肥満や老眼から始まる恋も!? 夢見るオーバー30のための恋愛マンガ

マンガ

更新日:2012/11/29

 現実世界での晩婚化にともない、女性マンガの世界でもここ数年アラサー、30歳以上の恋愛・結婚をテーマにした作品が一気に増えている。だが、ひと口にオーバー30の恋愛物語と言ってもテーマはさまざま。作品によって恋愛観はかなり違う。

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 『娚の一生』(小学館)で30代の女性と50代の男性の恋を描いて話題を呼んだ西炯子は、現在『姉の結婚』(小学館)でも30代後半女性を主人公に据えている。『姉の結婚』は結婚しているかつての同級生との不倫ものということで前作とやや切り口は異なるが、両作に共通するのは恋愛に対するコンプレックス。『娚の一生』でも『姉の結婚』でも、恋愛にちょっと苦手意識や疲れを感じている女性が主人公となっている。

 そんな彼女たちの前に現れるのが、ひとクセある大人の男性。彼らのちょっと強引なアプローチに振り回されつつ、恋に落ちていく。大人の恋らしく、肉体関係などもあっけらかんと描かれるが、基本路線は風変わりな王子様が遅れてきた春を連れてきてくれるという、一種のシンデレラストーリーになっているのが特徴だ。王子様が自分を迎えに来る物語は、大人になってもやはり女性の憧れなのかも。

 王子様こそ出てこないが、やはり『りぼん』(集英社)を彷彿とさせる少女マンガ的ドリームを大人の女子に見せてくれるのが『おひとり様物語』(谷川史子/講談社)。“おひとり様”という結婚前(かつ結婚を意識する年齢)の女性を主人公にした、1話完結のオムニバスシリーズである本作は、いわば恋の特別さを思い出させる物語になっている。

 33歳の女性が21歳のバイトくんに密かに恋心を抱くお話や、恋愛ご無沙汰の28歳女性が母校の甲子園出場をきっかけに初恋の相手に再会するエピソードなど、うまくいく話もある一方、意中の相手と付き合えずに終わる話も多いのがポイント。大人になると付き合うこと自体がカジュアルになる分、若いときほど「この人は絶対特別!」という情熱もなくなっていく。うまくいかなくてもなお心を揺らし、前向きにさせてくれる恋模様を描く『おひとり様物語』は、大人に特別な恋を思い出させてくれるのだ。いくつになっても少女のころのような新鮮な気持ちに戻れるのは、オーバー30にとってもやっぱり魅力的!

 年齢を忘れさせるような物語が多い一方で、年齢を重ねることを明るく受け入れるような作品が『君の天井は僕の床』(鴨居まさね/集英社)。40代のデザイナー、“トリさん”こと鳥田まりと、同じく40代の本間さんのじれったい恋をはじめ、アラサー、アラフォーの日常と恋愛模様を描いた作品だが、第1話の冒頭からしてすごい。いきなりトリさんが老眼鏡を買った話から始まるのだ。ほかにもアラサー女子の肥満と高脂血症の話題から恋愛につながるエピソードや、アラフォー新婚夫婦のセックスレスの話があったりと、加齢に伴う現実問題がしっかり描かれている。

 だが、重い年齢の話かというと、どれもどこか明るい雰囲気。年を重ねることを特別なこと、つらいこととして描くのでなく、当たり前のこととして受け入れて、ほのぼのとした恋愛物語に仕上げている。加齢を自然に受け入れるように、30歳、40歳になったからこその恋愛観や人生の楽しみかたを教えてくれる作品だ。

 「若いころのように」というアプローチもあれば、「年齢を重ねたからこそ」という物語もあるオーバー30のための恋愛マンガ。その楽しみの幅は、若いころよりずっと広いのかも!?