勝地涼「分校に流れるやさしい空気は、僕らの“先生”が生みだした本物の関係性」

あの人と本の話 and more

更新日:2013/12/19

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『北のカナリアたち』で、20年もの間、抱え続けてきた罪悪感を胸にかつての先生に再会する青年を演じた勝地涼さん。日本を代表する女優・吉永小百合さんとの初共演に、初めはかなり緊張したというけれど……。

映画『北のカナリアたち』の台本を読んだ時、年月が経っても変わらない、先生と生徒の間に流れる愛情を改めて気付き、あたたかな気持ちになったと話す勝地涼さん。

「本作は物語としてもすごく面白くて。
でも撮影が始まると、さらに面白く、
楽しくなっていったんです」

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20年後の分校の子どもたちをともに演じたのは、これまで共演も多く、今回も互いのキーパーソン役となった宮崎あおいをはじめ、森山未来、松田龍平、小池栄子、満島ひかりという同年代メンバー。みんなで一緒にごはんを食べたり、しゃべったり。ロケ中は同窓会さながらの楽しさだったよう。そのなかに、すっと溶け込むのが……。

「僕らの先生、吉永小百合さん!
雲の上の存在だったんですけど、
こちらが緊張してしまうことをわかったうえで、
ちゃんと接してくださるんです。
6人で食事している時も“ここ、いい?”って、
すっとやって来ては、昔の映画界の話など、
興味深いことを楽しく話してくださる。
いつの間にか、勝手に抱いていた緊張感が
ほぐされていたんです」

それは自分たちの20年前を演じた子役の子どもたちにとっても、同じだったのでは……と語る、勝地さん。

「歌っている時も、遊んでいる時も、
みんな全然違う表情、芝居なんです。
きっと吉永さんは、ひとりひとりの子どもたちと、
役を越えたところできちんと接し、
それぞれの特徴をしっかり
掴んでいらっしゃったのではないかと。
あの分校に流れるやさしい空気は、
吉永さんがつくった関係性そのものなんだと思います。
撮影のなかでつくられていった、そんなあたたかさが、
スクリーンにはいっぱいに現れています」

(取材・文=河村道子 撮影=山口宏之)
 

勝地 涼

かつぢ・りょう●1986年、東京都生まれ。2005年『亡国のイージス』で日本アカデミー賞新人賞を受賞。主な出演作に、映画『幸福な食卓』、『少年メリケンサック』、『阪急電車』、『小川の辺』、ドラマ『コドモ警察』など多数。映画『遺体〜明日への十日間〜』(君塚良一監督)が2013年3月公開予定。
ヘアメイク=小口あづさ(Nanan) スタイリング=赤坂孝行

 

紙『地を這う祈り』

石井光太 徳間書店 1680円

道端で死んでいく少女売春婦、シンナーに溺れるストリートチルドレン……15年にわたる海外取材で撮りためた数万点の中から厳選された写真。その衝撃的な現実とともに、突きつけられるのは、なぜ彼らはその状況にいて、何を思って暮らしているのかということ。問題作を連発する石井光太の、ひとつの集大成的一冊。

※勝地 涼さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ12月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『北のカナリアたち』

監督/阪本順治 撮影/木村大作 原案/湊 かなえ『往復書簡』(幻冬舎文庫) 脚本/那須真知子 音楽/川井郁子 出演/吉永小百合、柴田恭兵、仲村トオル、森山未來、満島ひかり、勝地 涼、宮﨑あおい、小池栄子、松田龍平、里見浩太朗ほか 配給/東映 11月3日(土・祝)より全国公開。
●北の離島で、児童6人の分校の教師をしていた川島はる。彼女は、合唱を通して教え子たちの心を照らしていく。だが、ある悲しい事件により、はるは姿を消す。彼女が語った衝撃の真実とは。
(c) 2012『北のカナリアたち』製作委員会