『池袋ウエストゲートパーク』アニメ化記念、夢の「キング」対談・後編! 内山昂輝と窪塚洋介が語り合う、それぞれの声優観、役者観とは。

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更新日:2020/10/9

池袋ウエストゲートパーク

池袋ウエストゲートパーク
『池袋ウエストゲートパーク』 TOKYO MXほかにて毎週火曜24時30分より放送中。Amazon Prime Videoにて毎週火曜 24:15頃~地上波先行・見放題独占配信 (C)石田衣良/文藝春秋/IWGP製作委員会

 現在絶賛放映中のTVアニメ『池袋ウエストゲートパーク』の原作は、1998年から現在まで続く石田衣良の同名小説。東京・池袋を舞台にトラブルシューターの「マコト」が様々な事件を解決していくストリート系ハードボイルド・ストーリーだ。今回のアニメ版でGボーイズのトップ、「キング」ことタカシを演じた内山昂輝と、2000年のドラマ版でキングを演じた窪塚洋介の夢の対談が実現! 後編となる今回は、ふたりのキングにそれぞれの声優観、役者観を語りあってもらった。

 

――今回のアニメ版『IWGP』の役作りで心がけたことは?

内山:まず、原作の1巻を読んで、そこから受けたキャラクターの印象と、キャラクターデザインの雰囲気を合わせていった感じですね。それで収録の時に演出を受けて調整していくっていう。

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――1話を拝見しましたが、本当に原作のキングが蘇ったという印象でした。

内山:ありがとうございます。原作中のキングに関する描写を反映させられればいいなと思っていました。

――原作のキング、タカシというキャラクターは非現実的なほどカッコいい男ですが、そういうキャラクターを演じるプレッシャー、難しさはないですか?

窪塚:僕の場合は異端のやり方だったんで、そっちのプレッシャーはあまりなかったです。ある意味、逃げたんですよね。ストレートである、正統派であるってことから退いたんです。

内山:カッコいいキャラをカッコよくやろうとしたら、逆にヤバイんですよね。いろんなことが積み重なって、それが結果としてカッコよく見えるのが理想で。声の場合、いわゆるアニメ的なカッコいい声の出し方ってあんまり難しくないと思うんですけど、いい音を出そうとするのはむしろ危ない道だと僕は思っていて。

窪塚:へぇー。

内山:声だけじゃなく、キャラクターの振る舞いや映像やセリフやそれら全てと相まってカッコいいと思えるものが、たぶんいい形なんじゃないかなって思います。カッコいいキャラクターだからカッコいい声を出すというのは、まずは忘れなきゃいけない先入観だなって思います。

池袋ウエストゲートパーク

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カッコいいキャラクターだからカッコいい声を出すってていうのは、まずは忘れなきゃいけない先入観だと思う(内山)

――アニメ版『IWGP』の第1話を観たファンはきっとお二人の演じたキングの違い、コントラストに驚くと思います。

内山:やっぱりそこは世代にもよると思うんですけど……僕は今30ですけど、例えば僕より上の方々はきっとドラマ版のイメージが強いでしょうし、最初はまずそれには勝てないだろうなって思っていて(笑)。

窪塚:ただそこは、何だろう、同じ競技じゃないっていうか。

内山:はいはい。

窪塚:例えるなら、僕がやっていたのはサッカーだけど、内山さんは野球をやってるから、サッカーと野球で比べるってものじゃないよなっていう(笑)。僕はアニメを観て、改めてそう思ったんですよ。そこは勝ち負けじゃないっていうか。もちろん観ている人は自由に観るし、好き勝手に感想を言ってくるんですけどね。こっちが正しいことをしていてもそうだし、逆にこっちが間違ったことをしていても……例えば泥酔しながらインスタライブをやっていても(笑)、どっちにしても言ってくるんで。

内山:インスタライブの映像、少し観ました(笑)。

窪塚:観たんだ、それは間違った時間の使い方だね(笑)。

内山:(笑)。

窪塚:そう、だから観た人に何を言われようとも、今回のアニメ版は正統派の『IWGP』なんだよ、ってことなんじゃないですかね。僕がやったことでパラレル・ワールド版になってしまったドラマとは違うよっていう(笑)。

内山:(笑)視聴者や観客の意見は気になりますか?

