私服紹介や旅ものも 岐路に立つ女性モデルの「フォトブック」

更新日:2013/1/10

 女性タレントの写真集といえば、いわゆるアイドル写真集が思い浮かぶが、ここ数年で一気に増えてきたのが女性ファッション誌の人気モデルによる「フォトブック」(または「スタイルブック」)。背景にあるのは「モデル」のポジション変化だ。

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 エビちゃん人気あたりからファッション誌の女性モデルは、単なるモデルからそのライフスタイルやプライベートも含めて、多くの女性たちの憧れの存在となった。この変化はかつて「テレビ局の女性アナウンサー」が「女子アナ」としてアイドル化した過程にも似ている。

 ちなみに「写真集」ではなく「フォトブック」と呼び方が定着している理由は2つ考えられる。ひとつはファッションカット、すなわち本人の写真だけではなく、着回し術やメイク術、ロングインタビューといったコンテンツも多いこと。2つめは既存のアイドルやタレントなどとは一線を画す、すなわち支持層は圧倒的に女性であることを意識したイメージづくりの影響である。つまりは「写真集」につきまとう「男のアイドル」的イメージとの差別化を図っているということだ。

 その結果、「フォトブック」は、歴史は新しいながらも独自の分野を切りひらいたといえる。ただ、近年は点数も増え、内容もマンネリ化してきていることも否めないのも確か。そういった傾向を察知したのか、最近の「フォトブック」は独自性を打ち出している例も少なくない。

 たとえば12月に発売されたばかりの『田中式コーディネイト図鑑』(田中里奈/宝島社)。帯の部分で「オール私服420体!!」とうたっているように、全編『mini』(宝島社)や『SEDA』(日之出出版)で活躍する人気モデルの田中里奈の私服によるコーディネート写真のみを集めた1冊だ。また武智志穂は2010年に発売した『武智志穂と行く かわいいマレーシア』(朝日新聞出版)で、「フォトブック」を「旅」という切り口で料理。2012年も『武智志穂のかわいい京都しあわせさんぽ』(ダイヤモンド社)『武智志穂と行くかわいい石垣島&八重山諸島』(朝日新聞出版)とその路線を続けている。

 今や一定の立場を築いたといっても過言ではない「モデル」たち。その当然の帰結として、競争はかつてより激しくなっている。そんな環境の中でモデルたちはどう自分のイメージを伝え、生き残っていこうとするのか。「フォトブック」は、その一端がのぞける本ともいえよう。

文=長谷川一秀(ユーフォリアファクトリー)