしのんには、「隠れいいところ」がいっぱいあります

――プロデューサーの皆さんにとっても、依田芳乃のいいところ、素敵なところ、かわいいところのイメージがあると思うんですけど、演じている高田さんにだけ見えていると思う、彼女のいいところって何だと思いますか。

高田:個人的には、片仮名を読むのが苦手なところがかわいいなと思います。彼女たちが歌う“Sunshine See May”という曲があるんですけど、その部分を一生懸命練習してるシーンがあって――かわいいですね(笑)。なんでもできちゃいそうなよしのんだけど、実はそういうところが苦手だったりします。あと、意外と擬音が多いところも好きです。かき氷を食べるときに「シャリシャリ」と言ったり――よしのん、本当にかわいいなあと思って。プロデューサーさんの裾をツンツン、裾を持ってキュッキュッとするところがあるんですけど、そのひとつひとつの動作もかわいくて。そういう小動物のような一面もあって、そこもすごくかわいいなと思います。

 他にも、プロデューサーさんからの愛情をすごくしっかり受け取るというか。「こう思ってるんですよね?」ということを、よしのんは笑顔で言うんですよね、「私のこと好きですよね?」みたいな(笑)。その自信にあふれているかわいらしい部分も好きです。

――いいところ、たくさん出てますね。

高田:そうなんですよ。よしのんには、「隠れいいところ」がいっぱいあります。髪のツヤツヤ感とか、回るときの髪も、何回見てもかわいいです(笑)。あと困り眉も、かわいいなって――よしのんは、演じているときも楽しいし、プロデューサーとしての視点で見るときも楽しいです。山紫水明(依田芳乃、藤原肇のユニット)で、肇さんとよしのんのふたりがMCをするシーンがあるんですけど。よしのんも気持ちが高ぶると実はおしゃべりで、留まるところを知らず、時間がめちゃめちゃ押してきちゃって、肇さんに「ちょっと、そろそろ終わりましょ」みたいに止められるシーンがあるんですよ(笑)。

――(笑)初めてシンデレラガールズのステージに立ったとき、どんなことを感じました?

高田:最初は福岡で、とても広い会場で立たせてもらったんですけど、プロデューサーたちの熱量や愛情に、毎回驚かされます。考え方が素敵な人がすごく多いな、と思うんです。毎回、YouTubeに20分くらいのライブのダイジェスト映像が上がるんですけど、コメントを見ると、その中にほんとに素敵な言葉があって。「ここに立っているアイドルひとりひとりが、誰かのP(プロデューサー)の担当であり、星であり、希望なんだなあって思うと泣けてくる」みたいなコメントがあったんですけど、「そのコメントに泣ける!」と思います。

――高田さんの中で思い入れの強い楽曲とその理由を教えてもらえますか。

高田:まず、“お願い!シンデレラ”を歌えたときは、「『シンデレラガールズ』になれた」と思いました(笑)。あとは、私が初めてよしのんとしてレコーディングに関わらせていただいたのが“Take me Take you”と“キミのそばでずっと”という曲なんですけど、よしのんとして初めて歌わせてもらったこと曲としての意味も大きいですし、“Take me Take you”は個人的に歌詞がよしのんっぽいなって思っていて。“Take me Take you”は、アイドルの「私、これからも成長していくので、見守っていてください」という思いが詰まった曲なんですけど、その歌詞がすごく前向きなんです。「見守っていてください」と引いてる感じではなくて、「見守っていてくれるよね」「必ず成長してみせる。もっと輝かしいアイドルになってみせるから、応援して」と言ってる感じがして、それがよしのんっぽくて好きだなと思います。ソロ曲の“祈りの花”も、思い入れがすごくありますし。

――“祈りの花”は、なんというかすさまじい曲ですよね。磁場がすごいというか、この曲のまわりだけ別のフィールドが展開してるような感じがあって。

高田:確かにそうですね。よしのんがアイドルというものに触れて、いろんな表情が見えるようになったけど、かんなぎであり依り代である部分が前面に出てるのが、“祈りの花”なのかなと思います。

――今年のライブでは、高田さんは名古屋公演に出演しますね。

高田:ナゴヤドームは去年も立たせていただいて、再び帰ってこられたことがほんとに嬉しいです。『アイドルマスター シンデレラガールズ』のライブって、アイドルの新しい魅力を発見する場だと思うんです。「歌ったことのない曲を、ライブで見せてくれるの?」みたいなこともありますから、そういう意味でも、きっとそれぞれのプロデューサーさんたちが推してるアイドルの、新しい魅力を見つけることができるライブになると思います。私としても、新しいチャレンジというか、今回は新しいよしのんを見せるライブになると思っているので、そういう意味でも、皆さんに楽しみにしていてほしいです!

――では最後に、ここまでともに歩んできた依田芳乃にかけたい言葉をお願いします。

高田:芳乃ちゃん、私がよしのんと歩むようになったのは2016年頃からだったので、約3年間ともに歩んでまいりましたね。よしのんがよく言う、手に手を取り携わって、ともに素敵な時間を過ごしましょうと声をかけてくれること、私はとっても素敵な言葉だし、嬉しいなと思っています。よしのんが言ってるあの言葉は、プロデューサーさんだけではなくて、高田憂希にも言ってくれているのだと毎回思いながら、言葉を紡がせてもらっています。今まで、いつもよしのんに手を引いてもらって歩んできた3年間だったなあ、と個人的には思っています。新しいこれからの時間は、私もともに手を取り、今度は少し引っ張っていけるようになりたいと思うので、これからも私とともに歩んでいってくれたら嬉しいです。

取材・文=清水大輔