窪塚:『IWGP』をやっていた当時は気にしていたけど……今も気にならないと言ったら嘘になるけど、それよりももっと大事なことがあると思ってます。自分が納得できるようにやるとか、チームで納得できるものを作ることのほうが、誰かの意見より大事だってことがすごく身に染みたんで、テレビドラマから遠ざかったんです。やっぱり、テレビドラマって途中で普通に話を変えるから。

内山:やっぱりそこは視聴率でってことですか?

窪塚:うん、視聴率ですね。人気のある役は前に出てくるし、人気のないキャラクターは途中で死んだり。そういう作り方にすごく疑問を感じた時期があって、「俺はこっちじゃないな」って。もちろん全てのドラマがそうじゃないですけどね。何かこう、そこに怖気づきたくないっていうのが強くあったので、映画、舞台で勝負したいって思うようになったんです。

内山:僕はどうだろう……それこそ10年前、20歳くらいの頃はやっぱり、良い作品を作りたいとか、自分がお客さんとして観た時に最高だと思える作品に関わりたいと思って、それしか考えていなかったんですけど、20歳から30歳までの10年間で、作品が売れないとダメなんだっていうことも同時にすごく味わったんです。アニメ業界のビジネスも年々変わってきているんですけど、やっぱりどこかで儲からないと、続けたい作品だとしてもその作品は終わるし、監督や声優や関わったスタッフが評価されにくいというか、業界で発見されにくいです。とても優れた作品ができたとしても、そこで途切れてしまう、ヒットを出さないことにはいろいろなことが続かないというか。クリエイティブが一番だっていう思いが失われそうになってしまった10年間でもあって……今悩んでいるところなんです。

窪塚:僕の場合はそういう葛藤を持つ前にフェイドアウトしてしまった感もあるし。多分、小栗(旬)みたいな感じになっていたら、アドバイスみたいなことも言えたかもしれないけど。内山さんが言っていることはすごくわかるし、実感としてももちろんあるけど、それを言っていい場所に自分がいない気もするっていう(笑)。ただやっぱり、いずれは自分なりのバランスがそれでも自然と取れてくると思う。僕は……これまでもいろんなことがあったけれど、今の自分が一番いいって思えるようになったし。その間には「マジで?」って思うこともあったし、「え、俺なんか入院してない?」とか(笑)。

内山:(笑)。

窪塚:全然仕事がない時期もあったし。今の新型コロナウィルスもそうなんですけどね。「俺この3ヶ月、1秒も仕事してないんですけど」っていう。でもなんか、今の自分を外から評価しなくなったんです。今の自分はこれだけ金を稼いでるとか、これだけ有名だというよりも、自分の満足感を常に基準にしているから、そういう意味で去年の自分に負けたことはないと思ってるんです。そう考えれば、時代の波やサイクルがあったりした時に、また面白く国内でも仕事をできることがあるかもしれないし、あわよくば海外も進出しようとしているところもあるから。そうなったら、今までとは全く違うデカいウェーヴを体感できるんじゃないかって。

内山:それは絶対にそうですよね。英語の勉強をしているんですか?

窪塚:多少(笑)。ここでじゃあ英語で対談しましょうか、ってなったらそれは無理ですけど。

内山:それに、英語で演技をするとなったら全然違いますよね。

窪塚:全然違いますね。そこはすごいハードルです。例えば……声優さんって現場にセリフを覚えて入るの?

内山:いや、覚えないですね。すぐそばに台本を持ちながらです。

窪塚:僕らの場合は覚えて行くじゃないですか。それが英語だと、とりあえず頭から最後まで暗記して行くしかないんだけど、「ごめん、ここだけ変えて」って言われた時のパニック具合(笑)。

内山:当日言われるんですね(笑)。

窪塚:そうなんです。言葉を意識しているうちは、芝居がおろそかになるし、そのジレンマがすごかったですね。『GIRI/HAJI』(英BBCのドラマ)とか、まさにそういう現場で。本当に楽しい作品だったんですけどね。でもやっぱり僕は日本語でやる国内の芝居が一番得意だなって。

池袋ウエストゲートパーク

ハマった役ほど、役が自分に混ざってくるんです。その役をやる前の自分とはもう違う人間になるわけですから、運命が変わるじゃないですか。(窪塚)

――そういう窪塚さんのキャリアの中でキングという役はどういう意味を持っていますか?

