アラブの王子様に萌える腐女子たち

公開日:2013/1/13

 BLにおいて、根強い人気を誇っているアラブもの。アラブの王子様が日本の男性を見初めて結ばれるというストーリーは、BL界にあふれかえっている。しかし、数ある外国の中でなぜこれほどまでにアラブがもてはやされているのだろう。腐女子が惹かれるアラブの魅力とは、一体何なのか?

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 アラブものと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、頭に被ったカフィーヤと呼ばれる布や、指輪にピアスといった豪奢な宝飾品の数々。そして、そんな民族衣装に身を包んだ、褐色の肌の男たちだろう。“ガラベーヤ”という筒型で全身を覆うようなストンとした服は、シンプルだがそれゆえ体のラインもくっきりと浮かび上がらせる。鍛え抜かれた彼らの体に魅せられてしまう人も少なくないのでは?

 おまけに、アラブは王様だとか、王国、王位継承者といった制度が未だに残っている世界。日本とは異なる異国の雰囲気に腐女子の妄想力をかき立てられるのはもちろん、そういった階級制度は恋愛において大きな障害となる。そんな身分違いの恋をどう乗り越えていくかが、大きな見どころとなるのだ。

 また、真の愛に飢え、それをさまよい求めるアラブの王子様たちは、すべてを自分の思い通りにしてしまうような強引な部分がある。だから、アラブものでは拉致や監禁、媚薬を使っていいように弄ぶなんてことは日常茶飯事。実際、『砂漠は罪に濡れて』(早瀬響子:著、実相寺紫子:イラスト/ワンツーマガジン社)ではハムシーン王国という架空の国の軍務大臣・ファイサルが、大学院の研究室に勤める沢村篤史を自国に連れ帰り、手枷をつけて部屋に監禁してしまう。『舞姫と砂漠の獅子』(伊郷ルウ:著、榊 空也:イラスト/コスミック出版)に登場するアルハラームという国の王子・ナーヒドも、自分の思い通りにならない踊り子の花村碧依に媚薬を使い、思いのままに犯すのだ。ただ強引なだけならそんなに惹かれることもないと思うが、時折見せる優しさや受に対する執着心を見ると、なぜか心からは憎めない。それほどまでに強い愛情と強引な男らしさには、女心をつかんで離さない魅力があるのだ。

 そして、そんな彼らがもっとも映える瞬間こそが真の愛を見つけた時。彼らは、性別や国境も軽々と超えて突き進むのだ。『砂漠は罪に濡れて』のファイサルは幼い頃に両親を亡くし、その時に大火傷を負ってしまうのだが、両親を殺したのも自分を見殺しにしたのもすべて篤史だと思い込んでいた。そう思い込むことで、自らを奮い立たせて生きてきたのだ。そんな孤独で愛に飢えたファイサルだが、実はそれと同時に幼い頃からずっと抱いていた篤史に対する“好き”という気持ちを誤魔化しきれずにいた。彼が苦悩し、葛藤する姿さえも魅力的なので、それほどまでに想いを寄せられている篤史のことを羨ましく思う人も少なくないはず。

 また、『支配者の恋』(岩本 薫:著、蓮川 愛:イラスト/角川書店)や『誘惑者の恋』(岩本 薫:著、蓮川 愛:イラスト/角川書店)といったシリーズに登場するアラブの王子・アシュラフは、愛する大学生・東堂和輝のために彼の両親に挨拶に行くのだ。さらに、その続編である『絶対者の恋』ではアシュラフの母親と対面し、祝福してもらう。こんなふうに、いろんな障害を乗り越えて必ず幸せな未来を切り拓いてくれるのも、アラブものの大きな魅力。

 素敵な王子様たちがあふれかえっているアラブの世界、腐女子のみなさんが惹かれるのもしかたない。みなさんもこれらの作品を読んで、熱く燃えるアラブの世界に誘われてみては?