いくえみ女子に学ぶ、モテ女子と非モテ女子の差とは?

恋愛・結婚

更新日:2012/12/3

 長澤まさみと岡田将生のW主演で映画化されることが発表され、話題となった『潔く柔く』(いくえみ綾/集英社)。作者であるいくえみ綾の作品では、初の映像化と言うことで注目が集まっているようだ。

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 いくえみ綾と言えば、魅力的な男性キャラに定評がある。彼女の作品に登場する男性キャラはあっさり系の塩顔男子で、王子様のように遠い存在ではなく身近で安心感を与えてくれると女性の間で大人気。そんな彼らには“いくえみ男子”という名前までついてしまうほど。でも、実は女性キャラにも女子の心を掴んで離さない魅力があるのだ。

 メインヒロインで、長澤まさみが今回演じることとなるカンナは、学生時代から校内だけでなく校外の男子からも人気だったモテ女。もちろん多くの女子たちがカンナに憧れるだろう。でも、カンナ以外の女の子たちを支持する声も、それ以上に多いのだ。カンナ以外の女の子たちは、どちらかというとみんな非モテ女子。だからこそ、恋愛に悩む女性たちにとっては、共感できることがたくさんある。

 たとえば、高校からカンナとその幼なじみ・ハルタとクラスメイトになった朝美。フラれたけど好きだったハルタを亡くし、ずっと仲良しだった幼馴染の真山もカンナを好きになって離れていく。朝美はそんなやるせなさやどこにも持っていけない気持ちを抱えながら、彼らが好きだったカンナや周り全てを悪者にすることで自分を保とうとしていた。全部カンナのせいにして、彼女にペンキをぶっかけたりもする。カンナだけが悪いわけじゃないと分かっていても、やっぱり許せないし、そうすることでしか気持ちが抑えきれない。恋のライバルに対して優しくなれないのは、仕方のないことだと思うし、恋をすれば誰もがこんな思いを抱えたことがあるのではないだろうか?

 また、大学で出会い真山のことを好きになった亜衣は、真山とセックスする。でも、真山は寝言で「ごめんカンナ」と言うし、その後も「利用した」と言われ、ケータイの番号も消していいとまで言われてしまうのだ。それでも、カンナに会いに行く真山に対して「あたしも行っていい?」と言う。「意味わかんない」と言われても「あっは! わっかんないのはあたしの方だよ~~」なんて笑っていたけど、最後には「バカにしないでよね……」と本音を言う。本当は決して強くなんかないけど、好きという気持ちと伝えたい思いがあるからまっすぐ相手にぶつかっていける。そんなところに惹かれた人もいるだろう。

 そして、女の子の黒い部分をもっともストレートに表している人物が大学時代にカンナと友達になった百加だ。彼女の好きな人は、高校時代からカンナに憧れていた。だから、彼の喜ぶ顔を見たくてついいろいろとアドバイスしたり、カンナの情報を流してあげてしまう。でも、2人がくっつくのは嫌だから、自分の目の届く範囲に2人を入れておこうとする。こんな相反する思いも、恋する女の子なら当然の悩みかもしれない。仲良しの友だちと好きな人。カンナのことを邪魔だと思うこともあるし、実際に口にしてしまうけど、本当はどちらも大切で、なくしたくない。そんなふうにぐるぐる悩み、壁にぶつかったり自己嫌悪しながら前に進もうとする百加を自分と重ね合わせ、応援してしまった人もいるのではないだろうか?

 そう、いくえみ綾の作品は、ファンタジーじゃないからいいのだ。出てくる男の子も女の子も、人間臭くて弱くて、でも必死に変わろう、強くなろうとしている。女の子なら誰もがもっているようなダメなところ、素直になれなくて意地を張ったりごまかしたりするところやドロドロした部分もしっかりと描いている。それでも嫌な感じがせず、むしろ魅力的に見えるのは、そんな自分の弱さも受け入れ、フラれてもめげずに、好きだというまっすぐな気持ちを貫いているから。そんないくえみ女子になれば、たくさんの人にはモテなくても、きっと素敵な人にめぐり合えるはず!