窪塚:なんだろう、ペコにしてもそうだけど、その時にやった役に導かれて、新しい自分になるというか……好きになってハマった役ほど役が自分と混ざってくるんです。そうなると、その役をやる前の自分とはもう違う人間になるわけですから、運命が変わってくるじゃないですか。で、今度はその役柄が呼び込んでくる新たな仕事があって、それがまた自分に混ざり合って……それを繰り返してここまで来た感覚です。

――役が自分を作る、という感覚は内山さんにもありますか?

内山:うーん、どうなんだろう……声優の仕事って毎日毎日違う作品をやって、すごく細切れに仕事をしていくんです。

窪塚:うんうん。

内山:午前中から、昼過ぎまでに1本録って、夕方はまた違う作品に行くのが普通なので、キャラクターにどっぷり浸かるっていう感覚が俳優さんより薄い感じがあります。逆に切り替えないと仕事にならないというか。朝と夕方で、キャラクターも作品世界も全く変わってしまうので。

窪塚:そうだよね。

――切り替えるコツってあるんですか?

内山:もうそんなことも考えなくなりました(笑)。

窪塚:無我の境地みたいな?

内山:無我と言えば無我かもしれないですね。

窪塚:僕はそれができなくて、掛け持ちをしないようになりましたね。

内山:演じる側って、作品に対して権限がないじゃないですか。そういうのって考えますか?

窪塚:僕の場合は、そのフラストレーションで音楽を始めたんです。

内山:ああ、なるほど。

窪塚:そっちで満たされるようになって、バランスが取れて、芝居では「俺はコマなんで」って言えるようになったというか。言いたいことは音楽で言えるから。

――ドラマから20年、原作は未だに新刊が出続けて愛されていますが、『IWGP』の普遍的な魅力ってなんだと思いますか?

窪塚:やっぱり時代背景を常に織り込んでいるのが魅力なんじゃないですかね。

内山:ええ、時事ネタというか。アニメ版も結構そこは拾ってきています。最近の話題、動画投稿者のエピソードとか、外国人労働者の問題など、社会問題も多く扱われているので。

――池袋の街自体はこの20年で様変わりしました。

窪塚:時事ネタということで言えば、ドラマ版はやっぱりあの時代、20年前の池袋でしかありえない話なんですよね。コギャル、チーマーとか、今の子たちは全然知らない話かもしれないし。そう考えると石田衣良さんが時事ネタを常にアップデートして書かれているから、こうやってアニメ化したいっていう人も現れるんじゃないかと。それが色褪せないってことなんじゃないかな。アニメ版の第一話を拝見させてもらって、「ああ、池袋の街って今はこんな風になってるんだ」って。

内山:池袋、最近も行きますか?

窪塚:いや、もう20年くらい行ってないですね。ドラマの打ち上げ以来、行ってないんじゃないかな(笑)。

内山:はははは!

窪塚:あ、取材で1回くらい行ったかも。あとライブでやった時か。やっぱり、あのドラマを撮っていた時の池袋のイメージが特別なものとして記憶されているから、その後に行っても変に感慨深いとかはむしろないですね。あの時のあの池袋のあの時間が永遠にあるっていうほうがエモい、俺にとっては。

――池袋の街で窪塚さんが一番思い出に残っているのは?

窪塚:いろいろありますけど、撮影の打ち上げをやった時に、僕と全く同じキングの格好をした子が、西口公園に一人ぽつんと立っていたっていう光景ですかね。僕らがそこにいるのも知らなかったと思うんだけど、キングと同じ髪型、同じ服装でとにかくそこに来たかったんでしょうね。

――内山さんのキングに期待するものは?

