三浦しをん&大根仁が語る、男同士の距離感

更新日:2013/1/7

 1月11日より、テレビ東京系ドラマ24で松田龍平&瑛太主演で実写ドラマがスタートする『まほろ駅前番外地』。原作の世界観はそのままに、ドラマオリジナルのストーリーを盛り込んだ作品になっている。これを記念して、『ダ・ヴィンチ』2月号では、原作者の三浦しをんと監督&脚本を手がけた大根仁との豪華対談が実現した。

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三浦 今回、映像を観ていてすごく楽しかったのは、小説には書いていない、二人の毎日の暮らしぶり。こういうアホなことやって暮らしてるんだろうなあ、みたいな感じがよかったです。
大根 原作にある二人の関係性とかキャラクターのルールをある程度守っていれば、ちょっと遊んでも大丈夫かなと思って。三浦さんの作るキャラクターには、そういう「余白」がちゃんとある。
三浦 うれしいです。読んだ方が「この人たち、ほかの時はどうしてるのかな」とか「きっとこんな習慣があるに違いない」とか、自分が読んだり見たりする時でもいろいろ想像できる登場人物のほうが好きなんです。小説に書いたのは多田と行天の人生のほんの一部。人生って、特別な一日ばっかりではなくて、それ以外のどんどん忘れていっちゃうような、でも楽しかったり、ひどかったりする毎日がある。それを記憶として定着したら、こういう軽やかな日常になるのかなって思いました。
大根 うん、原作を読んで、こいつらは普段ぼんやりとした日とか、なんでもない日を過ごしているんだろうなと思ったので、そういうところを撮りたかった。特に男二人が一緒に暮らしている独特のムードは大事にしたいなと思いました。俺も男二人で暮らしたことがあるんですけど、そのなんともいえない感じは意識しましたね。
三浦 兄弟ともまた違うんですか。
大根 違いますね。まあ一緒に住むくらいだから気が合うし、好きなんですけど、だんだん絶妙な関係になっていくんですよねえ。言葉も少なくなっていくし。便利軒の事務所の空間は、その関係性を表現するためにもこだわって撮りたかった。俺の中では、なんらかの理由でちょっと広い部屋を安く借りられているっていう設定で。明確に決めたわけではないんだけど、俺はここ、お前はここ、みたいな定位置がなんとなく決まっている。それが二人の距離感なんです。
三浦 絶妙でした。広い空間にいるなら、端と端にいてもいいのに、そうはならないんですよね。でっかい部屋の中で、適度な距離を保ちつつ居心地のいい空間を作っている。エンディングの映像に、二人の関係がよく出ていましたよね。便利軒のソファに座って、携帯で写真を撮り合ったり、ゾンビのまねしながら食いついたり。男子のアホ感がすごくよかった!
大根 撮っていてすごく楽しかったです。
三浦 なんか……けっこう、二人がキャッキャしてるじゃないですか(笑)。ふだんは空間も時間ももてあますぜ、みたいな感じでぼーっとしてるだけなんだけど、ちょっとしたきっかけでじゃれあいになる。ああいうものなんですか?
大根 ああいうものですよ(笑)。原作を読んだ時に、二人の「精神的なホモ性」っていうのはうっすら感じていました。俺も結構あるほうなので(笑)。ふたりのツーショットを撮るのが楽しくてしょうがなかった。かわいい!とか、キュンキュンしながら撮ってました。
三浦 いやあ、私の小説は「BL(ボーイズラブ)っぽい」とよく言われますけど……男性の天然っぷりには負けますよ(笑)! 

取材・文=門倉紫麻
(『ダ・ヴィンチ』2月号「三浦しをん大特集」より)