話題の「裏サンデー」、コミック第1弾は“裏バクマン”!?

マンガ

更新日:2012/11/27

 コミックが売れなかったら、赤字で存続できない! そんな衝撃的なニュースで大きな話題となった『裏サンデー』。

 そもそも『裏サンデー』は『週刊少年サンデー』でおなじみの小学館が運営しているWebコミックサイト。参加作家は『ワンパンマン』のONEや『ヒトクイ』のMITAなど、ネット上でWebコミックを発表し、話題を集めたマンガ家たちである。掲載されているマンガが無料で読めることはもちろん、平日のほぼ毎日なにかしらの作品の新作がアップされ、さらにそれらの作品にコメントをつけることができる「読者参加型システム」を搭載している。

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 11月16日、そんな『裏サンデー』の命運を背負い、コミック第1弾として3作品の単行本が刊行された。この実験的なプロジェクトの先陣を切ったラインナップのなかでも、実験的すぎると話題を集めているのが『ゼクレアトル~神マンガ戦記~』(阿久井真:イラスト、戸塚たすく:原著/小学館)である。主人公がマンガの中でマンガの主人公になるという、いわゆるメタ的な要素が満載な作品なのだ。

 中学1年生の時に自分は平凡的なんだと悟った主人公・カン太は中学2年生の春、マンガ監督のゼクレアトルに自分がマンガの主人公であるという衝撃的な事実を告げられる。というのも、この世界では、「仙人」と呼ばれる漫画好きな神様たちが読む「仙人サンデー」なるものがあり、ゼクレアトルはカン太の日常をマンガ化して連載しているという。そのためカン太には、曲がり角で女の子とぶつかりそうになったり、万引きの逃走シーンに出くわしたり、バスケ部に勧誘されたりと、さまざまな主人公的イベントが発生するようになるのだが……。

 カン太はバスケ部に勧誘されても普通に断るなど、主人公的イベントに対して平凡な対応をするので、ゼクレアトルは「お前は『スラムダンク』を1話目で終わらせた!!」「イベントの対応にセンスが感じられない。華もない。熱もない。笑いもない」とダメ出しをする。また、カン太の成長が描かれた熱い話の次は、「さっぱり系を目指すんだ」という言葉の後に「位置づけはいわゆる『通常回』な。だから今回は変に成長とかすんなよ。読者ちょっと今、そういうのお腹いっぱいだから」とカン太に告げる。さらに4話目では、コミックス1巻分の話ができたとして、「ついに最大の山場がきた」とゼクレアトルは話す。「コミックスは全ての仙人が読むからな」と言った後、「コミックスの反響こそが真の人気投票!!」とぶっちゃける。その様子はもう裏『バクマン。』(小畑 健 :著、大場つぐみ:原著/集英社)と言ってもいいほど。

 『ゼクレアトル~神マンガ戦記~』の魅力のひとつは、マンガを読んでいる自分と作中でマンガを読んでいるキャラたちとのシンクロ率がハンパじゃないところ。作中で登場する雑誌は仙人界のマンガ雑誌「仙人サンデー」とぼかしてはいるものの、この仙人とは自分自身のことではないかと思わせる仕掛け(2話目がはじまるとき、ゼクレアトルがカン太に「ここから2話目な。」と告げるなど)が多い。そのため、自分たちが読まなくなったら、この主人公とその世界は消えてしまうのではないかという感情が芽生えてきてしまうのである。なんたる外道な戦法! そんなことをされては「打ち切り」にならないよう、マンガを読んでアンケートに答え、コミックスを買っていく努力をしてしまうではないか。

 ちなみに、コミックス発売から約1週間が経ち、この作品が連載されている『裏サンデー』は無事存続することが決定した模様。いろんな意味で目が離せない『ゼクレアトル~神マンガ戦記~』。主人公とその世界を、本当の意味で救うヒーローは、あなたなのかもしれない。