窪塚:僕ができなかったキング、ですかね。抑えた芝居というか。1話を観た段階で、「ああ、これは俺には無理だったな」って思いましたけど(笑)。

内山:(笑)。

――内山さんは、全話撮り終えてみて、キングを自分のものにできた実感はありますか?

内山:どうだろう……キングはあまり喋らない回もあるんですよね。もともと寡黙だし、後ろにどんと控えてるキャラですけど、アニメでそうなるとキャストの仕事は少ないっていう(笑)。まあこればっかりは、自分でも完成した映像を観てみて、また、視聴者の方に届いて、どう受け止められたのかを知るまでは、自分自身、どういう仕事だったのかは理解できないかもしれないです……窪塚さんは演じる時って、声を定めますか?

窪塚:本当はそうした方がいいのかなって思うことがありましたけど……例えばレゲエをやるにしても、レゲエ・アーティストってレゲエっぽい声を出そうとして意識してやられる人も多いんですね。でも僕はそれに抵抗があって、なるようになった自分の声でいいやって。役者としての声もそういう意識でやっているかもしれない。

内山:こういうキャラクターだから、それっぽい声を出そうというのは無しにして。

窪塚:うん。もしびっくりする芝居で素っ頓狂な声が出てしまったら、それがそいつのナチュラルな声なんだろうなと。

内山:うんうん。

窪塚:キングの時は、キャラクターとしてちょっとアホっぽい喋り方をしようとは考えましたけど……だから今は、一番照れるんですよね。『IWGP』を観返すのが一番恥ずかしい。この時の自分、背伸びしてるな……って思うから。自分から一番距離のあるキャラクターだったから、無理している感があるんですよね。

内山:自分とキャラの距離感という意味では、アニメの場合はファンタジー世界の作品も多いし、等身大のキャラクターってあんまりいないので、そもそも距離感では測りにくいんですよね。演じる役柄の年齢も様々ですし、30になっても全然高校生の役もやるわけで(笑)。

窪塚:でも、声だったら全然やれるんじゃないの?

内山:やれるんですけど、小さい時から仕事をしていたおかげで、もっと若い頃にリアルタイムで10代の役もやっているので、その声と現在とではやっぱり質感が全然違うんですよね。そのギャップは年々大きくなっていて、同じ役をやってもどんどんリアルじゃなくなってるというか。年齢って意識されますか?

窪塚:ただの数字だな、とは思うけど……多少は、子供のいる役や夫役が来たりするようにはなったけど、自分自身はあまり意識しないかな。自分が意識すると余計そうなってしまうっていうか。流石に今高校生の役が来たらちょっと照れるけど。

内山:でも、ありかもしれませんよね。

窪塚:うん、多分ね。あと、声だったら俺、全然アリだと思うよ。

内山:アリだと思います? どうしても自然に聴こえないと思っちゃうんですよね……。

窪塚:いや、ちゃんと成立しているよ。だって今、目を閉じて内山さんの声を聞いていたら、高校生の情景だって思い浮かべることができるし。

内山:そうですかね……。

――では最後に、アニメ版『IWGP』を観るファンにメッセージを。

内山:視聴者の方の年齢によってイメージや見方は変わってくるかと思うんですが、原作小説からドラマ、舞台と様々な形で表現されてきた『IWGP』を、この2020年にアニメ化したらどうなるかということにチャレンジした作品です。今の視聴者たちに届く、現代ならではの『IWGP』になっていると思うので、ぜひ観てください!

窪塚:僕はアニメ版には王道、正統派であってほしいっていう気持ちがありました。ドラマ版はむしろスピンオフみたいな感じだったので、そのドラマ版をなぞってくるならやらないほうがいいんじゃないって。今回のアニメ版『IWGP』は、まさに原作を受け継いだ正統派のアニメになっていると思います。そういう意味でも、ドラマ版との違いも楽しんでほしいですね。

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取材・文=粉川しの  写真=北島明(SPUTNIK)
ヘアメイク=福島加奈子(内山)、橋本孝裕(窪塚)