楽しい老後の秘訣は自虐にあり!? 話題の『シルバー川柳』

暮らし

公開日:2012/11/28

 「LED使い切るまでない寿命」

 この抜群のインパクトで、今テレビやネットでも話題になっているものがある。それが「シルバー川柳」だ。今年で12回目を迎える「シルバー川柳」は、「社団法人全国有料老人ホーム協会」が毎年敬老の日に向けて募集するもの。そして、今年も9月10日に応募総数9353作品の中から「シルバー川柳2012」の入選作品が発表された。

advertisement

 さらに、今年は2011年と2012年のシルバー川柳傑作選を集めた『シルバー川柳 誕生日ローソク吹いて立ちくらみ』(社団法人全国有料老人ホーム協会、ポプラ社編集部/ポプラ社)まで出版されるほど。テリー伊藤も大絶賛する本書の中には「介護してふたたび芽生える夫婦愛」といったほっこりするものもあるが、実は大半が自虐ネタなのだ。

 まずは、老後の日常をよく表した作品から。「立ち上がり用事忘れてまた座る」や「忘れ物口で唱えて取りに行き」という川柳からは、おじいちゃんおばあちゃんが忘れ物や捜し物をするときに口で唱えながらウロウロしている光景が目に浮かぶ。思わず自分の祖父母を思い浮かべてクスっと笑ってしまう人もいるのでは?

 そして「目覚ましのベルはまだかと起きて待つ」や「起きたけど寝るまでとくに用もなし」といったように、シニア世代の1日を表したものまで。この感覚は定年を迎え、老後を過ごすようになったからこそ分かるものだろう。20代や30代の若輩者なら、2度寝することもできず、1日中することがないなんて寂しいとネガティブに考えてしまいそう。でも、人生の大先輩たちはそんな現状さえ笑いに変えてしまうのだ。

 また、「湯加減をしょっちゅう聞くなわしゃ無事だ」「若作り席をゆずられムダを知り」、「入場料顔見て即座に割り引かれ」のように、自分ではまだまだ若いと思っていても、周りの人はそう見てくれないということも。でも、今ではシルバー世代や白髪の老人でも、ピンピンしている人が多い。気遣いも大切だが、まだまだ元気な彼らの背中を押してあげることもときには必要なのかもしれない。

 なかには「無農薬こだわりながら薬漬け」「延命は不要と書いて医者通い」「未練ない言うが地震で先に逃げ」といった自虐ネタも。やはりいくつになっても死は怖いもの。歳を重ねるということは、そんな未来が近づくということと同じなのだ。しかし、そんな辛い現実や寂しい生活も、自らネタにして笑い飛ばすことで、楽しく前に進もうとしている。その強さこそ、楽しく老後を過ごすための秘訣なのだろう。シルバー世代にはもちろん、こんなふうに、明るく歳を重ねていけたらと若い世代にも希望をもたせてくれるだろう。