あ痛痛痛っ! 萌えるけどやりすぎな「痛車」が大集結!

更新日:2013/1/11

 車が売れないといわれるこの時代に愛好者が激増し、最近はモーターショーやカーレースにまで登場するようになった「痛車」。あ、知らない人のために説明しておくと、「痛車」というのは、自動車の車体を漫画・アニメ・ゲームのキャラクターなどの塗装やステッカーで装飾した車、「見ていて痛々しい車」のこと。

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 おたくカルチャーというのはまったくどこにでも浸食していくんだなぁと感心してしまうが、最近、この痛々しい車=痛車を集めた写真集が発売されたのをご存じだろうか。それが、エンターブレインから刊行された『痛車Z』だ。撮影した写真家は、坂口トモユキ。2009年から、夜の駐車場で9個の小型ストロボを使って撮り続けた写真のうち、約30種類の痛車を厳選して、今回、写真集にしたのだという。

 実際、掲載されている痛車はどれもこれも、非常に完成度が高く、萌え要素が全開だ。

 ボンネットに『探偵オペラ ミルキィホームズ』の露出度の高い巨乳怪盗、アルセーヌを描いたBMW、『Canvas2』の竹内麻巳が淹れたてのコーヒーを差し出している絵がサイドに大きく描かれたクラウン、『D.C.2 ~ダ・カーポ2~』のメインヒロイン「音姉」こと朝倉音姫がサイドで笑顔を振りまくスカイライン、ボンネットで『魔法少女リリカルなのはAs』の高町なのはがパンツを見せていることから「おぱんちゅ号」と名付けられた痛車ブームの火付け役ともいわれるシビック。しかも、これらの痛車が細部までピントがきた最大一億五千万画素の超高密画像で撮影されているため、おたく趣味がない車好きの人もうっとりするような、美しい写真集に仕上がっている。

 だが、ページをめくっていくと、たんに美しいとか萌えるとかじゃすまない、あぜんとさせられる「痛車」も多数登場する。

 たとえば、そのひとつが、東方プロジェクトのビジュアルで彩られたステージア。サイドに同作品のキャラ・洩矢諏訪子や八坂神奈子などが描かれているのはもちろんだが、リア部分にはなんと作品の舞台である神社のミニチュアが乗っかっているのだ。いや、よく見ると、ミニチュアというより本物の神棚である。神棚をリアにのっけた痛車、信心深いのか、罰当たりなのかよくわからないが、こんなビジュアルの自動車はたぶん日本でたった1台しかないだろう。
『School Days』の痛車もすごい。よりにもよって、過激すぎてテレビ放送が中止となったほどの最終回をテーマにしているのだ。リアにはイナバウアーをきめている桂言葉の絵がのっているのだが、その背後をよくよく見れば、問題の最終回で彼女が三角関係になった相手・西園寺世界を殺害した凶器の「ノコギリ」がそっと置かれている。作品を知っている人からすれば「ひいっ」とおびえてしまうこと必至だ。また、サイドにはヤンデレ化した言葉がノコギリをふるう瞬間を切り取った絵とともに、もはや伝説となった「やっぱり嘘だったんじゃないですか、中に誰もいませんよ」というセリフが……。

 さらには、マンガに登場するキャラそのものになってしまった痛車もある。『チャンピオンRED』(秋田書店)で連載されていた『AI:パト!』(やぎさわ景一/秋田書店)には、パティ2000という、ボディに女の子が浮かび上がって、人間とコミュニケーションができるパトカーが登場するが、このパトカーとそっくりな痛車をつくっている人がいるのだ。

 まるっきりパトカーのカラーリングのまま、ボンネットにはミニスカの可愛い女の子。こんなものが公道を走っていたら「警察まで痛車を導入したのか!」と誤解されないかと心配になるが、本の解説によると、オーナーは、この痛車をつくるうえで、警察にちゃんと確認をとったのだとか。おかげで、車検も問題なくとおるようになり、公道も走れるらしく、オーナーは自家用車として乗り続けているという。

 とまあ、とにかくページをめくっていくと、ここまでやるかという痛車の連続で頭がくらくらしてくる。だが、実は、このやりすぎ感こそが痛車の本質なではないのだろうか。最近はすっかり市民権を得て、「かっこいい」「かわいい」といわれるようになった痛車だが、やっぱりやりすぎて痛々しいくらいでなければ痛車とは呼べない。

 そういう意味ではこの写真集に載っているのは正真正銘の痛車ばかり。ぜひ、「あ痛痛痛っ!」と叫びながら堪能していただきたい。